09-41 激戦
機種依存文字の確認がむずかしいのですが、『Δ』これ、ギリシャ文字のデルタなんですが、三角形に見えてますでしょうか。
本文中で出ますので、見えていなかったらお知らせください。
「ん? あんなところにも出入り口があったのか」
文字通り大局を見る事が出来る上空から見ていた仁には、ランド隊が敵と交戦しているその背後西側500メートルほどの岩壁に出入り口が開いたのを見た。
「ランド隊、背後に注意せよ! タイタン1、援護しろ」
すぐさま指示を出した。
それを受けたランド隊は、1から60までが反転してそちらへ向かった。残る61から100はそのまま旧型戦闘用ゴーレムを屠っていく。
「おや? 今度のゴーレムは型が違うな、多分新型だ。注意しろ!」
更に仁は、上空を旋回するラプター隊にも指示を出す。
「いつでも魔力妨害機を照射できるよう準備しておけ」
そして再び戦闘を見つめる。
現れた新型戦闘用ゴーレムは500体。旧型の方はほとんど倒したとはいえ、5倍の戦力差である。
だが、そこにタイタン1が参戦する。
「なんて巨大なゴーレム。実際に見ると脅威ですね。アドリアナでさえあんなものは作らなかったというのに」
さすがのエレナも、タイタンの巨体をまじまじと見、脅威を感じたようだ。
「こちらのゴーレムが奴らと接触する前にギガースの核を2個ともあいつらの中に放り込みなさい!」
エレナの指示。
それに従うのは万能ゴーレムの1体。
過去の超兵器であるギガースは魔力核で制御されている。その魔力核は周囲から魔力素を吸収し、己のものとする。
触れただけでその相手の魔力素は吸収され、動けなくなってしまう。そんな過去の超兵器。
普段は封印箱に入れられているギガースの魔力核を万能ゴーレムの1体が、その箱ごと、旧型戦闘用ゴーレムの中へ放り投げた。
封印箱は地表にぶつかって壊れ、旧型戦闘用ゴーレムから魔力素を吸収し、ギガースが形成された。その身体は岩と、そこかしこに転がる旧型戦闘用ゴーレムの身体で出来ていた。
「ギガースが2体か。見つけ損なった2つは奴らが確保していたんだな」
上空を飛ぶ仁が地上の様子を映す魔導スクリーンを見ながらそう言った。
「しかし、味方の魔力素を利用するとはな。えげつない奴らだ」
現在、ランド隊はギガース2体と敵ゴーレムに挟撃された形となっている。
ギガースの攻撃を受け、数体のランドゴーレムが動きを止めていたが、同僚に救い出され、無事魔力炉が再起動し、戦線に復帰していた。
「ランド隊はギガースに構うな。離れていろ。タイタン1はギガースを止めろ」
仁が指示を出していく。
「お父さま、タイタンといえど、ギガースに魔力素を吸収されてしまうのではないですか?」
1度ギガースと対戦した礼子がそう言った。
「うん、俺に考えがあるんだ。俺の考えが正しければ、な」
そして仁は更に指示を出す。
「タイタン1は拳に物理障壁を纏え」
仁の策。
本来身体全体を覆う防御結界を拳に集中させることが一つ。
そして、ギガースが吸収できるのは魔力素や自由魔力素であって、魔法ではないこと。
アンによれば、ギガースは『触れる物、まわりの空気、放たれた魔法、いろいろなものから吸収します』と言っていたが、前回対峙した時、ラインハルトの炎の槍で身体を溶かされていた。だから仁は、魔法は吸収できないのではないかと推測したのである。
「よし、その状態でギガースを殴りつけろ!」
ギガースの動きは鈍い。タイタンの右拳は易々とギガースを打ち抜いた。
* * *
「な、なんですって!」
驚くエレナ。
飛び散るギガースの身体。その破片の中に、きらりと光る物。魔力核である。
魔力核は地面に落下するや否や、周囲のスクラップや岩屑を集め、再びギガースとなった。
「……ふふん、ちょっとだけ驚いたけど、ギガースはそんな攻撃じゃ倒せないのよ」
魔導投影窓を見つめながらエレナが呟いた。
* * *
一方、上空から見守る仁。
「思った通りだ。ギガースは魔法を吸収することはできない。よし、タイタン、そのまま攻撃を続けろ!」
タイタン1は、距離が離れたギガースを後回しにし、手近なもう1体を殴りつけた。
またしても吹き飛ぶギガースの身体。同時に魔力核も飛び出す。
それを狙ってタイタン1は再度拳を振るった。
「えっ!」
見ていたエレナが驚愕の声を上げた。
タイタン1はその巨体に似合わぬ俊敏さで、飛び出した魔力核を更に殴りつけてしまったのである。
さすがに、この物理衝撃に耐えきれず、魔力核は砕け散った。そして2度とギガースを形成することはなかったのである。
「何で、何でなの!?」
見たものが信じられないというように叫ぶエレナ。その目の前で、タイタン1は2体目のギガースを同じように倒したのである。
「うそ……」
エレナの脱力したような声が、統一党本部に響いた。
仁はそれを見てすぐさま、タイタン1に次の指示を出した。
「タイタン1、ランド隊を援護しろ」
その指示を受け、タイタン1は転進。激戦を繰り広げるランド隊の援護に向かった。
5倍の戦力差に対し、ランド隊は陣形を作って対処していた。
これはラインハルトにコピーしてもらったショウロ皇国騎士の戦法である。
それによると、兵の寄せ集まりでは1は1であり、それを10あわせても10にならず、むしろ5か6の力しか発揮できないという。
だが、兵が軍として陣形を組むことで1が3にも4にもなる、そんな考え方である。
数に任せて包み込もうとする新型戦闘用ゴーレムに対し、ランド隊は地球で言う魚鱗の陣を組んだ。
すなわち『Δ』の形を作ったのである。
その鋭い先端は超高速振動剣を振り回し、敵ゴーレムを戦闘不能に陥れていく。
後列は物理障壁や魔法障壁を展開し、背後からの攻撃を防ぐ役割。
その陣形を保ったまま、素早い速度で新型戦闘用ゴーレムの中を駆け抜けていくランド隊。
「なるほど、囲まれないように動いているんだな」
上空から見ている仁には、その動きの意図がよく理解できる。
同時に、上空からの映像は老君にも流されており、その情報を用いて老君は適切な位置へとランド隊を導く指示を出していた。
「今だ、タイタン1!」
ランド隊が敵ゴーレム隊を一旦突き抜けたのを確認した仁はタイタン1に指示を出す。
ランド隊に気を取られていた統一党の新型戦闘用ゴーレムの背後をタイタン1が襲った。
その巨大な足で5体ほどが踏みつけられ、敵ゴーレムの足並みが乱れた。
更にタイタン1は敵ゴーレムの中を走り回る。
「くっ、なんてこと……!」
悔しげに歪むエレナの顔。その目の前で破壊されて行くのは統一党のゴーレムばかりであった。
「いいぞ、タイタン1、今度は右だ!」
巨大な足で蹴られ、踏みつけられた敵ゴーレムは破壊には到らずとも、脚が曲がったり、腕が折れたり、頭部がひしゃげたりと、無事では済まない。
当然動作も鈍くなり、戦闘力はガタ落ち。それを見逃すランド隊ではない。
たちまち新型戦闘用ゴーレムの残骸が積み上がる。
「一旦引きなさい! 態勢を立て直すのです!」
見かねたエレナが指示を出す。その指示に従い、統一党の新型戦闘用ゴーレムは一旦蓬莱島勢と距離を置いた。
だが今の戦闘で、新型戦闘用ゴーレム100体以上がスクラップとなっていた。
ランド隊は傷付いたものがいるものの、脱落者はいない。
だがまだ戦力差は4対1。タイタンがいるにしても、統一党有利。……に見える。
「さて、向こうはどうするつもりだ?」
激戦の合間に生じた空白。仁も相手の出方を窺いながら、戦術を練ろうとした。
「ごしゅじんさま、平地での戦闘は数がものを言います。しかし、相手は連携が取れていません。付け入る隙はそこにあります」
アンも助言をする。というよりアンの方が仁よりもこういう戦闘には詳しい。
「うん、そうか。つまり、相手を攪乱すればいいんだな」
と仁が呟いた。それを聞き取ったのは礼子。
「お父さま、私が出ます」
いよいよ礼子参戦?
お読みいただきありがとうございます。
20131024 13時30分 文字修正
(旧)<
(新)Δ
魚鱗の陣は三角形なんですが、機種依存文字を避けるため「<」を使っていましたが、『Δ』が使えそうなので変えてみました。
もし見えませんでしたらお知らせ下さい。
20131216 10時42分 表記修正
(旧)体勢を立て直すのです!
(新)態勢を立て直すのです!
(旧)戦略を練ろうとした
(新)戦術を練ろうとした




