第三章 王城編 裏話2
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
王城編の第三十九話「初出勤」~第五十話「恋とローズ」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第三十九話 初出勤
マリアの王城初出勤回です。
ワンピースが贈られた理由が遠回しにですが、明かされています。(ある意味、第三十話「王妃様からの手紙」の伏線回収ですね)
王城へ通うので、パルフ・メリエのお休みが増えているのですが、これは、後々「調香師との出会い カントス編」にて、最近はお店をお休みにし過ぎているから、というマリアの言葉の伏線(?)です。(お話の都合上、カントスに北の町から出てきてもらいたかったので)
ちなみに、謁見の間で、王妃様が「ディアーナはなぜか、マリアのことを知っている」と微笑みますが、こちらはガーデン・パレス編の第二十六話「王女ディアーナ」の伏線回収です。(笑)
番外編に前後談を書いたので、よければぜひ、ご覧ください♪
*第四十話 マリアとディアーナ
マリアとディアーナのお顔合わせ(?)回。
ディアーナの甘いもの好き、について少し裏話を。
こちらは、マリアと仲良くなるためのきっかけであり、この後の会食でエトワールとのシーンを書くためのちょっとした伏線になっていました。(エトワールに甘いものを差し出す、というのが重要だったので)
全くお話に出てきませんが、せっかくの裏話なのでお話すると……。
この後、調香のレッスンをする時は、大抵お茶とお菓子が出てくるようになるのですがこれは、ディアーナが「マリアが甘いものが好き」というのにかこつけて自分も、両親からあまり食べてはだめだと言われているお菓子を食べるためです。(笑)
(第四十二話「初めての調香」に少し出てきます)
*第四十一話 七つの香り
調香の基礎、香りの種類のお話です。
ようやく、この辺りで調香師っぽいお話が出てきますね。
シトラスの香りが好き、と言って、落ち込んだ時には思い出す、というディアーナのセリフ。ここでは、ディアーナはまだシャルルに思いを寄せています。
この後、エトワールがシトラスの香りを好きになり、シャルルを思っていたディアーナがいつしか、シトラスの香りでエトワールを思うことになる、というのは一つ裏話です。
スパイス系は、ディアーナの過去と関係しています。スパイス系の香りは、暗い過去と決別をするのに良いとされている香りなので、ディアーナが好むのも納得な香りです。
*第四十二話 初めての調香
ディアーナが初めて調香をする回です。
実は「人に調香をしてもらう」というここでのレッスンは、後に開花祭編での、アイラとハラルドに調香をしてもらう、というもののベースになっています。
「食事の場で……」というマリアの言葉がここに出てきますが、第四十四話「婚約者候補」でディアーナはきちんとそのマリアの言いつけを守っていることがわかります。
また、この後の「香りは記憶と密接に結びついている」というマリアのいつものフレーズですが、こちらは第五十九話「最後の仕事」の伏線(?)です。ディアーナがエトワールに同じセリフを言っています。
こういった、マリアの言ったことを覚えて実践し、それをほかの人に伝えていく、という部分がディアーナの賢さであり、ディアーナがマリアを尊敬していた証になればいいな、と思っています。
*第四十三話 帰り道にて
マリアがケイに帰り道を送ってもらう回ですね。
ある意味、はじまり編 第四話「再会」のリベンジになっています。(笑)
漠然としていたケイのマリアへの思いに、輪郭が出てきたかな、という場面です。
スパイス系の香りを、たまには良いと思った、とケイが言うのですが、こちらは、「クレプス・コーロ編」に少しだけかけているところがあります。
グィファンは「スパイス系の香りが好き」といい、マリアも「スパイス系の香りが似合う」という評価をするわけですが、そこにケイが現れてすれ違いを起こす、という構造になっているので、このお話のケイが「良いと思った」という香りが、後ほど登場することになります。(めちゃめちゃわかりにくくてすみません)
*第四十四話 婚約者候補
ディアーナの婚約者候補との会食が始まった回。
一応、六人の紹介順は、お話的にメインになる二人を最初と最後に置いた感じになります。(二人目と三人目の説明がほとんどないので、この時点でお察しされた方もいらっしゃるかもしれません……。)
また、トーレスがここで登場するのですが、こちらは「西の国編」の仕込みです。
裏話としては、ディアーナが甘いものをエトワールに進めていて、エトワールが「断れず」それを食べるのですが、実はエトワールは甘いものが苦手。後ほど収穫祭編 第百八話「緊張と緩和」の伏線になっています。(ディアーナとエトワールが喧嘩して、というくだりがあります)
作中でも記載しているので、あまり裏話ではないですが、最後のお花の香りの描写は、この後の「調香師との出会い パーキン編」の伏線になっていました。
*第四十五話 秘められた思い
ディアーナがマリアに「好きな人がいる」と打ち明ける回です。
裏話としては、ディアーナがここで語る「私の命を助けてくれた」というのが、シャルルが若くして騎士団団長まで登りつめた要因の一つです。
この後、同じくディアーナの命を守るエトワールが国王になるので(こちらは助けたから、というわけではありませんが)ディアーナ(王族の跡取り)を助けるというのは、それくらい影響力があります。
大抵、こういう王族系の話だと「男が跡を継ぐ」みたいな感じのお話が多いのですが、後から出てくる西の国との差別化を図るためにも、マリア達の王国は少し女系な雰囲気になっています。
*第四十六話 暗躍
次の会食に向けた、「婚約者紹介」みたいな回。
ここでの順番は、この時点で婚約者になる可能性が高い順になっています。ディアーナ王女の親密度、という感じでしょうか。
これから起こる「嫌な感じ」を出したかったので、ハザートが最後になる順番にしました。
また、ここでトーレスの西の国での扱いとか、育ち、みたいなものをあえてしっかりめに書いているのですが、これはこの後の「西の国編」に備えての仕込みになっています。
*第四十七話 二度目の会食
二回目の会食、はちゃめちゃ回ですね。(苦笑)
トーレスとハザートが悪い人で、エトワールが良い人、という構図を作り出し、メックのお話を書くための仕込みとして、メックが少しかわいそうな感じになったお話です。
あえて、かなり険悪な雰囲気のお話にしています。
ちなみに、「騎士団の男が貴族に逆らうなど」というハザートのセリフがありますが、実は、エトワールは中流貴族の出なので、位は変わりません。
ハザートは、トーレス以外の男に興味がなかったので、エトワールの出自については知りませんでした。
*第四十八話 商人メック
メックとマリアが出会うお話です。
「調香師との出会い カントス編」へのつなぎとしての役目もあり、結構大事な回になっています。
マリアが贈ったラベンダーの香りは鎮静効果がありますが、それとは別にラベンダーの花言葉「あなたを待っています」にかかっています。
メックが、ディアーナを思い、けれど一歩踏み出せない。そんな思いが、ここのラベンダーに現れています。
逆に、ディアーナからしても、「本来の」あなたを見せてほしい、待っている、というメックへの期待の現れです。
*第四十九話 ディアーナとエトワール
エトワールが、ディアーナの心を射止める(?)回です。
ここはあまり裏話もなく、ストレートに二人のお話を楽しんでいただければ、と思うのですが、あえていうなら最後のオレンジの香りでしょうか。
エトワールが後に、シトラス系を好きになるきっかけなのですが、ディアーナと二人で初めてたくさん話したことを思い出すから、です。
シトラス系には、緊張を和らげる、場の雰囲気を明るくする、といった効果もあるので、そういった香りの雰囲気も楽しんでいただければ、と思います。
*第五十話 恋とローズ
ディアーナの恋心が揺れ動く回。
調香師的な観点からいくと、バラの香りを抽出する回になっています。
バラの香りについては、おなじみ、水蒸気蒸留法で取り出しています。
バラの花言葉は、「愛情」や「美しい」
ここでは恋愛に悩むディアーナの「愛情」にかけられています。
マリアが恋愛、というものを少しずつこの辺りから意識し始めるのですが、特にこの「恋とローズ」のタイトルは、後の「クレプス・コーロ編」も暗示しています。




