表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/87

31 魔神とファナ

 バチッ


 部屋の電気をつけた。


「な・・・何これ・・・・」

「空いてる時間で外部情報を取り入れてたんだ」

 モニターを空中に何台も表示していた。


 真ん中にはキーボードとノートPCを置いている。

 壁際の棚には本が並んでいた。


「元は倉庫だったから、狭くて悪いな。その辺の椅子に座ってくれ」

「・・・何をしてるの?」

「こっちのモニターは空軍が集めた情報を元に、ここが何かのゲームなんじゃないかと探ってたんだ。ちょうど、さっきAIから検索結果が届いた」

 椅子に座って、キーボードを操作しながら言う。


 ジジジ


「!?」

 ファナの前にモニターを出した。


「この場所わかるか?」

「どうして・・・? ロンの槍のある聖堂が・・・?」

「そうか」

 西に向かった空軍が映した映像だった。


「このゲームはリリース日未定、製作会社も不明、PVだけ公開されている体感型オンラインゲーム、『RAID5』だ」

「え・・・? 今、私たちがゲームの中にいるってこと?」


「その可能性が限りなく高い」

 右のモニターにゲームの風景を映す。

 聖堂の色、形、大きさ、草原、草木や花に至るまで、全く同じだった。


「ファナの兄が関わっていた可能性は?」

「それは無い! 兄がゲームをやってるところ見たことないし、パソコンも疎かったし。私たち魔術の家系だから、魔術には長けていたけど・・・」

 

 ファナが食い入るように画面を見る。


「本当・・・あの聖堂と同じ・・・」

 AIを使って、各国のゲームに検索をかけていた。

 現在リリースされているゲームの中には見つからず、制作会社不明のゲームの中に『RAID5』があった。


「リリスをさらった『黄金の薔薇団』は、魔法少女戦争が始まったときには、既にここまで掴んでいたのかもな。俺が一歩動くのが遅かった」

「・・・・・・・・」

「リリスは絶対に取り返す。誰にも殺させない」

 椅子を回して、ファナの目を見る。


「リリスが魔法少女戦争を勝ち抜いて、俺がロンの槍の主になればリリスの呪いも解けるはずだ。聖杯の水を飲んだリリスたち三賢の罪も許されるだろう」

「え・・・・・・」

 全てはリリスの憶測だったが、ロストグリモワールにも記載があった。


------------------------------------


 聖杯の水を飲んだ人間が現れ、

 人間は魔法を手に入れた。

 神々にも届く魔法の力を人間が持ってしまったことで、

 神々は世界が混沌とすることを恐れた。

 

 聖杯の対になる聖遺物、ロンの槍が力を宿す。


------------------------------------


 ロストグリモワール全てを思い出せるわけではないが、ふとした瞬間、言葉が頭に浮かんだ。

 何かに導かれるような感覚だった。


「ど・・・どうしてそんなことが言い切れるの!? 私の兄がロンの槍の主になっても、私の魔法は解けなかった!」

「三賢の主じゃなきゃダメなんだよ。ファナの呪いはリリスの受けた呪いだ。リリスの呪いが解けない限り、解けないんだよ」


「っ・・・だって・・・」

 ファナが不服そうな表情で口をもごもごさせた。 

 

「とにかく、リリスも不老不死だ。魔法少女じゃないファナにできることは、俺らの邪魔をせずに見守ることくらいだ」

「・・・・・・・・」


「わかったら七陣魔導団ゲヘナから出て行ってくれ。ファナがいると、他の魔法少女たちが警戒するんだ。あいつらに、いらぬ心配をさせたくない」

 椅子を回そうとすると、ファナが首を振った。


「出て行かない」


「は?」


「魔神XXXX・・・」


「!?」

 ファナがこちらを見てほほ笑む。


 リリスが言っていた俺の・・・。


「サマエルのほうがいい? 聞き取れないもんね?」

「・・・どうしてそれを・・・」


「私と契約して」

 ファナが両手を広げる。



 ザァッ



「なんだ? これは・・・・?」

 立ち上がった。


「俺に何をした?」

「カイトは力を抜いて・・・」


「!」

 腕を見ると、体から黒い光が溢れ出していた。

 本棚がカタカタ揺れている。


 あの・・・獣になったときのような感覚だ。


「魔神サマエル、目覚めて。私の願いを聞いて、私を魔法少女にしてほしい」

「っ・・・・・・」

 身体が熱くて燃えるようだった。

 いつの間にか、足元に魔法陣が展開されていた。


 今は、意識を保つのが、やっとだ。


「起きて、サマエル」


『・・・願いはなんだ?』

 口が勝手に動いていた。

 体に力が入らない・・・。


『当然、お前の呪いは解けないぞ』

「わかってる。魔神は他の魔法少女と願いが被ったら駄目だったよね?」

『そうだ。皆の願いを平等に叶えることを不可能としているからな』


「じゃあ、サマエル、私が死んでも、今の私のことを忘れないで」

 ファナが力なく笑う。


「前回は忘れちゃったでしょ?」

『くだらない願いで、魔法少女になろうとする。それは本来の願いか?』


「うん」

『では、その願い聞き入れた』

 

 しゅうぅううううううう


 ファナの前に銀色の鍵が現れた。

 両手で受け取ると、ムーンストーンのような宝玉が輝いていた。


 大切そうに握り締めて、何かを唱える。

 首から下げると、ファナの服が白い魔法少女の服に切り替わっていった。



「はぁ・・・はぁ・・・」

 体から熱が抜けると、一気に息を吸い込んだ。

 胸を押さえて、壁に寄りかかる。


「んー、服は前回と同じ・・・後ろのリボンの色だけ水色に変化したみたい。契約する神が違うと、魔法少女の服も変わると思ったのに」

 ファナが後ろを向いてリボンの長さを調節していた。


「・・・・これは、どうゆうことだ?」

「カイトの中にある、魔神の魂を呼んだの。やり方は、リリスとの戦闘の中で何度か使ってたのを覚えてる。だって2週間も戦闘に・・・」


「そうじゃない!」

「?」

 ファナが首を傾げてこちらを見た。

 

「どうして魔法少女になんかなったんだ? 戦争だろ? どうして戦うことを選んだ? しょうもない願いなんかのために」


「しょうもなくない。忘れられないことは大切な願いでしょ?」

 ファナがモニターに映る、木々の映像を眺めながら言う。


「それに、あの魔法少女たちだけで勝てると思えないし。リリスだって、私に魔法少女戦争で敗北してるからね」


「でも・・・・・」


「兄は生きてたら怒るかもしれない。私が魔法少女になったこと、後悔していたから。でも、もし、カイトが言ってることが本当なら、何としてでもリリスの主、カイトがロンの槍の主になってもらわないと」

「・・・・・・」


「私は悠久を生きたくない」


 ファナが近づいて、手を出してくる。


「よろしく、カイト」


「随分強引な奴だ・・・ったく」


 手を握り締めた。

 冷たくて折れてしまいそうな手だったが、しっかりとした力を感じた。




 バタンッ



 急にドアが開く。


「か、カイト様!! 今、何をされようと・・・・」

「ルナリアーナ!?」

 ファナの手を離す。


「カイト、真面目な話だって言っておきながら接触するのはナシだと思う」

「同感ね。それにファナの服が違うわ」

「本当だ!」

 ルナリアーナとアクアとフィオーレが部屋に入ってくる。

 全員から殺気を感じtあ。


「待ってろって言っただろ。つか、いつからいたんだ?」

「今来たばっかり。どうしてそんなこと気になる?」


「ま、まさか、2人で密会を!? えちえちな!? ファナの服が変わっているってことは!? そうゆう・・・」

「んなわけないだろ!」 


「・・・だって、さっきこの服じゃなかった・・・」

 ルナリアーナが間に入って、ファナを見つめる。


「何もしてない・・・よね?」

「何もしてないわけじゃないよね? カイト」

 ファナがいたずらっぽく笑う。


「えーっ!?!?!?!?!?」

 全員が大声で叫ぶ。


「誤解だって」

「はは、は、は、破廉恥な! カイトなんか、もう知らないから!!」

 アクアが顔を真っ赤にして声を震わせていた。


「カイト様ぁ・・・私というものがありながら・・・! 私の初夜はカイト様に捧げようと思ってたのに・・・」

「カイトってそうゆう人だったのね。さっきの戦闘で、見直したのに残念」

 ルナリアーナが泣き出した。

 フィオーレが汚物でも見るような視線をこちらに向けてくる。


「・・・・・」

 頭を搔いた。


 ファナは終始楽しそうだったが、誤解を解くのに3時間かかった。

読んでくださりありがとうございます。★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ