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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
04 拠点篇
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04-07 旅の仕度

 翌日、仁は朝食を済ませると、旅の仕度を始めた。

「えーと、下着の替えとシャツとズボンと上着」

 汚れは『浄化(クリーンアップ)』で落とせるので、2着だけにしておく。

「……あと何がいるんだ?」

 この世界での旅は初めてなので面食らう仁である。これに関しては礼子も当てに出来ない。

「とりあえず、地球での旅行を前提にすると」

 お金、医薬品、ハンカチ、ティッシュ、ガイドブック、カメラ。

「ガイドブックやカメラは無いしな」

 そう言いながら、そのうちカメラを作ってみようと思う仁である。

「そして、ラインハルトの家の紋章入りのハンカチ」

 確認用に貰った物だ。これを忘れるわけにはいかない。

「あとはこれを入れるバッグ」

 足りないものは作り、準備を終えた。

「お父さま、転移門(ワープゲート)はどうしましょうか」

 転移門(ワープゲート)があれば、何かあった場合、いつでも蓬莱島に戻ってこられる。

「うーん、そうだなあ、どうするか」

 だが、かさばる部品もあるため、迷う仁である。

「そうだ、魔導装置(マギデバイス)だけ持って行って、筐体とかはその場でなんとかしようか」

 転移用の魔導装置(マギデバイス)があれば、あとは基台とか筐体とか、あり合わせの材料でも何とかなる。

「そうですね、それがいいと思います。2基分持って行けばいいでしょうか?」

「ああ、2基あれば片方に何かあった場合でも戻って来られるだろ」

 それで、転移門(ワープゲート)の心臓とも言える魔導装置(マギデバイス)を準備。

 闇属性の黒い魔結晶(マギクリスタル)と、制御魔導式(コントロールシステム)を書き込んだ魔導基板(プレート)

 この時、蓬莱にあるマスター側の魔力波形に正確に同調させないといけないため、ここ蓬莱でしか作れない部品である。

「よし、これでいいか」

 筐体用の部品がなければ、2基分でも2キロくらいの重さ、問題はない。

「忘れ物はないかな」

 まあ、あっても買うか、最悪作り出せばいいのである。

「お父さま、念のため水筒をお持ちになったらどうでしょうか」

「水筒か。そうだな。保温・保冷性があって、内部に水を浄化する魔導式を刻んだ物があるといいな」

 思い立ったらすぐ実行。軽銀(ライトシルバー)を使い、2重構造にして、中の空気を抜く。ようするに魔法瓶である。

 さらに底の部分に浄化の魔導式を刻み、生水でお腹を壊すことのないようにする。

「これでよし。一応礼子、お前の分も作っておいた」

「私は飲む必要ありませんが、お父さま用の予備を持っているつもりでいましょう」

 そう言って受けとった。

「あとは……」

「お父さま、招待されたわけですから、そのお礼のような物はどうでしょう?」

「お礼、かあ……」

 ちょっと考えた仁は、乳白色の魔結晶(マギクリスタル)を手にして、

変形(フォーミング)。……魔導式(マギフォーミュラ)書き込み(ライトイン)

 指輪を作り上げた。守護指輪(ガードリング)の劣化版である。

保護指輪(プロテクトリング)と呼ぼうか」

 ガードとプロテクト、どっちが強そうか仁にはわからなかったが、最初に作ったのがガードだったのでこの呼び名となった。

「数個作っておいて、機会があったら贈ることにしようか」

「そうですね。守護指輪(ガードリング)で気が付いたのですが、剣のような物を私が持つというのはどうでしょうか?」

 ラインハルト達は礼子が自動人形(オートマタ)であることを知っているので、仁を守るための装備をしていても何とも思わないだろう。

「それに、剣でしたら手加減しやすいですし」

「なるほどな」

 そう言われた仁は、さっそくアダマンタイトを取り出し、

変形(フォーミング)硬化(ハードニング)表面処理(サフ・トリートメント)

 ……刀を作り上げた。反りのある、細身の日本刀である。長さは50センチくらい、礼子にちょうど良さそうだ。魔法を使って、あるはずのない刃紋を入れたのはお遊び。

「お父さま、これは確か……」

「ああ、お前にも知識が転写されていたか。そうとも、これは剣じゃなく刀。これならごつい剣よりは軽いしな」

 そう言いながら、軽銀(ライトシルバー)で鞘を作る。酸化膜の色はピンク色にして、礼子が持っても違和感のない色にした。鍔などの刀装具は銀色。

「日本刀の正式な造りってよく知らないけどこれでいいだろう」

 柄は疑似竜(シャムドラゴン)の牙。地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸で作った紐を巻いて滑り止めとする。

「よし、完成だ。銘は……そうだな、ピンク色だから桃花とうかだ」

 そして完成した『桃花とうか』を礼子に渡す。

「ありがとうございます、これでお父さまをお守りいたします」

 これで大体の準備は整ったと思い、最後に留守を守るソレイユとルーナに再度指示を出すことにする。

「それじゃあ、何かあったら……」

 そこまで言いかけた仁は、

「ちょっと待った!」

 そう言って、急いで工房へとって返した。何事かと礼子も後を追う。ソレイユとルーナはそのまま待機した。

「お父さま、どうなさったんですか?」

 工房で何か始めた仁に向かって、怪訝そうに礼子が尋ねた。

「ああ、魔素通信機(マナカム)を作ってる」

 自分で開発しておきながら、さっきまで忘れていた仁。

「よーし、とりあえず2組作った。俺と礼子、それに礼子とソレイユかルーナの間で話が出来る。何かあったらこれで連絡が付けられるぞ」

 今のところ、相手を選択できるようにはなっていないので、携帯電話とまではいかない。まあトランシーバーといったところだ。大きさは最新の携帯電話くらいなのでかさばらない。

「これで本当に忘れ物は無さそうだな」

 安心した仁は、あらためてソレイユとルーナに指示を出し直していった。


「……わかったな?」

「はい、了解しました」

「何かあったらその魔素通信機(マナカム)で連絡を寄越せ」

「はい」

 ということで仁と礼子は転移門(ワープゲート)を使い、ポトロックへと飛んだのである。


 現地時間ではお昼前といったところか。

 馴染みになった『海鳴亭』へ行ってみる。

「おや、お久しぶり、どっか行ってたのかい」

 おかみさんが出迎えてくれた。

「見てたよ、この前の競技。あのゴーレム作ったのあんたなんだってね。マルシアから聞いたよ」

 聞くところによると、あれからマルシアは造船工(シップライト)として、店を出すために走り回っているそうだ。

「そっか、今この町にいないのか」

 借金を返したり、工具を買い集めたりで、昨日からは資材の買い付けに別の町へ行っている、とおかみさんが言った。

「で、今日は? 泊まりかい?」

「はい、1泊だけになりますが」

 仁がそう言うと、

「それじゃあ、前と同じ300でいいよ。部屋は……ちょうど『ボニート』が空いていたね」

 以前と同じ部屋が取れた。まあ、競技大会が終わって、若干観光客が減っていたという事もあるようだ。

「さて、これで明日、迎えが来るのを待っていればいいな」

 そう呟いて、仁は馴染んだベッドに腰を下ろしたのである。

 ガードとプロテクト、ガードはやや能動的、プロテクトは固定的な印象があります。仁もよくわかってないのであの命名になりました。

 日本刀大好きなので出してしまいました。が、仁はそれほど詳しくないので『もどき』です。目貫とか鯉口とか小柄櫃とか付いてませんしね。

 仁が出した指示は、蓬莱島の整備、崑崙島の開発等です。いない間にも基地としてどんどん整備されていきます。

 この章は繋ぎなのでこれで終わり、次回から新章突入です。


 お読みいただきありがとうございます。


 20140530 07時52分 表記修正

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