第十章 クレプス・コーロ編 裏話2
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
クレプス・コーロ編の第百七十二話「愛と幸せ」~第百八十二話「陽祝い」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第百七十二話 愛と幸せ
マリアがグィファンと恋愛についての話をする回です。
少しだけお話すると、グィファンがマリアに寄せている「好意」は、少しだけ恋愛に似ています。
グィファンの人気や表の顔を知ったうえで、素直に付き合ってくれるマリアに対して、グィファンは一定の尊敬を払っていますが、それとは別に、マリアを愛おしい、と思っている様子がこの回で見て取れるように書いたつもり……です。
実際は友情の範疇ですが、この回はやたらとマリアに対する距離感が近いです。(笑)
ケイへの恋を自覚するマリアですが、そんなマリアを可愛い、と思うグィファンの気持ちは、優越感にも少し似ているかもしれません。
ラストの、おでこへのキスは「友情」「祝福」の意味があって、マリアとの出会いを心の底から喜んでいるグィファンの気持ちが込められています。
*第百七十三話 新しい夜
シャルルからの告白をお断りする回。
ずっと悩み続けていたのですが、クレプス・コーロ編のプロットを書き、グィファンとの話を書き続けてきて、ようやく決心しました。(私が)
シャルルは敏い人間なので、正直、呼び出されてマリアの表情を見た時には、自分が何を言われるかは分かっていたのですが。マリアの気持ちを汲み取ったうえで、お話を聞く余裕があるのもまた、シャルルの良さだと思っています。
*第百七十四話 恋を知る
マリアがケイへの思いを自覚する回です。
久しぶりにアイラが登場する回ですが、ここでアイラとそのお見合い相手のその後の進展も分かったりして、開花祭編へのちょっとした伏線(?)みたいな感じになっております。
ラストでケイがタイミングよく登場し、「団長から頼まれて」ということなのですが、こちらは、シャルルの配慮が。
さすがに振った相手とすぐに二人、というのは気まずいだろうというシャルルの考えもあり、マリアがケイを気にしているのだろう、ということもなんとなく察したりしているので、そういうこともあって、シャルルからケイに依頼をしていた、という裏話があります。
*第百七十五話 すれ違い
マリアとケイがすれ違う回。(毎回タイトルが安直ですみません)
お互いに、色々と考えすぎて空回りしている感じのすれ違いですが、二人にとっては初めてのこと。どう接してよいか分からない、という感じになっています。
特に、マリアにとっては一大事、という感じですね。ケイはすでにマリアへの気持ちを自覚していますし、グィファンのことも自分はやましいことはしていない、と思っているのですけれど……なかなかそれが伝わらないもどかしさを感じていただけていましたら幸いです。
お話の後半では、トーレスが登場して、ケイとのランチになりますが、こちらはお話の進行上、ケイの誤解をまずとこうかな、というところでそのきっかけを作っています。
*第百七十六話 トーレスと迷子
トーレスが、ヴァイオレットと出会うお話。
個人的にはかなり好きな回で、印象深く残っています。(笑)
トーレスがヴァイオレットを肩車するのは、一応、表向きは父親を見つけるため、なのですが、一つ裏話を。
トーレスは西の国の第三王子として、ないがしろに育てられてきたので、自分はそうならないように、と親を反面教師にして生きています。そのため、子供相手には、自分が子供の時にしてもらえなかったことをしてあげたい、という思いがあります。騎士団だから、という理由のほかに、子供には親切にしたい、という気持ちからこういう行動をとっています。
ヴァイオレットは運命の人、的な意味でトーレスを王子様、と呼びますが、実際にトーレスは元王子様だったので、やっぱりヴァイオレットの目は欺けませんね。(笑)
*第百七十七話 チケット
ケイがグィファンとの誤解を解いて、チケットをもらうお話。
座長とトーレスの意外なつながりがここで出てきますが、旅の一座と、西の国の王族、という今までの設定をフルに生かしています。(笑)
グィファンとケイは、まったくお互いにその気がないので、本当にあっさりしておりますね。(笑)
グィファンが、ケイにチケットを渡したのは、お詫びもありますが、マリアに対する恋の応援的な気持ちもこもっています。
ラストは、トーレスとヴァイオレットの叶わぬ恋が描かれておりますが……その後の二人については……皆様のご想像にお任せします!(笑)
*第百七十八話 誤解をといて
マリアとケイのすれ違い(お互いの誤解)がとける回です。
本当に、誤解というのは解けてみると「なんだ、意外となんてことない」ということが結構あったりするわけですが、まさにここではそんな二人の雰囲気を感じていただければ幸いです。
そして、この回ではチケットをグィファンからもらったケイが、自らマリアを公演に誘っています。
マリアとケイは、意外と一緒に食事に行ったり、町で遭遇したり、ということが多くて、実際にその回数は、ミュシャに引けをとりません。
会った分だけ親しくなる、というのは心理学的にも有効な話のようで、そういった意味では二人が惹かれあうのも、納得な感じがしますね。
*第百七十九話 星祀り
星祀りの期間が始まり、マリアが実家へと帰省するお話。
星祀りは、私たちでいうところの冬休みの期間、年末のお休みを指します。一年の総決算というか、一年の終わりに、今までにお世話になった人に挨拶をしたりする、みたいな感じですかね。(ちなみに、マリア達の王国にはクリスマスはありません)
クレプス・コーロの話も、恋愛の話もなく、ちょっとした閑話休題的な感じのお話ではあるのですが、この後のミュシャの独立編へのつなぎとして書きました。
ミュシャとは色々あった一年でしたが、ここでお互いに友達(友達以上の存在?)として、感謝を述べていますね。
*第百八十話 千秋楽
クレプス・コーロの千秋楽に、マリアとケイが向かうお話。
ここで、マリアとケイの待ち合わせを割としっかりめに書いているのですが、お互いに自分の気持ちを自覚してデートするのは初めてなので、その分、今まで以上にお互いがお互いをじっくり見つめている(?)ような描写になりました。
ここでも、ヴァイオレットの目は相変わらず欺けませんが……ケイがマリアの運命の人だ、ということは、なんとなく、この日、マリア達二人を見た人は察していたはずです。(笑)
そして、ここで登場するマリアのお洋服は、お洋服デザイン集に投稿しておりますので、ぜひぜひそちらでもお楽しみいただければ幸いです!
*第百八十一話 さぁ、幕を開けよう!
クレプス・コーロの公演『薔薇姫』のお話。
劇中劇、というか、作中に別のお話を登場させるのが初めてのことで、個人的にはかなり楽しく書かせていただいた回になりました。
タイトルの「さぁ、幕を開けよう!」は、千秋楽の幕が上がる様子と、最後の劇のセリフ、そして、そんな千秋楽を見たマリアとケイのこれから(開花祭編)の物語を暗示させています。
*第百八十二話 陽祝い
新年を家族みんなで迎えるお話です。
陽祝いは、星祀りと対になっている、冬休み期間の年始休暇の方のことを指します。こちらも、新しく一年が始まることに感謝して、これから一年お世話になる人たちに挨拶をするのが目的です。
一年が終わる様子を、日が沈んで星が瞬くさまにたとえ、一年が始まる様子を、日が昇る様子に例えております。
リンネから真珠のついた手袋が、ミュシャからはパールのついた夜空色のワンピースをもらうのですが、コーディネートがばっちりなのには裏話が……。
ミュシャの独立編で、リンネがミュシャの店に行っていることが分かるのですが、この時に、二人でマリアへの贈り物を選んでいた、という伏線(?)があります。かなりわかりにくい裏話でした。
お洋服のイラストは、お洋服デザイン集に投稿しておりますので、ぜひぜひ合わせてお楽しみください♪(一部、画力の問題で作中の描写と異なっておりますが……ご容赦ください)
そんなわけで、以上がクレプス・コーロ編の裏話でした!
クレプス・コーロ編は急遽追加した章ですが、おかげでマリアとケイにも進展が見られましたし、楽しい王国の冬を描くことが出来ました。
本編全体を通しても、思い出の香り編と合わせて、ちょっとしっとりした落ち着いた(?)雰囲気の第四部となりました。




