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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり

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11 2人目の魔法少女

 リリスがハーブティーを飲みながら、本棚の前の椅子に寄りかかる。


「聖杯はロンの槍と同じ場所にあるといわれていた。でも、聖堂には無かった。どこにあるか、誰が持っているかわからない」

 リリスが聖杯について話していた。

 

 三賢が現れてから、間もなくしてロンの槍が魔力をまとったのだという。

 神と契約した魔法少女が選ぶ主を待っていると話していた。


「あの時は魔法少女戦争がこんなに続くと思わなかった」


「聖杯はどこで手に入れたんだ?」

「記憶が曖昧なんだけど・・・誰かから渡された気がするの。水を注ぐと、魔法を使えるようになる水に変わるって。確かに膨大な知識が流れ込んできた」

 石化したメイリアのほうを見ながら言う。


「・・・後は記憶にない。メイリアなら覚えてるかな?」

「そうか」


「私、魔法少女戦争に何回も参加してるの。でも、ロンの槍はいつも私の主を選ばなかった。魔法少女戦争に勝てるはずなのに、なぜかいつも不意を突かれて負けるの。聖杯は私たちを許してないんだと思う」

 首からぶら下げた鍵を触りながら言う。


「許してないって・・・聖杯の水を飲んだことは罪じゃないだろ」

「・・・・そう・・・かな」

「自分を責めるな。リリスは悪くない」


「・・・・・・」


 リリスが華奢な肩をすくめて、小さく頷いた。

 ハーブティーのカップを置く。


「ありがとう。ハーブティーで大分魔力も落ち着いた」

「よかった。私も飲み終わったから、いったん元の世界に戻ろうか。美憂ちゃんのこと、心配だもんね」

「そうだな」


 リリスがカップを片付けてから、メイリアの石像に近づく。


「行ってくるね。メイリア。また、戻ってくるから」

 必ず勝つから、と、祈るように話していた。

 石化したメイリアには、何の反応も無い。


「ランプはね、いつも一つだけ灯していくの。メイリアが寂しくならないように」

 リリスが机のランプ以外の、ランプの灯を消していった。


 リリスが背負ったものは、想像以上に重かった。

 孤独と悲しみと苦しみは、もう通り越してしまったんだろうな。





「おにい!!」

 家に戻ると真っ先に美憂が走って来た。

 どこも怪我はなく、魔力の影響もない、いつもの美憂だった。


「大丈夫そうだな」

「すごく心配したんだから! 花音ちゃんから色々聞いたの。魔法少女のこととか、私たちが連れて行かれた場所とか・・・あと、色々! 信じられないことばかりだったけど・・・とにかく、無事でよかった」

「悪かったな、怖い思いをさせて」

「本当だよ」

 美憂が目を擦って、涙ぐみながら言う。


 花音が落ち着かせたのだろう。

 パニック状態にはならずに済んだようだ。


「あ・・・あの後、どうなったの? あれ? その子は、私をここに連れてきてくれた子・・・?」

「私?」

 美憂がリリスを見て首を傾げる。


「そっか、魔法少女戦争に関わってないけど、魔神の力に触れちゃったから見えるようになったんだね? 私はカイトと契約している魔法少女リリス=ミュフォーゼ。よろしくね」

「あ・・・はい」

「美憂ちゃんは、私の主の妹ちゃんだから、必ず守るから。安心して」

 リリスがニコッとする。

 美憂がたどたどしく返事をしていた。


「カイト!」

 花音とナナキがリビングから出てくる。


「あぁ・・・美憂を守っててくれたんだってな。ありがとう」

「一応神だからな。魔法少女から守るくらい容易いことだ」

 ナナキが念を押すように言った。


「花音はなんか、雰囲気変ったような・・・」


「カイト! 私ね、魔法少女になったの!」


「・・・は・・・?」

 明るい表情で、杖を持っていた。

 リリスのような大きな杖ではなく、短いステッキのようなものだ。


 制服を着ていたが、首にはバトルフィールド展開の鍵をぶら下げている。


「ナナキ、どうゆうこと?」

「風向きが変わった。花音には魔法少女にならなければいけない」

「いや・・・魔法少女って・・・・」


「そうらしいの。へへ、制服の魔法少女、似合う?」

「花音、魔法少女になったら姿が普通の人に姿が見えなくなるんだろ? 家は、学校は、塾は? どうするんだよ?」

 靴を脱いで詰め寄っていく。


「なんだか、私の場合特殊みたいで・・・」

「姿は普通の人にも見えるし、今までと変わらず会話もできる。周囲の人間に、違和感はないはずだ。花音は魔法少女としての、マイナスな部分を一切受けないんだ」

 ナナキが花音を見上げる。


「驚くほど完璧な魔法少女だ」


「そんな・・・魔法少女聞いたことない」

 リリスが怪訝な顔をする。


「まだ全然魔法は使えないよ。どこかで練習しなきゃね。あと、Vtuber配信者として有名になる夢は叶えてもらったの・・・ほら、すごいでしょ?」

 突き出されたスマホを見る。


 SNSのフォロワー15万人?

 チャンネル登録者数100万人突破している。


 あり得ないだろ。


 今まで数人しか見ていなかったチャンネルなのに・・・。


「願い叶っちゃった」

 花音が満面の笑みで言う。


「・・・・本当にどんな願いも叶えられるんだな」

「魔法少女の契約をしたからね」

 ナナキが白いマントを後ろにやった。


「ナナキ、どうして突然、花音を魔法少女にしようと思ったの?」

 リリスは納得していないようだ。


「魔法少女は戦いよ。死んだら何も残らないの! あれだけ魔法少女に反対してたのにどうして巻き込んだの?」

「花音は魔法少女にならなきゃ、死ぬ」

「え・・・・?」


「未来視で人間だった花音が魔法少女に殺される姿を見た。魔法少女になるべきと判断したんだ。おそらく花音を狙ってる魔法少女がいる。何のためかはわからない。何者なのかも・・・」

 ナナキが鋭い目つきで周りを見渡していた。


「七陣魔道団か?」

「いや、あんな雑魚じゃない。もっと得体のしれない者だ」

「どんな?」


「もう少し探ってみなきゃわからないよ」

 深刻な表情で、口に手を当てていた。


「あ、それより、次の満月までに主を決めなきゃいけないんだ。手っ取り早く、カイトが契約してくれないか?」


「俺!?」


「できないよ。カイトは私と契約してるんだから」

 リリスがナナキの前で腕を組んだ。


「二重契約はカイトの負担にもなる。カイトも魔力を馴染ませなきゃいけないんだから」

「まぁ、そうか。契約者探ししないとな」


「主が見つからなかったらどうするの?」

「死ぬわ」

 リリスがはっきり言った。


「えぇっ!?」


「言っただろ? 聞いてなかったのか。次の満月まではまだあるけど」

「どどど、どうしよう。どうしよう」

「そこら辺の奴と契約すればいいだろ? ロンの槍なんて誰が持っていたって同じだ」

 ナナキが適当に言う。


「そこら辺って・・・どこにいるの? 学校とか? でも、学校でいきなり魔法少女だから契約しようって言ったら浮いちゃうよ」

「落ち着け、なんとなかるって」

 花音が真っ青になって、焦っていた。


 ぐううううううぅぅぅ


「なんだ!? 今の音は・・・」

「・・・・ご、ごめん。お腹がすいちゃった」

 リリスがものすごいお腹の音を鳴らしていた。


「びっくりさせるなよ」

「地鳴りみたいだったな」


「魔法少女だってお腹がすくの! さっきから言い匂いがするし」

 リリスがお腹をさすっていた。

 気を張りすぎていたのが、一気に拍子抜けする。


「今日はからあげとビーフシチュー。サラダもあるの。作りすぎちゃったから食べて行って」

 美憂が髪を一つに結びながら言う。


「クッキーはある?」

「食後のデザートにね」

「よし!」

 ナナキがガッツポーズをする。

 美憂がリビングに戻ってエプロンをしていた。


「おにい、お皿用意して」

「はいはい」


「ナナキ、行儀が悪いよ」

「クッキー食う時くらい、いいんだよ」

「もうっ・・・・」


「クッキーはまだ焼けてないよ。ご飯食べてからね」

「おっけー」

 ナナキが飛びながら、美憂の後ろをくっついて回っていた。


「一気に騒がしくなったね。あとで美憂ちゃんにケーキの本のこと聞いてもいい」

「好きにしろ」

「ふふ、私、こうゆう経験、あまりないから楽しいな」

 リリスが嬉しそうに前を通っていった。

 軽く息をついてから、花音を連れてリビングに入っていった。

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