第九章 思い出の香り編 裏話2
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
思い出の香り編の第百四十五話「ソティの退屈しのぎ」~第百五十五話「パウンドケーキ」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第百四十五話 ソティの退屈しのぎ
ソティと、記憶を取り戻す香りを探すお話。
後のお話で、ソティの夫がオレンジの香水をつけていたことが分かるのですが、ここでは、それのとっかかりとして、ソティが一番好きな香りがシトラス系だということが分かります。
そして、シャルルのお姉さん、エリーのこともここでちらっと出てきますが……すでに、お姉さんで書き出していたものを修正したので、その名残りでどうしても出したかったという裏話でした。(笑)
エリーは、番外編で出てきますのでぜひぜひ合わせてお楽しみください♪
*第百四十六話 書斎
マリアがシャルルの父親の書斎で、手掛かりを見つけるお話です。
この、香水と写真が、後々大切なヒントになるのですが、香水が記憶を取り戻す一度目のきっかけ、写真が二度目になります。(しかも、香水は祖母のものっていうさらに伏線? 的な感じでした)
シャルルとマリアは結ばれることのない二人ですが、その分、この章でちょっと夫婦(?)っぽい描写を入れております。この章を読み直すと、シャルルを幸せにしてあげたいな、と思うばかりです……。(今更)
*第百四十七話 手がかり
マリアが見つけた手掛かりを、シャルルとアーサーと三人で考えるお話。
今まで、シャルルやアーサーが遺品整理をしてこなかった(できなかった)ところに、マリアがやってきたことで、シャルル達家族にも少し新しい風が吹いている感じです。
ここで、香水瓶の底にある刻印の話が少し出てくるのですが、こちらはマリアの祖母、リラのお店のマークで、後々の伏線になっております。
写真も、後々、ソティの故郷の村だということが分かる大切なものですね。
大事だぞ! っていうのを、この回であえて強調しておりました。(笑)
*第百四十八話 出張店舗と井戸端会議
マリアがシャルルのお庭でお仕事と井戸端会議にいそしむお話ですね。
この後、マリアのお店が繁盛していくきっかけの一つです。
シャルルとの結婚やら、アーサーとの結婚やらをすすめられる回でもあるのですが、この「外堀から埋めていく作戦」は、シャルルとソティが同じ考えをしているので、親子の関係性がよくわかるかな、と思います。(笑)
一応、この後、シャルルの家のお庭で、カフェをするという風につながっていくのですが、そのおかげで「オレンジの香り」の正体を知る奥様とも出会うことが出来る、という感じです。
*第百四十九話 小さな一歩
アーサーとシャルルが、「オレンジの香り」を売っていたショップカードを見つける回。
今までしてこなかった遺品整理を兄弟二人でするところから始まりますが、アルバムを見ながら、二人で過去のことだったり、母親のことだったりを思うお話になっています。
そして、ここで登場する「パラメーラ」のショップカード。後からお話でも出てきますが、パラメーラは、マリアの祖母リラのお店です。
フランス語で、「海のそば」を意味する「Par la mer」をそのままお店の名前にしました。(祖母リラは元々小さな海辺の町で調香を営んでいたので、海のそば、ですね)
パルフ・メリエとも少し響きの似ているところもあり、個人的にお気に入りのお店の名前です。
最後には、シャルルの姉、エリーからもお手紙が届きますが、こちらでも「港町、海がきれいだった」ということが書かれているので、なんとなく察した方もいらっしゃるかもしれませんね。
*第百五十話 オレンジ
マリアの作ったオレンジの香りに、ソティが少しだけ反応を示すお話。
この章では、オレンジがキーとなっておりますが、そんなオレンジの花言葉は「あなたの純粋さは、あなたの愛らしさと釣り合っている」です。
夫が、妻であるソティに贈るつもりだった香りにぴったりな意味がこもっています。
ソティの人柄にもぴったりかな、と個人的には思っています。
オレンジの香水はすでに見つけていますが、古いものは香りが揮発してしまっていたりして、当時の調香を再現するのが難しいため、この回では、マリアが色々とオレンジとほかの精油の組み合わせを試しております。
ちなみに、ここで、オレンジと草木の香りを混ぜたような香りに、ソティが反応を示すのですが、これこそまさに「記憶を取り戻す香り」の伏線(?)というか、とっかかりになっています。
*第百五十一話 マーク
香水瓶の刻印とショップカードのマークが、祖母の店のものであるとわかる回です。
(正しくは、そうかな? という、ずるい感じで終わってますね。笑)
マリアが、マークを見たことがあるような気がするのに、思い出せない、というのは後でも出てきますが、祖母の昔のお店だからです。マリアが生まれた時には「パルフ・メリエ」へ移転しているので、マリア自身、パラメーラのことはほとんど知りません。
おそらく、祖母が健在だった時に、何かしらで見る機会があったのかな、というくらいですね。
ここで、マークの形をあえてぼかして書いているのは、ライラックのような、と書いてしまうと祖母の店だとすぐに分かってしまうからです。(ちなみに、次のお話、第百五十二話「祖母のレシピ」の中では、ちゃんとマリアが「ライラックに見える」と言っています)
ちなみに、王妃様が結婚したころに「オレンジのコロンが流行った」というのは、ディアーナの時の「愛の花束」と同じ現象です。
ディアーナの婚約者、エトワールがシトラス系の香りを好んでいるので、こんなところにもちょっとしたつながりがあります。(笑)
*第百五十二話 祖母のレシピ
祖母のレシピから、オレンジコロンを再現しようとする回です。
実はこの回で、シャルルが写真の場所を探してみる、と言っているのですが、これが後々、記憶を取り戻す香りの手がかりとなります。伏線的な感じですね。
祖母のレシピを使って、マリアも香りを作り続けてきましたが、きちんと紹介するのはここが初めてです。
祖母リラの作る香りは、マリアの調香を形作ったものなので、かなり基本に忠実な組み合わせのもの(相性の良い香りで、珍しい精油が少ないものです)になっています。
*第百五十三話 約束はオレンジの香りとともに
ケイが、マリアにデートのお誘いをする回。
もうこの辺りは完全に、ケイもマリアも、お互いを意識しているような描写が多いですね。ラストが近づいてきていたので、特に意識的にそういう描写を増やしております。
ケイは、当然シャルルの最近の動向を知っていますし、騎士団でも噂になっていたりするので、気が気でないというか……めちゃめちゃに気にしています。(笑)
マリアをデートに誘うのですが、それも、ケイの焦りというか、動揺というか……シャルルには負けられない、という気持ちの表れですね。
偶然にも、オレンジのパウンドケーキにつながっていきましたが、これも、ケイの、マリアに対する思いが、オレンジの花言葉とつながっています。
*第百五十四話 記憶の欠片
ソティがついに、少しだけ記憶を取り戻すお話。
夫がつけていたオレンジコロンが完璧に再現され、そこから夫の記憶に少しだけ結びつく、というこのお話全体を通しても「香りと記憶が密接に結びついている」を表している回です。
ここの回では、「まぶしい太陽のような香りを纏った」という表現が出てきますが、これは後に、記憶を取り戻す香りとなる、第百五十九話「干し草と太陽」の伏線になっています。
完全に記憶を取り戻すわけではない、というのがポイントで、ここはあくまでも、お話全体を通しての一つ目の山場、でした。
ちなみに、裏話(?)というか、少し書いておくと、アーサーが涙もろいのは、ソティ(母親)譲りです。(笑)
*第百五十五話 パウンドケーキ
マリアとケイの甘酸っぱいデート回です。
ケイが西の国のお土産として渡したワンピースがここで活躍しておりますね。(笑)
ワンピースは、お洋服デザイン集で公開しておりますので、ぜひ、合わせてお楽しみくださいませ♪
マリアが、シャルルと比較してケイの方を気にしてしまう、という描写があって、ラストに向けて、だんだんと二人の距離が縮まっている様子をお楽しみいただければ、と思います。
そして、店長さんに「まだ、付き合ってません」というケイは、気持ちがだだ漏れですね。
なかなか進展しない二人に、かなりもだもだしていただけていたら嬉しいです。(笑)
以上、ここまでが「思い出の香り編」の中盤でした!




