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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
02 ブルーランド篇(3457年)
40/4298

02-01 グライダーゴーレム

 投稿再開します

 いつしか、この世界の暦では年が改まっていたが、仁達は全く意識していなかった。


「……飽きた」

 毎日毎日、果物と木の実ばかりを食べていた仁。

「あー、米の飯が食いたい。無ければもうパンでもいいや」

 さすがに食べ飽きて、かつての食生活が恋しくなったようだ。

「どこかで小麦とか買ってくるか」

「お父さま、それでしたらこの島に畑を作りましょう」

 仁の呟きに、礼子が提案した。

「そうだな、種は買ってこなくちゃならないが、畑は用意しておかないとな」

「はい。それで、ゴーレムメイドのトパズとアクアにまかせたらどうかと思います」

「トパズは土属性、アクアは水属性だったか。いいんじゃないか」

 肯く仁。礼子は、

「それでは、彼女達の下で働くゴーレムも必要になりますね」

「ああ、そうか。それも作るか」

 ということで、アクアとトパズだけでなく、5人のゴーレムメイドの部下になるゴーレムを作ることにした。仁は礼子と共にスペックを詰めていく。

魔法外皮(マジカルスキン)は無し、服もいらないでしょう」

「うん、そうだな。その代わりに表面に軽銀ライトシルバーのメッキをして、色を変えよう」

「は?」

 仁は礼子に説明をする。軽銀ライトシルバーはすなわちチタンの同位体であること、チタンは表面の酸化膜の厚さを調節すると色を変えられること。

 これらは、仁が現代地球で勤めていた工場(金属関係)で得た知識である。

「なるほど、わかりました。さすがお父さま」

 さっそくゴーレムを作り始める。基本形はゴーレムメイドと同じ。だが構造はかなり簡略化している。こだわったのは制御系。一応自律した知性を持ち、上司である各メイドだけでなく、その上の礼子と仁の言うことも聞くように調整する。

「身体は私が作りますからお父さまは魔素変換器(エーテルコンバーター)魔力炉(マナドライバー)、核をお願いします」

「よしきた」

 単純作業は礼子、キーになる複雑な作業は仁が、と分担して進めていく。2日後には5種類のゴーレムが各10体ずつ完成した。

「ゴーレムメイドそれぞれに役割を振ったらいかがかと思います」

 礼子の提案に仁も納得し、

「そうだな。トパズは土地開発。アクアは治水。ペリドは家事。ルビーとアメズは島の防衛、これでどうだ?」

「よろしいかと思います」

「よし、それじゃあトパズ、アクア、ペリド、ルビー、アメズ。お前達に配下を付ける。これからもいっそう仕事に励んでくれ。そして配下のゴーレム達、頼むぞ」

「承知致しました、御主人様」

「よろしくお願いします」

 5体のゴーレムメイドは仁に礼をし、配下のゴーレム達はまず仁に、次いで上司のメイドに礼をし、トパズとアクアは研究所の外へ、ペリドは各部屋を見回りに。ルビーとアメズも外へと、配下と共に出て行った。

 そして礼子は、

「お父さま、あと2体残っていますが、これは?」

 まだ起動していない2体のゴーレムを見て仁に尋ねた。

「ああ、これは礼子の部下だ。これから礼子もいろいろと忙しくなるだろうから、部下を作ってみた」

「私の部下、ですか」

「ああ。ゴーレムメイドと同等の性能があるはずだ。見た目は違うがな」

 そう、まだ横たわっている2体のゴーレムは小柄で、礼子と同じくらいの大きさである。

「起動前に礼子とリンクさせておきたい。どうだ?」

「お父さまが私のことをお考えになって作って下さったのです、否やはありません」

 そう言いながら若干嬉しそうにも見える。仁はその様子を見てほっとする。また『自分がいらなくなったのか』とか言い出されたらどう説得しようかと思っていたのだ。

「そうか、じゃあここへ来い。……魔素接続(マナリンケージ)……これでよし、『起動』」

 2体のゴーレムが起き上がる。1体は金色、もう1体は銀色だ。

「初めまして、お父さま、お姉さま」

 ゴーレム達が挨拶した。もちろんお姉さまというのは礼子のことだ。

「はい、よろしくね。……お父さま、彼女達の名前は?」

「うーん、そうだな……礼子直属の部下だから礼子が付けてみな?」

 そう言われた礼子はしばらく考えて、

「そうですね、金色のあなたがソレイユ、銀色のあなたがルーナ」

 仁よりもずっとまともだった。

「はい、私はソレイユです」

「はい、私はルーナです」

 これで、人手不足はかなり解消され、仁は問題解決に邁進できることとなった。

「礼子、この島を有効活用するにしても、地形がわからなきゃどうにもならん。地図はないのか?」

 そう言われた礼子はちょっと困った顔をして、

「それが、お母さまのいらした時とはかなり変わってしまったので、新しく作り直す必要があります」

 1000年の間に隆起したらしいことを話す礼子。

「そうか、そうするとこの島の全体像を把握することが急務だな」

 腕を組み、考え込む仁。

「測量はずっと後でいいが、大体の地形と大きさは知りたいな」

 航空写真とかが撮れれば一発なのだが、この世界にはまだ空を飛ぶ手段はない。更に考え込んでいた仁だったが、

「そうだ! 礼子、ちょっと手伝ってくれ」

 何事か思いついたらしく、仁は工房へ向かった。

「お父さま、何をなさるのですか?」

 怪訝そうな礼子に仁は、

「島を空から観察して、おおよその地形を知りたい。そのために、空を飛べるゴーレムを作る」

「そ、空をですか?」

 さすがの礼子も驚いた。先代でさえそんなことは考えなかったのである。

「うん、まあ、空を飛ぶといっても、魔力で打ち上げた後は滑空するだけなんだけどな」

 つまりグライダーである。模型のグライダーを作り、それをゴーレム化、滑空しつつ地上を観察させ、帰還後に地図を作製するという手順である。この際、縮尺は大体でいいことにする。

「お話はわかりますが、本当に空を飛べるのですか?」

 仁の知識を部分的にしか転写されていなので、礼子は半信半疑である。

「うん、まあ、論より証拠、やってみよう」

 ということで、軽銀(ライトシルバー)を使ってグライダーを1機作り上げ、そこにゴーレムの核を搭載、視覚を確保するための魔結晶(マギクリスタル)も搭載。核は小さいが、動作といえば昇降舵(エレベーター)方向舵(ラダー)補助翼(エルロン)を操作するだけ。短時間で完成した。

「これが飛ぶんですか?」

「ああ、見てろ」

 研究所の外に出た仁は、既にトパズとアクアにより整地されていた前庭広場でグライダーゴーレムのテスト飛行を行う。

「いいか、投げるぞ」

 まずは軽く前方へ押し出す。グライダーは真っ直ぐ滑空し、50メートルほど飛んで着陸した。

「本当に飛びました」

 礼子は感動しているようだ。まだ顔にはあまり出ないが。

 これを何度か繰り返すことで、グライダーゴーレムに制御を憶えさせる。そしていよいよ本番である。

「礼子」

「はい、お父さま」

「これを思いっきり上へ向けて投げてくれ」

 礼子の全力なら、3キロ上空にも届くだろう。

「わかりました」

 投擲体勢に入る礼子。

「グライダーゴーレム、島の様子をよく観察して憶えてこい。そしてここへ戻ってくるんだぞ」

 仁が指示を出すと同時に、

「行きます!」

 礼子が全力でグライダーゴーレムを投擲。それはあっというまに高空へと舞い上がり、肉眼では見えなくなった。

「どうだ?」

 仁は、まだ見えているであろう礼子に尋ねる。

「はい、まだ昇っています。まだ……あ、滑空に入りました。ゆっくり下りてきています……」

 グライダーゴーレムが研究所前に着陸したのはそれから2時間後。

 ゴーレムの核に蓄えられていた島の映像を元にした地図が完成したのはその翌日であった。

プロローグ1ではぼかしてましたが仁が勤めていたのは工場です。

 ソレイユはフランス語で太陽。ルーナはローマ神話の月の女神、転じて月そのものも指します。


 20130720 21時08分 表記の統一

ソレイユとルーナが仁、礼子を呼ぶ時、

仁は「お父さま」、礼子は「お姉さま」に統一しました。


 20130921  15時57分 表記の統一

 1箇所、「アメズ」が「アメーズ」になっていたので修正しました。


 20190831 修正

(誤)だが構造はかなり簡略している。

(正)だが構造はかなり簡略化している。


 20200123 修正

(誤)仁が指示を指すと同時に、

(正)仁が指示を出すと同時に、

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― 新着の感想 ―
[一言] この話に登場したグライダーゴーレムって、上手く改造すれば現在連載中の未来編で無人偵察機(偵察用ドローン)として活用出来るかも知れませんね。 フォースジェネレーターで飛べる蓬莱島のゴーレム軍…
[良い点] 丁寧に書かれている感じがして、落ち着いて読めるところ。 [一言] 絶対ドローン飛ばすと思ってました。 2013年はまだまだドローンの活用が活発ではなかったでしたか。
[一言]  人は塩がないとたとえ食料があっても最悪餓死するそうですよ。本当かどうかは知りませんが…。数ヶ月も同じ物だけだとシンプルに栄養不足で…。ということも…。
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