第二章 ガーデン・パレス編 裏話1
毒にも薬にもならない、お話の裏話や伏線解説です。
ガーデン・パレス編の第十三話「嵐は突然に」~第二十話「香り作り」までをここでは少し裏話を踏まえつつ、お話します。
※ネタバレを含みます。
ネタバレが大丈夫だよ! という方、すでに完結まで読んだよ! という方はこちらを読むと、よりお話が楽しめるかな、と思います。
*第十三話 嵐は突然に
マリアのハプニングから始まり、王妃様からの調香依頼が届くという……新しい章の幕開けとしてはなかなかなお話になっています。
冒頭のハプニングは、はじまり編 裏話2でお話した通り、これの一つ前のお話、第十二話のところでマリアが看板掃除をさぼったことの伏線回収的な感じになっています。
後々、王城編で出てくる「吊り橋効果」ですが、実はすでにここで、マリアとケイが体現しています。
青いリボン、青いシーリングワックス、というのが現在の王妃様のシンボルなのですが、それがこの回で書かれています。(この後、いたるところで青いリボンやら青いシーリングワックスやらが出てくるので、ぜひ探してみてください)
西の国編で、王家の特別な色を表すのが赤だという描写をしますが、ある意味それと対をなす形で、マリア達の王国では、青というのが、ある意味特別な色です。
調香師との出会い カントス編で、メックの商店が青い看板を掲げているのですが、実はこれも、ディアーナが友好の証として王家が認めた商店、という意味を表していたりするのですが……こちらは、またそのお話のところで改めて書かせていただきます。(笑)
ライラックのお花の香りを抽出しているせいで、調香依頼に悩むマリアですが、これはもう、ガーデン・パレスへ行くための仕込みです。
*第十四話 提案
シャルルが、マリアにガーデン・パレスへ行くよう提案する回。
まさに、ガーデン・パレス編の幕開けですが、今考えると、このお話全体を通して、こういった物語を進めてくれるのはシャルルさんですね。(苦笑)
ガーデン・パレスの説明も少ししていますが、とにかく王家直轄の研究施設で、ふつうの人は立ち入れない、というのがここでの肝になります。
王立図書館とは真逆の立ち位置ですが、だからこそ、植物が好きなら死ぬまでに一度は行ってみたい、と思ってしまう場所になっています。
ちなみに、最後のシャルルの裏の顔っぽい部分ですが……こちらは、番外編 第十二・五話「騎士団長の根回し」にて補足をしましたので、ぜひそちらで楽しんでいただけましたら幸いです!
*第十五話 ガーデン・パレス
マリアがガーデン・パレスへ行く回であり、リンネ登場回でもあります。
ようやく、章のタイトルにもなっている場所の登場ですね。
ここでは、元ガーデン・パレスの研究員だった、という騎士団の男が出てきますが、実はこの方は、番外編 第十二・五話「騎士団長の根回し」にて、不当解雇された職員の一人です。(裏話の裏話みたいになってまして、すみません)
シャルルが、ガーデン・パレスから解雇された研究員のうち、何人かそういった能力のある人を騎士団の人間として採用した経緯があります。
ちなみにですが、ガーデン・パレスまでの道中で、いろいろとマリアへ説明をするためにも、シャルルがこの人をマリアのお付きにしています。
とってもわかりにくいので、裏話をすると、ガーデン・パレスの門(大きな鉄製の白い門には繊細な動植物の装飾)は、思い出の香り編にて登場するシャルルの父がデザインしたものです。
リンネは、ここで初めて登場しますが……ガーデン・パレスでのお話を進めていくにあたり、強力な助っ人として、マリアと同世代の明るい女の子にしよう、ということでなかなかインパクトのある登場でした。(一応、薬物を扱ったりするので、登場シーンではリンネは白衣を着ています)
*第十六話 マリアとリンネ
リンネと親睦を深めつつ、王妃様からの調香依頼を確認する回。
一応、裏話なので、明かしておくと、リンネの方がマリアより少しだけ年上です。年齢の話は基本一切していないので、まったく必要のない設定なのですが、初対面のマリアに対してリンネがくだけた口調なのに対し、マリアが敬語なのは、そういう理由があります。(すごくどうでもいい裏情報でした)
そして、ここでようやく王妃様からの調香依頼を確認しますが、その前に、リンネがぶつぶつと植物の名前をつぶやいているのは、すべて漢方に関するものになっています。
リンネは、極東の植物を調べてもらうための助っ人的立ち位置でもあるので、こうして、漢方(東洋医学)の知識がある、というのは結構大切なポイントになっています。
ちなみに、この知識は後ほど、クレプス・コーロ編でも活躍しております。
王妃様からの調香依頼については、この次のお話にて裏話をさせていただきます!
*第十七話 香りの正体
調香依頼された香りの正体が「チェリーブロッサム」(桜)だと判明する回です。
ネタバレなので言いますが……ここで、リンネが桜の花びらをなめて「塩だ」というのは、第二十一話「前進」への伏線ですね。
桜は、咲いてる状態ではほとんど香りのしないお花ですが、塩漬けにすることで、私たちが想像する「桜」の香りを発するようになります。
お漬物、とは違いますが、王妃様たちは東の国での会食で、甘いものに添える形で桜の塩漬けをいただいた、という裏話になります。
ちなみに、ここでマリアが香りを記憶してメモを取っていきますが、最終的に全く違う調香をしています。これは、マリアがガーデン・パレスでたくさんの香りを試して、最終的に最高のものを作り上げた、という裏話があるので……読み返してもらうと、なるほど、という感じかもしれません(?)
*第十八話 材料集め
チェリーブロッサムの香りを作るための材料を集める回です。
毎回思いますが、タイトルが安直ですね……。お恥ずかしい。
チェリーと桜の木は実際、結構違うのですが……そもそも、この時点では「塩漬け」によって香りがたつ、ということに気づいていないので、まだまだ再現できそうにない感じが漂っています。ただし、最終的にチェリーブロッサムの香りを作り上げる際に「チェリー」の香りを使うため、伏線的な位置づけのお話にもなっている回です。
また、器具もこの回で集めるのですが、香りを抽出するために使うためのガスコンロが手に入らず……次の十九話で、再び重要人物を出すための展開にしています。
(ちなみに、この時代にはガスコンロはおそらく存在しておりません。アルコールストーブがいいところだと思います……。このあたりはお話の都合上、という感じですね)
*第十九話 ベジリーじいさん
ベジリーじいさんこと、シュトローマーさん登場回になります。
この回は、ガスコンロを手に入れるだけでなく……マリアの祖母、リラのことを知る人物が出てくるという結構重要な回でして、シュトローマーさんも、この回でのパッと出の人っぽい雰囲気がありますが……実は、調香師の中でも結構重要人物です。(笑)
マリアが最後に「また来ます」と言ったのですが、あの後、シュトローマーのもとへ訪れる描写がないので、ここで補足しておきます。
一応、またこの二人は会うぞ、という雰囲気だけは後の伏線として、どうしても残しておきたい、と思って、この時にもっとも会うセリフとして使いました。
*第二十話 香り作り
チェリーブロッサムの香り作り、第一回目となります。
一応ここで、簡単にですが、水蒸気蒸留法が登場します。ライラックに続き、調香師っぽい描写の回になっています。
また、簡単に香りが抽出できるのに、どうして香水が嗜好品なのか、ということについても少し触れていて、珍しく(?)技術とか知識に少し偏ったお話でした。
裏話として、実際に香水を作るための元である「精油」を十分に取り出すためには、一トンとかのお花が必要になり、マリア一人ではどうしようもない、というか……本当は人が一人で毎日のようにできる作業ではないのですが……そこは、お話の都合上、小さな単位で扱っています。(ここまで書いておいて、かなり衝撃な事実ですみません。フィクションとしてお楽しみください)
そして、チェリーの葉っぱや枝から水蒸気蒸留法で香りを抽出しておりますが……おそらく、実際にはほとんど精油も出てこないはずなので、もうここの回は本当に、マリアの初めての失敗を描くためだけの、超フィクションだと考えていただけましたら幸いです……。
こんなに悲しい裏話があっていいのか、という感じですね。
成功続きだったので、少し、マリアに試練、という形で、頑張ってもらいました。
ちなみにプロット上、この二十話は、第二章の前半戦、という形です。
そんなわけで、最後の文章が割ときっちりめに締めている感じになっています。
裏話の方までお読みいただき、本当にありがとうございます!
次回は、ガーデン・パレス編のラストまで、お届けします*




