2015.04.17
『イニシエーション・ラブ』乾くるみ著
ここんとこ、ずーっと片隅でこの本が引っ掛かっていた。
サイドA、Bの解説は解かったんだが、それでも素直に賞賛する気持ちになれない。
どこまでも「ズルいじゃないか、」としか思えなかった。
それが何故だか、完全に理解出来たので書いてみる。
なんで引っ掛かってしまったか、ズルいと感じるのか、それはつまり、この本が一人称のルールを犯しておいて、それをトリックの屋台骨に使っているからだったのだ。
一人称で、視点者が変わった場合には、変わった事を読者に知らしめねばならない。それは初心者講座でさえ言われる基礎の基礎、いや、本来の一人称小説というのはそもそも視点変更不可であるから、これが出来ない子に対するお目こぼし的な措置なわけだ。それを利用するという事だから、反感があるのは当たり前だ。
それを前提にこの本を考えると、作者の内面に厭でも入っていかざるを得なくなる。
この作者はアレか、昨今のそういう風潮に対して皮肉を篭めてこういうトリックを使ったのか。
そう考えざるを得ないからだ。
そうでないなら、そもそも成り立たなくなってしまうからだ。
一級のミステリであるのか、アマチュアの延長か。謎めいた本だなと改めて思った次第だ。
(追記:私の勉強不足で、一人称における複数話者というのは可能なようだ。芥川の藪の中とか。)




