第七章 収穫祭編 裏話2
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
収穫祭編の第百五話「シャルルとカントス」~第百十三話「収穫祭の恩恵」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第百五話 シャルルとカントス
シャルルとカントスが城下町のお祭りを楽しむお話。
収穫祭編の後半一話目ですが、今までの少し落ち込んだ雰囲気を取り戻そうと、想像以上にわちゃっとした回になりました。(笑)
特に何か伏線を仕込んだり、考えたりしたわけではないのに、なぜかやたらと印象に残っている、という不思議な回です。(笑)
一応、キモノの話を聞いたシャルルのお話が、この後、第百七話「恋の攻防戦」の伏線的な感じにはなっていますが、大したことではないですね……。
ラストで、シャルルがケイに「明日は妹さんが来るんだろう?」と言っていますが、これは、第百六話「ジャンヌ」のお話のつなぎになっています。
*第百六話 ジャンヌ
ケイの妹、ジャンヌが城下町の収穫祭に訪れる回。
収穫祭編の裏話1でも書きましたが、ここでは、第九十九話「パーキンとキャンドル作り」で作ったアロマキャンドルをジャンヌが購入していて、お話につながりが出ています。
ジャンヌは「シャルルに会いたい」というのですが、こちらは、キングスコロンなどが好きなジャンヌのミーハーな感じが少し現れている一面です。話題になっているものには飛びついてしまう性格ですが、ケイとは正反対の楽観的で開放的な雰囲気の妹にしようと思っていたので、こういう感じになりました。
後半は、マリアとシャルル、そしてケイとジャンヌの不思議な組み合わせ。
マリアの危機(?)に駆け付けるケイは、シャルルに「騎士団に向いている」と思わせる働きですが、ケイの名前の由来「騎士」をイメージしています。
*第百七話 恋の攻防戦
シャルルとケイがマリアをめぐるバトル(?)を繰り広げるお話。
はじまり編の第五話「律儀な客人」でケイがジャンヌへ香水を買っているので、ジャンヌはマリアのことを一方的に知っているのですが、ここで序盤の伏線(?)というか仕込みを回収しています。
また、ジャンヌがいることで、ケイはパルフ・メリエに行きやすいというか……口実が出来るので、そういう意味でもジャンヌは結構ケイの恋路を進めるために大事なキャラクターでした。
このお話では、まだどちらに軍配が上がるか分からない感じにしようと思い、団長室ではシャルルがやや優勢で、ラストのところではケイが優勢、とあえて半々においしいところを作っています。
ラストのケイの「綺麗だ」のセリフが、どこに向けられたものなのかは……皆様のご想像にお任せします!(笑)
*第百八話 緊張と緩和
マリアがディアーナに会いに王城へ行く回。
久しぶりにディアーナが登場しますが、こちらはディアーナのお誕生日に向けての仕込み(第百二十四話「証言と全貌」で出てくる調香シーンへのつなぎ)と、この後の「西の国編」への伏線になっています。
お誕生日の方は、ラストにディアーナが「あのね」と耳打ちするシーンのところです。この後、本編では何が語られたのかはあえて書いていないのですが、それが後からそういう依頼を受けたことが分かります。
「西の国編」の伏線は、王城に緊張感が漂っている部分。これは、この後の「西の国編」で、トーレスを探してほしいという依頼を国王たちが受けた、という話が出てくるのですが、まさにそのことです。
ちなみに、ここではさらにもう一つ、地味な裏話としてディアーナとエトワールの喧嘩の話があります。
こちらは、王城編の裏話で少しお話しておりますが、エトワールが甘いものが苦手だ、というくだりの喧嘩で、ディアーナにとっては遠慮せずに言ってくれればいいのに、というくらいなものです。(笑)
こうしてみると、結構、情報量の多い回になっておりましたね。
収穫祭編の中で、唯一お祭りっぽさが少ない回なので、閑話休題的な雰囲気があるのですが、次の章以降への準備をたくさんしておりました。
*第百九話 最終日前夜
ミュシャが独立を伝えることを改めて決意する回。
独立をすることに対して、マリアがどう思うだろうか、と考えるミュシャのシーンで、どうせ笑って……というくだりがあるのですが、こちらは、第百十二話「独り立ち」の伏線になっています。
実際、マリアは寂しい、と思っているので、予想に反して、という感じですね。
後半では、マリアがミュシャに対して、今までのようにはいかないのだ、と告白を振った側としても気持ちに決別する描写がありますが、ここで初めて、マリアは「恋」とか「好き」という気持ちと向き合います。
このお話以降、マリアが自ら、恋愛沙汰に対して少しずつですが、進み始めております。
*第百十話 収穫祭最終日
マリアとミュシャが、収穫祭最終日を楽しむ回です。
マリアが購入している植木鉢は、収穫祭編の最後、第百十三話「収穫祭の恩恵」で、再度登場します。特にホオズキは、収穫祭編のメイン、東都の方の雰囲気のある植物で、ある意味収穫祭のメインとなる植物です。
マリアとミュシャがランチをとったお店の料理は、ギリシャの料理がモチーフ。デザートのフルーツの砂糖漬けは、ギリシャの伝統的な「スプーン・スイート」と呼ばれるものです。
*第百十一話 二人のテラス席
マリアとミュシャが、洋裁店のテラスで最後の花火を見るお話。
実は、ここは第百三話「花火」の対になるお話です。
同じ花火という共通点を持ちながら、このお話では、マリアがミュシャに対して「好きになってくれてありがとう」と友達としての告白をします。
これを受けてマリアへの気持ちが吹っ切れたミュシャが、前に進み始める、という感じの構成になっています。
ラストは、第百十二話「独り立ち」へのつなぎ。二部の最後の山場に向けて、大事なお話がありますよ、という雰囲気で終わりにしています。
*第百十二話 独り立ち
ミュシャが独立を告白する回です。
ずっと一緒だったミュシャとのお別れを、マリアが悲しむのですが、どちらかといえば今までマリアに振り回されてきたミュシャが、この回からはマリアよりお兄さんな感じになっています。
このお話で、ミュシャの成長を感じていただけていたら幸いです。
この後の「ミュシャの独立編」へのつなぎになっていて、ここでミュシャが話している内容がそのまま、「ミュシャの独立編」で回収されています。
*第百十三話 収穫祭の恩恵
マリアが収穫祭編で手に入れた植物や食べ物を楽しむ回。
収穫祭編のラストであり、次の「西の国編」へのつなぎを兼ねた閑話休題的なお話です。
「西の国編」の仕込みは、すでにここまでで終わっているため、最後の最後で次の章を予感させる雰囲気だけ書いています。
ここで登場するホオズキの花言葉は「心の平安」と「ごまかし」
「心の平安」は、このお話自体のマリアの心情を表していますが、「ごまかし」はこの後の「西の国編」をイメージしています。
この後登場するトーレスは、自らの姿を隠し(ごまかして)、マリア達の国へと逃亡し、マリアのところに居座ることになるので、ここでのホオズキの二面性が、このお話とぴったり合うようになっています。裏話でした。
ここで、祖母が魚を自分で捕っていた、という話がありますが、こちらは祖母リラが、小さな海辺の町の出身であることや舟歌をマリアに教えている(マリアの港町の夜での出来事です)ことから、両親が漁師で、リラの夫もそうだったから、という裏話があります。
本編にはまったく出てこないお蔵出し情報でした。
収穫祭編は、お話全体を通してみたときに二部の山場となるところだったので、王城編ほど話数はないですが、印象深い回が多くなるようにしたつもりです……。
お祭りの楽しさと、ミュシャのちょっと切ない感じのバランスを楽しんでいただけておりましたら幸いです。




