表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/87

25 清らかな①

 5人の魔法少女と契約しているのは、どこにでもいる普通の青年と中年の男だという。

 配信サイトに魔法少女を映して実況しているらしい。


『ここにいる人々はみんな、試作品で創られたアンドロイド』

 リエルが周囲を見渡しながら言う。


「試作品?」

『そう。でも、人工知能で自立しているから、人間と差がなく見えるでしょ』

「確かに・・・全員人に見える」

 荒廃した街は聖堂に近づくにつれて活気づいていた。


『神々は人工知能を持つ者を人間と認めないのが普通だけどね。私はこの街にいるみんなのこと、大事に思ってるよ。人に創られた者でもね』

 白い翼が少年に触れても、全く気付かずに走っていった。


『配信するまで、5人は穏やかだった。彼女たちの願いも、清らかなもので、叶えたくて魔法少女にしたの。魔法少女戦争にはなるべく関わらせたくないって思ってた』

「ふうん」


「ねぇ、魔法少女が配信するだけでリエルは穢れたの?」

 フィオーレが食い気味に聞いていた。


『違うよ。彼女たちは主に言われるがまま、リスナーに金銭を要求しているの。リスナーが困窮していることを見抜いてるのに、何度言っても聞かない。飛ぶよ』


 リエルが古びた聖堂の前まで来るとふわっと飛んでいく。

 羽根のように軽やかだった。


「みんな、こっちに来て」

 

「わっと・・・」

「きゃっ」


 ぶわっ


 リエルが細い指を動かすと、風が吹く。

 俺たちは飛ばされるようにして、屋根に上がった。


「びっくりしたー」

「怖かったー」

「俺にしがみつくなって」


「あっ」

 フィオーレとノアがはっとして手を離した。

 

『ふふ、ごめんね。早くこれを見せなきゃって思って』

 屋根から砂がさらさらと落ちていく。


『5人は他の配信者に負けたくないからって、どんどん発言も過激になって盛り上げてる。無垢な人まで傷つけて・・・でも、承認欲求が止まらなくて、次々に汚い言葉を吐く』

「これは・・・・?」


『5人の魔法少女とその主が作った軍隊。全てAIで生成されているから、戦闘用にカスタマイズされているんだって。街にいる子たちとは別』


「!!」


 見下ろすと、500人くらいの全く同じ鎧を被ったアンドロイドが並んでいた。

 ノアが思わず俺の後ろに隠れる。


「どうして契約した神であるお前が弱ってるのに、魔法少女たちは力を保ち続けてられるんだ?」


『信仰よ』


「信仰って・・・」

『魔法少女たちが注目を浴びるほど、人気が出るほど、信仰は力となり彼女たちの魔力となる。私もそうなるはずなんだけど、今は穢れのほうが大きい。憎しみのほうが大きいのね』

 リエルが翼をたたんだ。

 純白の羽根の中に、少し黒みがかった羽根が見える。 


『どうか、彼女たちを・・・』



「こんなところで何してるのですか? リエル様」

 ゴーグルのようなものをつけた魔法少女が背後から現れた。

 赤のふわっと広がるミニスカートで、ツインテールを揺らしている。


「あーごめんごめん。驚いたでしょ? 魔法少女を見つけちゃって。みんな応援ありがとう。大丈夫、ナナは無事だよ」

 言いながら、剣を構えていた。


「応援しててね。みんなの応援は私の力になるから」

『ナナ・・・もう辞めて』


「離れてろ」

 リエルを布越しに引っ張って、魔法少女から引き離す。


「さすがリエル様。魔法少女を連れてきてくれるなんて、初めてですね」

「あ! 七陣魔導団ゲヘナの魔法少女だよ。服に紋章があるもん。リスナーのみんなも見える? すごいよね。前説明した魔神と契約した魔法少女たちだよ」

 ゴーグルを触りながら、もう一人の魔法少女と話していた。


『・・・・・』


「どうして私たちに会って、そんなに余裕なのかしら」

 

 ザッ


 フィオーレが移動して、低い位置から槍で突く。

 ナナがすぐに避けて、剣で弾いた。


 フィオーレが起こした風で、長い黒髪がすっと切れていた。


「ただの槍じゃないってことね。そうじゃなくちゃ」

「強がりもいいところね」


 ザッ


 フィオーレが軽やかに飛んで、ナナの剣を避けた。

 素早くシールドを張って、ナナの魔法を封じる。


 ドンッ


 カンッ


 大砲のようなものが鳴り響いたが、ノアが咄嗟に大剣で球を裂いた。


「あーあ、弾かれちゃった。うん、モモコの戦い見ててね。モモコもみんなのために頑張る。あ、投げ銭もありがとう」

 2人とも配信しているのか。

 戦闘に自信があるのか、話しながらノアにバズーカをくるくる回す。


 ノアが大剣を持ち替えた。


「背後から狙うなんて卑怯!」


「戦闘に正義も悪も無い。勝った者が正義」

 同じゴーグルをした魔法少女が、バズーカのようなものを担いでいた。


「じゃあ、私が正義!」

 ノアが斬りかかっていく。


 キィンッ ザッ


「ここは右に避けるよ。彼女の属性は風みたい。リスナーのみんなにも臨場感が伝わるといいな」

 モモコはいちいち実況していたが、ノアの力に押されていた。


『強い・・・さすが七陣魔導団ゲヘナの魔法少女ね』

「フィオーレもノアも圧倒している。俺たちの勝ちだな」

『そう簡単じゃない。あと3人の魔法少女も』

 リエルが歯を食いしばっていた。



「へぇ、リエル様が連れてきてくれたんだ。いいねぇ、いいねぇ」

「見ていてくださいね。みなさん」

「これが魔法少女戦争ですよ!」

 聖堂の鐘の上にゴーグルをつけた魔法少女が3人立っていた。


『止め・・・』

 リエルが手を伸ばした。


 バッ


「!?」


 少女たちが黒い布を取ると、鳥かごに入れられた2人の魔法少女が現れた。

 服はビリビリに破られて、肌が露出されている。


 少数精鋭部隊A隊にいた魔法少女2人だ。


「可愛い可愛い小動物が迷い込んだから捕まえちゃった。ねぇ、リスナーのみんなはどっちの子がタイプ? 私? みんなが私のファンなのは知ってる。私も、みんなのためだから頑張れるよ」

「いやっ」

 杖で魔法少女の体を突きながら照れていた。


「リシュウ、フウカ!!」


「よそ見しないほうがいいよ」

「っ・・・・」

 ノアがバズーカらから突き出た刃を飛んで避ける。


「よく、こんなことができるわね!」

「そうそう。彼女もさっきの2人と同じように籠に入れてほしい? えー、難しい頼みかも。でも、みんながいれば私に不可能は無いよ」

 ゴーグルをつけたまま、誰かと会話している。

 フィオーレの声は無視していた。




「この場所で見ると魔法少女ちゃんたちの悲鳴も刺激的? あはは、そうだよね。でも、拷問は苦手だから、アンドロイドちゃんたちに任せちゃおうっと。投げ銭もいっぱいありがとう」

「アンドロイド軍隊のみんな、出番だよ!」


「・・・・・」

 魔法少女が何かを詠唱する前に、鳥籠の前に駆け上がった。


 ザッ


 ― 魔導強制解除アンロック ―


「あれ? 対象物がいない」

 鳥籠の魔法を解く。

 すぐにリシュウとフウカを抱えて、3人から距離を取った。


「わ・・・私たち・・・・」

「ごめんなさい・・・カイト様、他の仲間は・・・」

「言うな。あとで聞く」

 屋根に座らせるとぼろぼろと涙を流していた。

 上着を脱いで、二人にかける。


「あーあ、魔法少女だけ観賞用にとっておいたのに。ココたん、残酷? そんなことないよ。でも、私、みんなのためならなんだってできるんだよ」

「ココってばいいひとぶっちゃって」

「ミイナほどじゃないよ。ほら、リスナーのみんなも同意見だって」

 ゴーグルに手をあてて話している。


「ナナ、モモコ、助太刀いる? リスナーのみんなはナナとモモコの1対1のバトルが見たいって言ってるけど」

 杖を持った魔法少女がゴーグルをつけたまま、ナナとモモコに声をかけていた。


「もちろんいらない。私だけで十分、こんな魔力のない雑魚」


「よくも私たちの仲間にあんなことをしてくれたわね」

 フィオーレの槍が赤く光った。

 魔力が急上昇する。


「え・・・?」


 ズンッ


「あ・・・」 

 一気に距離を詰めて、魔法少女ナナの心臓を貫いた。

 

「ナナー!!!」

「・・・・・」

 フィオーレが無言で槍を抜いて、くるっと回した。


 しゅううぅううう


「みん・・・・・」

 魔法少女が手を伸ばしたまま消えていった。

 フィオーレが冷酷な表情をしていた。 


「ナナ! この野郎。よくも、よくも!!」

「あんたの相手はこっち」

「何?」


 ドォン


 モモコがバズーカから魔法弾を数発放つ。

 ノアが全て避けながら駆けていった。


「ふん、あんたの体じゃ、その大剣見合わないんじゃない? 自分の体に合ってなくて、十分に使いこなせないくせに」


 ― リオフェリロール ―


 ズンッ


 ノアが大剣を伸ばして、青く光らせる。

 勢いよく振り下ろして、モモコのバズーカごと切り裂いた。


「へ・・・?」

 

 さあぁぁぁぁああ


 モモコが電子の粒のように消滅していた。


「嘘・・・」 

「てめぇ!!!」

 3人の魔法少女がゴーグルを外す。


「七陣魔導団ゲヘナの者を殺した罪、償ってもらうから」

 ノアが大剣の魔法石をルビーに変えて、深く息を吐いた。

 剣が燃えるように輝きだす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ