第四章 調香師との出会い パーキン編 裏話
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
調香師との出会い パーキン編の第六十話「恋が叶う香り」~第六十九話「スウィート・ランチタイム」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第六十話 恋が叶う香り
マリアの店大繁盛&久しぶりのアイラ登場回です。
本編全体としては、一つ目の山場を終え、二つ目の山場に向かっての最初のお話になります。マリアの今までの生活が、一変(?)した様子なんかもあって、ちょっと変化が見られますね。
第四十四話「婚約者候補」で出てきた香りが、ここでは「恋が叶う香り」として登場しています。
そして、この回では、二つの伏線があったので、ご紹介しておきます。
一つ目は、季節によって入手できる花が変わり、同じ香りを作り続けるのが難しい、という描写。ここは、この章で出てくるパーキンの伏線です。パーキンは化学者で、化学物質から香りを作り出す調香師。マリアの困りごとを解決してくれる彼の登場を暗示させるため、あえてそういう描写を入れました。
二つ目は、一人では店を回すのが難しくなってきた、という描写。こちらは最後の方でマリアが新しい人を雇うか、どうしようか、というところの伏線的な感じにしています。
*第六十一話 アイラの恋
アイラがシャルルへの思いをマリアに告げるお話。
王城編 第三十三話「決断」で、描かれていたアイラのシャルルへの思いが、本気だった、ということが分かる回です。(ある意味、伏線回収(?)ですね)
ここでは、「恋のお守り」としてアイラは香水をマリアに依頼するわけですが、こちらは、シャルルとの恋が終わり、ハラルドとのお見合いでも使っていますので、アイラにとってはまさに「恋のお守り」「恋が叶う香り」となりました。
最後に、マリアが自分もいつか恋をする日が、と考えていますが……こちらは言わずもがな、ですね。
*第六十二話 パーキン
この章のメイン、パーキンの登場回です。
王城編 第三十話「王妃様からの手紙」の伏線回収の一つ目になります。
キングスコロン、というタグが付いている香水瓶があそこで登場しているのは、ここでパーキンが出てくるからなのですが……相当間が空いている上、描写がちょっとだったので、思い出していただけた方、ピンときた方がどれくらいいらっしゃるのか不安です。
この回でも、第六十話「恋が叶う香り」と同じく、材料の入手が出来なくなることをマリアが懸念していますが……こちらも、この後登場するパーキンの調香の仕方を暗示しています。
*第六十三話 キングスコロン
パーキンの会社「キングスコロン」にマリアが訪れるお話。
今までに暗示されてきていた、どうやって時期に関係なく、安くで香りを作り続けるか、ということの解説を少ししている回になっています。
ちなみに、キングスコロンは直訳して「香りの王様」というなんとも大げさな会社名ですが……これは後に、(史実的にも)化学薬品の合成によって香りが作られていく、パーキンはその先駆者なので、まさに「香りの王様」という感じです。
今現在、私たちの周りにある香りは、ほとんどがそういう作られ方なので……今後の「香り」についての行く末、みたいなものをこの章では少し取り上げています。
*第六十四話 化学者と調香師
マリアとパーキンが、それぞれの立場から「香り」について語る回です。
実は、「調香師との出会い編」は、もともと一つの章にしようと思っていました。ただ、書きながら、王城編(一つ目の山場)と同じくらいかそれより長い話数になってしまいそうだったので、それを避けるため三つに分割した経緯があります。
この「○○と調香師」というそれぞれのキャラクターに合わせたタイトルは、その名残です。
このお話に登場する純粋な調香師は、マリアとリラだけ。そのほかの三人は、他の職業と兼業です。
そんなわけで、それぞれ兼業という立場から、香りに対する考え方や、技術をマリアに与えてほしい、という思いで書いている章なので、このタイトルの回は、それぞれそういう思いみたいなのがあります。
マリアの成長パートツーを、この「調香師との出会い編」で感じていただけたら、と思います。
*第六十五話 アイラへの香り
アイラから依頼された「恋が叶う香り」の調香回でした。
ここで登場する「アンジェリカ」という花。こちらの花言葉の一つ「優しい憂鬱」
これこそがまさに、アイラの気持ちだったり、それから結果だったり、みたいなものを表しています。
(もちろん、マリアがそういうことを考えて調香しているわけではありません。)
気づいてくださった方もいらっしゃいまして、大変うれしいです!
実際、アンジェリカは昔から、悪魔を退ける、疫病から守ってくれる、などの言い伝えがあるくらい、素晴らしい香りをもつ植物。マリアとしては、何があってもアイラを守ってくれる香り、という感じかもしれません。
*第六十六話 アイラの告白
アイラがシャルルへ思いを告げる回。
シャルルは敏いので(便利な言葉ですね)アイラに、話がある、と言われた時点で何か感じ取っていたようですが……・。それとは裏腹に、「アイラさんは香水が好きなんだね」「僕もこの香りは好きだな」とアイラへ話している間は、ジャスミンの香りでマリアを思い出していました。(という裏話があります。切ない恋愛が好き、という方はぜひ、これを念頭に置いて読み返してもらえれば、と思います……?)
第六十七話 ずるい人
アイラが失恋し、一人それをかみしめる回になっています。(悲しい)
タイトルのずるい人は、前半はシャルルの優しさに対して、後半は、マリアに対してかかっています。
また、第六十話「恋が叶う香り」のタイトルも、ここで伏線回収的な形で、作中に登場しますので、ぜひ探してみてください。
また、第六十五話「アイラへの香り」で登場したアンジェリカの花言葉が、ここによりマッチしているかな、と思っていますが……「優しい憂鬱」感じていただけましたでしょうか?
*第六十八話 販売初日
「愛の花束」(もともとは、「恋が叶う香り」ですね)の発売日であり、久しぶりのケイ登場回です。
一応、マリアとパーキンはビジネスパートナーですが、この販売初日の盛況ぶりに、パーキンはマリアとの関係をこれからも保っていこう、と思ったに違いありません。(笑)
ここで、ケイが登場し、パーキンは「男性」が「香り」を手にする、ということに興味が沸いて分析を始めるのですが、「開花祭編」でそれがようやく形になります。
少し長いうえに、わかりにくいですが、お話として不自然のないよう、こういう形でかなり前から細かなところに仕込みがあったりします……。
そして、最後にケイからマリアへランチのお誘いがありますが……ケイはもうここで完全にマリアを意識しているんじゃないかな、という感じですね。
ラストの「開花祭編」へ向けて、この辺りから恋愛要素も少しずつ増えてきています。
*第六十九話 スウィート・ランチタイム
マリアとケイのランチタイムのお話。
ガーデン・パレス編 第二十八話「ケイの看病」が無意識だったのに対し、ここでは意識的にマリアが行動しているので……そういった意味で、二人の距離感がぐっと縮まっているな、と感じていただけていたら幸いです。
最後の、ケイからの時々こうして二人で会いたい、という言葉もそんな雰囲気を醸し出せているのかな、と思います……。(結局、なかなか進展しないのですが)
ちなみに、この回でランチをとったお店は、この後も何度か出てきますので、ぜひぜひ探してみてください!




