表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/87

12 休息

 夜も更けてきている。

 皿を洗い終わって、タオルで水滴を拭った。

 傾いていたフライパンの位置を直す。


「はい、ケーキ作りの本見つけてきたよ」

「これこれ! ありがとう! しばらく借りてもいい?」

「私、レシピはメモしてるからもう使わないんだ。リリスにあげる」


「ありがとう!! 美憂ちゃん、好き!」

「わわ」

 リリスが美憂に抱きついていた。 

 

 騒がしいな。

 時間ってものをわかってるのか?


「はい。美憂ちゃんはこれをつけててね」

「私に?」

 リリスが美憂に薔薇にルビーの埋め込まれたペンダントを渡していた。


「美憂ちゃんに魔法少女が近づくと、私の鍵が反応するようになってる」

「あ、ありがとう・・・ございます」

「敬語は使わなくていいよ。絶対に契約して魔法少女にならないようにね」

「うん・・・」

 美憂が少し緊張しながら、ペンダントをつけていた。


「疲れたな」

 ソファーに寝転がって、スマホを眺める。


 来週締め切りのアルバイト、ゲームデバッグ作業が終わっていない。

 1日でどうにかするか。


「魔力制御の練習とかしなくていいのか? 魔法少女と契約しているのは、魔法を知らない一般人だけじゃない。魔術でも呪いでも何でも使う奴らもいるぞ」

「明日にするよ、今日はもう寝たい」

「ん? お、このクッキーはドライフルーツが入ってる。美味しいな。ナッツのクッキーと、ドライフルーツ、こんな美味しい食べ物があるとは」


「つか、なんでまだいるんだ?」

 ナナキがクッキーをぼりぼり食べながら、ソファーでくつろいでいた。


「花音は新人魔法少女だ。三賢のリリスの傍にいたほうが安全だろ」


「都合のいい時だけ私を頼りにするの止めてくれない?」

 リリスが瞼を重くして、ナナキを覗き込む。


「で? ナナキは結局何の神なの?」

「こっちでは名もなき神で通してるんだって。詮索は無しだって言っただろ?」


「一緒に行動するからには聞いておきたいんだけど? 本当は、真名を忘れたとか?」

「・・・・・・・」

「まさか・・・図星だったり?」

 ナナキが一瞬固まる。

 リリスを無視してクッキーをかじっていた。


「たまにいるのよね、真名を忘れる神」

「何も言ってないじゃん!」

「ナナキの顔見ていればなんとなくわかる」


「・・・・・」

 時計は23時を回っている。

 そろそろ、寝たいんだが・・・。


 タッタッタッタッ・・・


「ねぇねぇ! 配信見てくれた? 同接1万人だったんだよ!」

 花音が階段を降りてきて、興奮気味に言う。


 花音は配信するために一度家にPCを取りに行っていた。

 戻って来て美憂の部屋で配信を始めたところ、一気にリスナーが集まって来たらしい。


 1時間以上、しゃべり続けていた。


「家に帰らなくていいのか? 家族が心配してるだろ?」

「いいの。両親は海外に行ってるし、私、家にいてもいつも一人だから」

 力なく笑う。

 ナナキがちらっと花音のほうを見て、足を組み直した。


「というわけだ。今日からこの家に世話になるから」


「えっ? 急展開・・・」

「マジで言ってるのか?」

「幼馴染が一つ屋根の下。何も起こらないはずがなく・・・」

「リリス、煽るな」

 リリスが口を手で押さえる。


「生活費の心配ならするな。神である俺がいる限り、困ることはない」

「そうじゃなくて」

 頭を搔いた。

 神は人間と考えがズレてるのか?


「カイトの家に泊まる・・・」

 花音が顔を赤くして俯いていた。


「おにい、花音ちゃんとイチャイチャしないでね」

「するわけないだろ!」


「・・・怪しい。おにい、いつの間にこんなにもてるようになったの? ずっと、ぼっちだったのに・・・」

「だから・・・・」

 美憂まで変な目で俺を見てくる。


「そりゃぁ、男女だけど、美憂ちゃんもいるし、俺もリリスもいる。2人きりにならないだろ?」

「いや、そうゆう問題じゃなくて・・・」

「何も問題ない、安心しろ。神である俺が言うんだ」

 ナナキが当然のように話していた。

 なんの神だか知らないが、かなりの自信だ。


 学校で花音と暮らしてるなんて広まったら、大問題だけどな。


「カイト、ナナキの言うことは一理あるの」

「え・・・?」


「花音が魔法少女になったからには、一緒に行動したほうがいい。新人魔法少女は特に、あっという間に

死んじゃうから」

 リリスがカーテンを少し開けて、夜空を眺めていた。


「ちゃんと、覚悟してね」

「う・・・うん。わかってる」

 花音が顔をこわばらせて頷く。


「じゃ、明日はバトルフィールドの展開の仕方を教えてあげる」

 首にぶら下げた鍵を手のひらに載せて言う。


「今日はゆっくり休んで。色々あって、みんなも疲れたと思うから」

 リリスがカーテンを閉めながら、みんなに笑いかけた。

 美憂が花音に自分のパジャマを貸してあげる、と楽しそうに話していた。





 リリスはスマホの中に入っていた。

 自分の部屋で休息を取ったほうがいいらしい。


 美憂は花音とナナキと同じ部屋で寝ていた。

 美憂の傍に、ナナキがいたほうが安心だからな。


 低い天井を眺めながら、電子世界の水の女神フェカリナのいたゲームがどこかに無いか思い浮かべていた。

 七陣魔導団ゲヘナはどうして美憂を魔法少女に・・・?


 色んなことがありすぎて、頭が追いつかないな。


 寝ようと目を閉じたときに、スマホが光った。


『カイト、カイト』

 リリスが画面に映っていた。


「どうした?」

『今日は楽しかったね。特に何もないけど、どうしてるかな? って』

「今寝るところだ。明日、また忙しくなりそうだからな」

 あくびをしながら言う。

 枕元にあった充電器にスマホを繋いだ。


『ねぇ、カイトは魔法少女と契約したこと、後悔してる?』

 リリスが少し不安そうな顔で言う。


「美憂を守るためにはこれしかなかっただろ?」

『うん・・・ごめんね』

「リリスのせいだとは思ってないって」


 きっとロストグリモワールを見たときから、運命は決まっていた。


 いや、もっと前から・・・。


「なぁ、どうして美憂を魔法少女にさせようとしてくる奴らが出てくるんだ?」

『カイトと美憂ちゃんのお父さんはね、ソロモンの指輪を持つ魔導士だった』


「は・・・・?」


『有名だったから、美憂ちゃんの魔法少女としての素質も見抜いているんだと思う。私は美憂ちゃんには普通の女の子として幸せに暮らしてほしいな』

「どうして・・・・」

『ん?』

 リリスが目をうつろにしながら話していた。


「・・・・」

 ほぼ、寝てる人間から、話を聞き出してる感覚だ。

 聞かなかったことにしておくか。


「何でもない。リリスも早く寝ろよ」

『うん。電源、このままにしてもらっていい?』

 目を擦りながら、こちらを指さす。


『そっちの世界が見えたほうが、なんだか安心するの』

「了解」

 布団の横に、スマホを置いた。


「これで寂しくないだろ?」


『ありがとう。今日、楽しかったね。おやすみなさい』

 リリスがほっとしたように、すぐに眠りについていた。


 当然、リリスだって疲れるよな。

 気を張りっぱなしだ。



『メイリア・・・マリア・・・・・』

「リリス?」


『私を許して・・・ごめんね』

 思わず体を起こして、スマホを見る。

 リリスが布団のようなものに横になって、涙を流していた。


「・・・・・・・」

 1000年以上生き続ける孤独・・・か。

 リリスはいつも笑顔で誤魔化してるんだよな。


 横になって、天井を見ながら息を吐く。


 魔法少女戦争は絶対に負けられない。

 俺を主に選んでくれたリリスのためにも・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ