第九章 思い出の香り編 裏話1
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
思い出の香り編の第百四十一話「シャルルの家」~第百四十四話「ソティと止まった時」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第百四十一話 シャルルの家
マリアがシャルルのおうちへお邪魔する回。
貴族街の初登場なので、街の描写にやや力を入れているお話になっていますね。特に、駅舎は後々、シャルルの父親が作って、という裏話(伏線?)のために、描写が入っています。
街の名前が安直というか、固有名詞がないので、その代わりにそれぞれの街に印象的な建築物を描いていますが、皆さま、それぞれ思い出せますでしょうか?
ぜひ、読み返して楽しんでみてください。(笑)
シャルルの父親が建築家であったことが、この回で明かされますが、このお父さんの作ったモチーフのものは、お話の中でも結構たくさん出てくるので、こちらも合わせて探してみていただけると嬉しいです。
そして、最後に。シャルルのおうちは、ヴィクトリアン様式。1900年代にリバイバルとして愛された建築様式のおうちで、三角屋根が特徴です。家具も、同じくヴィクトリアン調のものが多く、シックなイメージになっています。
*第百四十二話 アーサー
シャルルの兄、アーサーが登場する回であり、シャルルの調香依頼が明かされる回です。
思い出の香り編は、元々シャルルをメインキャラにした章であり、マリアのこれまでの成長が分かるような章にしようと思っていました。そんなわけで、記憶喪失となった母親の記憶を取り戻す、というお話の内容になり、思い出の香り編がスタートしたという裏話があります。
アーサーはシャルルの兄であり、優秀なお医者様ですが、実は、このお話から急遽追加したキャラになります。
本当は、お姉さんを登場させるつもりだったのですが(序盤で存在を明かしていたので)、お姉さんで書き始めた際、マリアとシャルルの関係に序盤から収集がつかなくなってしまって、本筋からそれていってしまったので、お兄さんに書き直した経緯があります。(苦笑)
最終的には、母親の記憶を取り戻すために、マリアとシャルルと共に、頑張ってくれるアーサーの存在は、大変頼もしかったです。
*第百四十三話 二人からの調香依頼
マリアが二人から依頼を受けるお話であり、お母さんが登場する回ですね。
アーサーの存在が、シャルルの「母親の記憶を取り戻したい」という気持ちをさらに後押ししてくれたようなお話で、個人的にはそれだけでも、アーサーを登場させておいてよかった、という気持ちになりました。(苦笑)
クリスティ編の後で「調香は薬ではない」ということを、マリアも実感している中での依頼だったので、この回ですぐにマリアが依頼を引き受けないのは、そういう理由もあります。
そして、シャルルの母、ソティの登場ですが。とにかく、かっこいいと評判のシャルルの母親なので……とびきり美しい人にしようと思って書いた記憶があります。どこか浮世離れしている雰囲気を感じ取っていただけていたら幸いです。
見た目に反して、二人の女性関係にはとにかく前のめりなところに、母親らしさ、みたいなものも感じていただければ、さらに嬉しい限りです。
*第百四十四話 ソティと止まった時
マリアが、ソティに会って話をきき、調香依頼を受ける決意をした回。
前半はソティのマシンガントークから始まりますが(笑)、夫のことになると途端に物静かな雰囲気になるよう、対比させています。ソティの物悲しさ、みたいなものがそういうところから伝われば、と思っております。
調香依頼を引き受けたマリアですが、ここでアーサーがマリアを気遣ってくれているので、マリアもこの後、少し安心して、というか、自分にできることを精一杯に頑張ろう、と思えるようになっています。
そして、ラストで、マリアがシャルルの家に来ることが決定しておりますが……この辺は、番外編で少し補足させていただきましたので、ぜひ、番外編と合わせてお楽しみいただけましたら幸いです!
ちょっと短いですが……思い出の香り編は、物語の構成上、導入が短めで、一つ目の香りが長く、二つ目の香りからラストがまた短め、という感じになっているので、今回はここまでです。区切りのバランスが悪くてすみません……(苦笑)
思い出の香り編は、本編全体で見た時には、クレプス・コーロと合わせて第四部。
二つとも、ちょっと大人っぽい(?)しっとりとした雰囲気を楽しんでいただければ、と思います。




