第十章 クレプス・コーロ編 裏話1
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
クレプス・コーロ編の第百六十三話「グィファン」~第百七十一話「歌舞、香り」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第百六十三話 グィファン
グィファン登場回です!
クレプス・コーロ編は急遽追加した章なので、前触れもなく新キャラを登場させております。(笑)
何の前触れもなく、ということで、旅の一座の人としたわけですが、せっかくなら、とアジア圏の雰囲気にしてみました。
せっかくなので、恋愛要素たっぷりのお話にしようと、男性ならだれもが振り返ってしまうような美人な女性を出そうと思い、こういうキャラクターになりました。
ちなみにこの回で、グィファンが「スパイシーな香りが好き」と言っているのは、嘘ではありません。ただ、本当のオーダーは「私に似合う香り」です。
グィファンは過去に父親から愛する人を奪われていたりするので、実は、あまり初対面の相手に心を開かず、少しうがった見方をしていたりします。
だからこそ、とびきり素敵な香りを、とお願いした後に、具体的な香りを一つ挙げたりして、自分の本当の願いを誤魔化しています。(初対面の人を観察するようなところは、少しケイに似ているかもしれません。)
ダァンウィについては、この後、第百六十八話「キンモクセイ」で登場します♪
*百六十四話 幻想
マリアがグィファンにぴったりの香りを調香するお話。
タイトルの「幻想」は、マリアが想像しているグィファンの雰囲気と、マリアが作った香りに対してかかっています。
ここで、マリアはグィファンがクレプス・コーロの歌姫である薔薇姫だということに気づきます。噂は聞いていても、実際に見たことがない、という感じです。旅の一座なので、テレビとかのない、この王国ではなかなか人物の情報はうまく結びついておりません。
ちなみに、こちらで登場するジンジャーは美しい花を咲かせます。花言葉は「豊かな心」「慕われる愛」
マリアから見たグィファンのイメージ、という感じですね。
ラストに登場するヴァイオレットについては、この後のお話で……。
*第百六十五話 占い師ヴァイオレット
ヴァイオレット登場回であり、マリアの恋のとっかかりになる回です。
ヴァイオレットの占いは、八卦と呼ばれるもので、こちらもアジア圏で比較的有名(?)な占いです。ヴァイオレットの母親と、グィファンの影響を受けています。(グィファンも、八卦の結果を読むことが出来ます)
ここで、ヴァイオレットがマリアの「運命の人」を占うわけですが、その結果は「運命の人はまだ先」です。
シャルルとの恋愛に悩んでいたマリアにとっては、「今の人は運命じゃない」ということですね。
運命をあまり信じていないマリアですが、シャルルとの恋の悩みに、思いがけず指標をいただくこととなりました。
*第百六十六話 お悩み相談室
マリアが恋の相談をする回。
グィファン(ヴァイオレットも?)が、マリアにとってはよき恋愛の先生となりました。
愛にはいろんな形がある、というここでのグィファンのセリフは、彼女が歩んできた人生から得たものですね。
グィファンはこの回で、初心なマリアを可愛らしい、と心から思っています。
そんな健気なマリアを応援したい、と思っていますし、少しだけここで心を開いているというか、マリアに対して距離感を改めている感じがあります。
ちなみに、この回の「耐えて忍べば春が来る」は、今は我慢の時、辛抱すればおのずと結果が出る、という意味で本編中は解釈していますが。裏話として言っておくと、シャルルへの告白で胸を痛めた後は、ケイとの恋愛に進展があるよ、という……今後の展開も示唆しています。
*第百六十七話 薔薇姫
マリアが、グィファンの歌と踊りを見て、香りを作り直そうと決める回。
一度受けた調香依頼を、自分の都合で変えてしまう、というのはマリアにとって初めての事態。グィファンとしては、願ったりかなったり、な感じですが。
ここで、一気にグィファンは、この子なら信頼が出来る、と思うので、結果オーライな感じになっています。
薔薇にまつわる言葉で、一番有名と思われる「トゲのないバラはない」をここでは引用させていただいておりますが(ちょっとヨーロッパ風な言い回しに変えてますが)、ここでいうトゲは、グィファンの過去をさしています。
グィファンの場合は、人を魅了する美しさと、自分を傷つけるトゲのような過去を持つ人物なので、この言葉を引用しました。
ラストに登場するリンネは、ダァンウィの種明かし(?)のお話を書くために登場していただきました。
ここで、リンネが漢方を勉強していたガーデン・パレス編での経歴が役に立ちます!(笑)
*第百六十八話 キンモクセイ
ダァンウィの正体(?)が判明する回です。
キンモクセイは、私たちにとっては馴染み深い香木ですが、実は、ヨーロッパにはあまりない木なのだそうです。マリアが知らず、ガーデン・パレスにある、というのはそういう理由ですね。
ちなみに、花言葉は「気高い人」です。グィファンにぴったりな花言葉になっています。
グィファンが「ダァンウィ」と呼んでいるのは中国語「丹桂」から来ています。
漢方に使われることもあるそうで、漢方を研究していたリンネがこの木を手に入れている理由になっています。(実際、作中で出てきたのはお酒ですが。笑)
リンネの庭については、番外編に補足のお話を書かせていただきましたので、ぜひ、そちらも合わせてお楽しみいただけましたら幸いです♪
*第百六十九話 桂花陳酒
キンモクセイのお酒、桂花陳酒を中心としたお話。
グィファンとケイが初めて出会う回でもあり、マリアとケイがすれ違うきっかけとなるお話でもあります。
クレプス・コーロ編のプロットを追加で書き加えた時に、マリアに恋を知ってもらうならここだな、と思い(ケイはほマリアに気があるので)、そのためのすれ違いを少しここに追加しました。
大したことじゃないんですけど……好きな人が自分以外の誰かと仲良くしてるとちょっと気になる、的なあれですね。(どれですかね)
ちなみに、ここでケイがグィファンに送った視線の意味と、グィファンの言葉の意味は、後々明かされますが、この時点でそれを察しているのはグィファンだけ、ですね。
ラストの、グィファンの言葉が、マリアの気持ちを自覚させることになります。
*第百七十話 グィファンの過去
グィファンが自らの過去をマリアに打ち明ける回です。
グィファンは、マリアを信頼できる人間だ、と分かって自分の過去を話しておりますね。薔薇姫の演目の題材は、グィファンの話をもとに作られているので、マリアの調香にも、後に大きくかかわってくるお話です。
恋愛要素とともに、この章では、女性らしさとか、女性の生き方みたいなものを少し書けたらいいな、と思っていたので(マリアは女性主人公ですし……)、そういうところも少し感じていただけていたら幸いです。
最後に調香の描写が少し出てきますが、クレプス・コーロ編では、この後、グィファンに香りを渡した時と、舞台での描写にも香りが少し登場したりするので、あえて小分けにして香りのことを書いております。
*第百七十一話 歌舞、香り
グィファンに作った香りをお届けする回。
この一つ前の、第百七十話「グィファンの過去」から続いて、香りの描写が書かれています。
個人的には、ロータスの香りが結構ポイントで、ロータスはハスの花のことです。花言葉がたくさんあるお花ですが、ここでは「神聖」をグィファンの雰囲気にかけ合わせています。
ちなみに、キャラクター裏話で少し書かせていただきましたが、グィファンのモデル(?)となった楊貴妃は、ハス茶を愛していたという話もあったりして、少し縁のあるお花です。
一応、クレプス・コーロ編の前半はここまで。
前半は、マリアの調香と、グィファンの過去についてのお話でした。
この後、後半は恋愛要素が割と増えてくるので、そういう違った雰囲気をお楽しみいただければ、と思います。




