14-15 無力化
前話、14-14を一部修正してあります。
(改)(元)で分けましたので、よろしければ読み返してやって下さい。
矛盾はほとんど無いはずですが……。
ご迷惑をおかけします。
一部の権力者とその一族が超法規的な権利を振りかざす、それがセルロア王国の体制であるようだ。
その中でも群を抜いて我が儘のし放題、それが目の前の2人。
「旧弊なんてもんじゃないな……いや、独裁国家……都市なのか?」
およそ法治国家らしくない、と仁は思った。
「ステアリーナが逃げ出したくなるわけだ……」
「とにかく! そのナイフを寄越しなさい!」
我が儘公女はまだ叫んでいるし、
「エルザ、さあ、僕の所へ来い!」
我が儘公子も戯言をほざいている。
「ジン、兄……」
肩に縋るエルザの目に光るものを見つけた仁は、
「あいつに何かされたのか?」
と尋ねた。エルザは無言でこくりと頷く。仁にはそれで十分だった。
「ステアリーナ、せっかく招待してくれたけど、もういいよな?」
仁の怒気を感じたステアリーナだが、自分も相当頭にきていたので大きく頷く。
「もう、やっちゃってよ!」
完全にセルロア王国に愛想を尽かしたという顔で、ステアリーナは投げやりに叫んだ。
「……おにーちゃん、あのひとたち、わるいひとなの?」
「そうだよ。自分勝手な事を言って、他人に迷惑かけているんだ」
「おばあちゃんがいつもいってるよ、ひとのいやがることはしちゃいけない、って」
「そうだ。あの2人はそんなこともわからない大馬鹿者なんだよ。ハンナはあんな風になっちゃ駄目だぞ?」
「うん! あたし、いい子でいる!」
明るく返事をしたハンナの頭を仁は一撫でする。
その雰囲気に、エルザとサキも思わず頬を緩めた。
だが、我が儘兄妹は黙っていない。
「……いい加減にしろ。僕たちに向かって言いたい放題。その罪、死罪に値する!」
「泣いて許しを請えば、命だけは助けてあげてもいいわよ?」
仁はうんざりした。
「……いい加減にしろ。そうやって何人の人々を泣かせてきたんだ?」
「ふん。自分が所有する領民をどう扱おうと勝手だろう?」
その物言いに、仁も我慢の限界。仁の怒気を感じ取った礼子は既に臨戦態勢だ。
「お父さま、あのお馬鹿2人に、現実を教えてやっていいですか?」
従弟とも言えるエドガーを痛めつけられて、礼子も少々怒っているのである。
「ああ。可哀想だが、バカな主人に仕えたのが不運だ。自動人形を全部無力化してしまえ」
仁の許可が出た。『破壊』ではなく『無力化』なのが慈悲といえばいえるのだろう。
「な、生意気な! 行け、お前たち! あのガラクタ人形をばらばらにしてしまえ!」
我が儘公子の命令を受け、10体の護衛自動人形が礼子に襲いかかった。
礼子は何もしない。ただ待ち構えるだけ。
1体は礼子の胴体を抱え込み、1体は礼子の頭を抑えた。残る8体は、2体1組で両腕と両脚を掴む。
「ふははは! どうだ! こうなっては何もできまい! ばらばらに引き裂いてやる!」
「……どこまでも趣味悪いんだな、お前」
冷めた目でアルベールを見つめる仁。そのそばに寄り添って立つエルザ、ハンナ、サキ、ステアリーナ。
エルザの隠密機動部隊は再び不可視化をまとい、姿を消してはいるが、すぐそばにいて、周囲を警戒している。仁とハンナの隠密機動部隊も同様だ。
「ふん、負け惜しみか。……お前たち! 引き裂け!」
その命令で、10体の護衛自動人形は力を込める。……が、何も起こらない。
「どうした? 遠慮はいらないぞ?」
だが、10体に引き裂かれようとしているはずの礼子は平然としている。
「……それで全力ですか? そろそろこちらから行きますよ?」
礼子は身体を一ひねりする。それだけで10体の護衛自動人形は振り飛ばされてしまった。
「な、なにい!?」
仁も礼子も、護衛自動人形の潜在能力の見当は付いていた。魔素変換器もしくは自由魔力炉や魔力炉の出力でわかる。
過去、強敵を含む数々のゴーレム・自動人形と対峙してきたが、この護衛自動人形は弱い部類に入るようだ。
例えは悪いが、もしも礼子がエドガーを蹴ったら、跡形もないくらいにばらばらになってしまうだろう。それも40パーセントくらいの出力で、だ。
「護衛自動人形、おそらくエドガーと同じくらいの力しかないんだろうな」
ゴーレムと異なり人間に似せることを追求したため力は二の次、それが普通の自動人形である。
「魔素変換器出力、30パーセント」
20パーセントでも十分と思われたが、大事を取って30パーセントの出力を出した礼子は敵に襲いかかった。
自動人形の弱点、それは一般的に言って頭部である。
人間に似せることを優先したため、頸部すなわち『首』の強度が不足気味なこと、視覚情報を二つの目でしか得ていないこと。
この2点を踏まえ、無力化に有効な攻撃箇所は首である。
戦闘用ゴーレムなら、破壊すべき首すら持たない物が多いが、自動人形は違う。
「『首投げ』」
相手の頭上を正面から跳馬の前転跳びのように跳び越えつつ、頭を極め、そのまま後方に着地すると同時に、背負い投げ式に投げ飛ばす。
人間相手にやったなら首が折れる。自動人形の場合も同じ。まず1体、首があらぬ方に向き、行動が停止する。
普通、視覚情報が無くなる、つまり見えなくなった時には、暴走などの危険防止のため自動人形なら非常停止するようになっているのだ。
だが、2体目以降は、その攻撃を警戒し、剣を抜き、盾を突き出した。
「ならば」
礼子は突き出された盾を無造作に掴み、内側に捻り込む。礼子の力に、護衛自動人形の体勢はあっさりと崩れた。
すかさずその腕を抱え込み、『腕投げ』で地面に叩き付ける。仰向けにひっくり返ったところを目掛け、顔面を蹴り付けることで頭部はひしゃげ、2体目も停止した。
ここまで約10秒。
残った8体が一斉に飛びかかってくる。礼子は斜め前へジャンプ。
1体の顔面に膝蹴りを加えつつ包囲を逃れた礼子。当然蹴られた1体は行動不能になっている。
「今度はこれを試してみましょうか。……『消去』」
それはかつて統一党が開発した隷属化魔法の一つ。仁たちが実用化したシールド構造を備えていない限り防げはしない。
制御核の情報を全て消去された護衛自動人形は当然停止する。この方法で3体が停止させられた。
既に半数以上の護衛自動人形が停止させられたのを見て、我が儘兄妹は目を見張っていた。
その間にもまた1体行動不能に。これで残るは3体である。
「速度が違いすぎるな」
仁も彼の仲間も、安心して礼子の戦い振りを見守っていた。30秒もしないうちに10体の護衛自動人形は3体にまでその数を減らしたのだから。
「兄様! 私の護衛自動人形も参加させます! ……行きなさい! お前たちはこっちの奴等を攻撃するのよ!」
我が儘公女、ベアトリクスは仁たちを攻撃するよう命令を下した。
だが仁たちは既に全員バリアを展開済み。護衛自動人形如きに破れるものではない。
「なんでよ? なんで奴等を捕まえられないのよ?」
仁たちの手前30センチほどで護衛自動人形の行動は阻まれており、拳も蹴りも届いていない。剣を抜いて斬りつけても同じ。
「……鬱陶しいな」
剣まで抜いて斬りつけてきたと言うことは、明らかに殺す気だと言うことだ。
「このやろう」
ハンナまで巻き込むそのやり方に仁は更に怒った。隠密機動部隊に命じようかとも思ったが、自ら手を下すことにする。
「『光束』」
仁の腕輪から光が伸び、護衛自動人形の胸を貫く。それは過たず制御核を貫いた。魔法工学師、仁ならではの照準である。
次々に8体の自動人形はすべて制御核を破壊されて停止した。
「な、な、なんてこと! あんた、いったい何者なのよ!?」
「……お前に名乗る名は無い」
冷たく言い放つ仁。
サキとステアリーナはここまで怒った仁を見たことがなかったが、エルザは違う。
これだけ怒った仁を見るのは、統一党との一戦以来だ、と思った。そしてハンナは、ワルター伯爵の兵に囲まれた時の仁を思い出していた。
礼子の方も、10体の護衛自動人形をすべて行動不能にし終えていた。
「さて、まだやるのか?」
仁が睨み付ける。正直、童顔な仁が睨んでもたいして迫力はないのだが、18体の護衛自動人形を2分かからずに全滅させられた我が儘兄妹は顔面真っ青である。
「ぼ、僕に指一本触れてみろ! 父上が黙っちゃいないぞ!」
「わ、私は公女よ! 何かしてみなさい! お尋ね者にしてやるんだから!」
この期に及んでも反省してない2人。だが。
「……やれやれ、楽しかったお遊びもそろそろお終いと言うことかなあ」
「……アンドロ?」
ベアトリクスお付きの少年、アンドロが一歩踏み出した。
レーザーの魔法、『光束』としました。『ライト』だとわかりにくかったので。
お読みいただきありがとうございます。
20140529 15時26分 誤記・表記修正
(誤)醒めた目でアルベールを
(正)冷めた目でアルベールを
(誤)この後に及んでも
(正)この期に及んでも
(旧)たちまちにして8体の自動人形はすべて制御核を破壊されて停止した
(新)次々に8体の自動人形はすべて制御核を破壊されて停止した
(旧)法治国家とは思われない、と仁は思った
(新)およそ法治国家らしくない、と仁は思った
21時50分 誤記・表記修正
(誤)2体め以降は
(正)2体目以降は
(誤)楯を突き出した
(正)盾を突き出した
(旧)魔素変換器もしくは自由魔力炉の出力でわかる
(新)魔素変換器もしくは自由魔力炉や魔力炉の出力でわかる
(旧)ー
(新)エルザの隠密機動部隊は再び不可視化をまとい、姿を消してはいるが、すぐそばにいて、周囲を警戒している。仁とハンナの隠密機動部隊も同様だ。
を「そのそばに寄り添って立つエルザ、ハンナ、サキ、ステアリーナ。」の後に追加。
(旧)ー
(新)隠密機動部隊に命じようかとも思ったが、自ら手を下すことにする。
を「ハンナまで巻き込むそのやり方に仁は更に怒った。」の後に追加。
20200105 修正
(旧)制御核を消去された護衛自動人形は当然停止する。
(新)制御核の情報を全て消去された護衛自動人形は当然停止する。




