第三章 王城編 裏話3
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
王城編の第五十一話「疑念」~第五十九話「最後の仕事」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第五十一話 疑念
三回目の会食と、ハザートのもとに脅迫状が届く回です。
ここでは、再びトーレスの境遇や帰りの馬車での様子を書いていて、この後の「西の国編」への仕込みをしています。
「王城編」ではトーレスは悪者ですが、「西の国編」ではトーレスは被害者側なので、皆様にできるだけ「そりゃ、西の国から逃げたくなるよな……」と思ってもらいたいな、と思い、トーレスの不幸なエピソードがちょこちょこ挟まっています。(不憫)
そして、ここから王城編の山場に向けて「ハザートの自作自演」が始まります。
第四十六話「暗躍」のハザートの悪だくみ(伏線?)がここから回収されていきます。
ちなみにここで、シャルルが婚約者候補に「見張り」(シャルルからすると容疑者なので、見張り、とあえて書いています)をつけ、それを王たちには内密に、と言っているのは、ハザートが王城内に出入りする大臣だからです。万が一のことを考え、情報が漏れないようにするためです。
*第五十二話 画策
ケイがハザートを見張り、悪だくみに気づく(?)回です。
この回で、シャルルはほとんどハザートが犯人だと気づいています。
もう少し証拠が欲しい、と言ったのは、物的証拠がないからですね。ケイが最後に「小さな箱」を見つけますが、これこそ、シャルルの言っていた「証拠」にほかなりませんでした。第五十五話「収束」にて記載していますが、「小さな箱」は爆弾で、第五十四話「争闘」にてきっちり伏線回収されました。
ちなみに、ここで少しだけ、ケイの過去について触れていますが、こちらは番外編にて掘り下げていますので良ければぜひ、番外編と合わせてお楽しみください。
*第五十三話 別荘での会食
ハザートと別荘で会食をする回。
不穏な前触れであり、王城編としての山場手前になっています。
シャルルが「会食を開いてほしい」というのは、この爆弾を使わせるためです。実際、いろいろと予定が狂ってしまうので、シャルルが考えた作戦通りにはいかなかったのですが、シャルル的には、爆弾を起動させたところで現行犯逮捕したい、というところでした。
もちろん、会食場所に人気のない別荘を選んだのもシャルルですね。(王国騎士団団長様様です)
ここ、少し動きが複雑なのですが、ケイはこの日、ハザートを見張る役。そして、シャルルが執事を見張る役でした。(執事の方が実行犯の可能性が高いからです)
執事は、飲み物を取りに行くフリをして、別荘内へ忍び込むのですが、ケイは、いつまでも戻ってこない執事を不信に感じてハザートから離れます。一方、シャルルはケイより一足先に、そんな執事を追ったのですが……シャルルの場合、マリアを見つけてしまった、という流れです。
ちなみに、エトワールは最初から最後までディアーナの護衛に徹しています。
*第五十四話 争闘
VSハザート執事戦です!(?)
お話の山場ですが、めまぐるしく視点が切り替わる複雑な回で、読者泣かせだな……と今更ながら反省しております。すみません。
時間経過の順に書いていて、ケイが執事と邂逅→エトワールがディアーナを救出→シャルルがマリアを救出→ケイvs執事→シャルルがそこへ現れ、ケイを援護、という流れになっています。
実はここ、ケイが男を剣で傷つけられないのに対し、容赦なくシャルルが男を銃で撃つ、という対比になっています。
シャルルの裏の顔、国のためになんでもやる、という一種の冷酷さをここで感じ取っていただければ、と思っています。
流血表現があるので、ここだけR15としたのですが、いまだに線引きは分からず、難しいな、と思う日々です。
*第五十五話 収束
無事に事件が収束し、ひと段落回でした。
前半のシャルルの冷たい雰囲気と、後半のディアーナのあったかさを対比にしたお話になっています。
ここでは、第五十二話「画策」で出た「吊り橋効果」という言葉をシャルルが説明していますが、これはこの後の第五十七話「その感情の名は」の伏線です。この「吊り橋効果」こそ、シャルルが、マリアへ思いを寄せる要因の一つになっています。
裏話というか、ここで別荘が壊されたおかげで(?)港町のお話を書くことが出来たので(ディアーナとエトワールの別荘が港町に建設されたので)、王城編で細かくいろいろと書いたことが、後のお話にかなり影響を与えています。
*第五十六話 メックの決意
メックとの会食回であり、メック別れの時、です。
冒頭で雨が降っていますが、これはメックの気持ちにリンクしています。婚約者を辞退する、と決めていたメックは、明るく振舞っていますが、実際心の中では悲しみでいっぱいだったので。会食後には雨が上がっていて、メックが本当の意味で気持ちが吹っ切れた、という感じです。
最後でディアーナがメックを友達だというのですが、後々、こうしたお付き合いもあって、メックの商店は(もともと大きな商店でしたが)王家に認められた商店となります。
そんな裏話があり、調香師との出会い カントス編、第七十一話「ティエンダ商店」で青い看板、という記載が出てきます。
*第五十七話 その感情の名は
シャルルがマリアへの気持ちに気づく回。
ジャスミンの香りがここで登場しますが、ジャスミンの香水は「幸福を招く」と言われていて、マリアがディアーナに焚いたのはそのためです。
同じく、この回ではシャルルがジャスミンを「好きな香りだ」と言っています。
ジャスミンの花言葉は「愛らしさ」
シャルルの、マリアへの思いを表しています。
第五十五話「収束」の「吊り橋効果」もばっちり伏線回収できました。(笑)
*第五十八話 素敵な運命
ディアーナがエトワールを婚約者に決め、マリアへの感謝を伝える回。
乙女なディアーナの回ですが、同時に、ディアーナの成長を感じていただけたら嬉しいな、と思って書いた記憶があります。
最初はつっけんどんな、大人のフリをして背伸びをしていたディアーナが、この回では、年相応の素直な女の子として振舞っているので、そのあたりを感じていただけていたら幸いです。
ちなみにここのタイトルになっている「素敵な運命」は、開花祭編の第二百十二話「運命を開く人」の伏線になっています。
シャルルがディアーナに贈った言葉です。そんなシャルルを好きだったはずのディアーナが、運命に導かれ、マリアと出会い、エトワールを愛するようになる、というなんとも不思議な巡り合わせになっています。
最後にディアーナから「自分に誇りを持ちなさい」と言われるのですが、こちらは、王城編の頭からマリアがずっと、自分に足りていないもの、として挙げていた「調香師としての誇り」に対して、ようやく、つかむことの出来たものでした。
*第五十九話 最後の仕事
マリアの王城での最後のお仕事回です。
ここは、裏話とかも特になく……一応、書くとすれば、最後の文章が、物語の一つ目の山場として、マリアの成長を物語ってくれている、という感じでしょうか……。
元々、マリアは腕のいい調香師ですが、足りない部分を身に着けて、さらに成長している、という感じになっています。
個人的には、王城編の最終回に相応しいお話になったのでは、と思っています。
王城編は、お話全体を通しても一つ目の山場として、かなりキリのいい部分です。そんなわけで、王城編の最後も前の二つの章に比べて閑話休題的な感じではなく、きっちりとお話を締めくくっています。




