第二十七話:熾天使との死闘
創世主に反旗を翻した戦いより数十年の時が流れたが、目の前にはあの時のままの白い法衣に身を包んだ端麗で上品さを感じさせる熾天使が立っている。
――彼の名はガブリエル。
熾天使の中で三対六枚の翼を持つ四大天使の一体。
あの時はホルン形体で下位天使達を一瞬で気絶させてから槍形体で中位天使を屠っていたが、今日は最初から槍形体の戦闘モードだ。
私は中位天使を喰った<凝縮する者>達からガブリエルを引き剥がし、市街地の中心付近で戦っていたスコルとハティ達から遠ざけた。
あちらは<凝縮する者>が三十六体に対し、堕天使十七人を含めると二十になるが数では圧倒的に不利だ。
スコルとハティが連れ回す<凝縮する者>を他が一体ずつ引き抜き分断した上で集中撃破で数を減らしていく作戦を伝えた。
その為、今こうして私と熾天使ガブリエルは一対一の形で向かい合う。
中心から離れ石造りの城壁がわりかし近く見えるので市街地の端なのだろう。
展開した漆黒剣は背中で翼となり空中で体を支えてくれている。
「さて、数十年前に消えたはずの熾天使の名を引っ張り出してきて、小娘のあなたが何を見せてくれるか楽しみですね」
「私をあまり嘗めないで貰おうかっ!」
現在の私は二十歳ぐらいの女性。
男ではなくなった事で本物のルシファーだとは認めてもらえないようだ。
<死せる戦士の剣>に魔素を注ぎ覚醒させた状態では漆黒剣の翼が使えなくなるので、抜刀している<死せる戦士の剣>の外側に魔素を纏わせていく。
闇の魔素が大きくなりバランスを取るのが難しく使っていなかったが、先の戦いで多数の仮面を屠り光の魔素を吸収した事によって、白と黒の力が再び安定し二重螺旋で剣を包んだ。
「光と闇の魔素で…………器用な事をする」
「そうでもないかしら」
ガブリエルは苦笑し槍を前に構えた。
向こうではケッティがグリゴリの堕天使を指揮し、凝縮する者を狩りだしている。
「凝縮する者を狩り尽されては困るからな、速やかに処理してこの場を制圧するとしよう」
そう一言述べるとガブリエルが動き突きが私を襲う。
普通にそれは威力が高く砕き、貫き、速い。
しかし――――
その一撃に対し、私は白と黒の魔素を纏わせた<死せる戦士の剣>で横に受け流す。
勢いを殺せずそのまま体勢を崩したガブリエルの背中に、受け流した力の流れを使い体を一回転させて一撃を叩き込む。
ボゴッと音をたてガブリエルの白い法衣が衝撃を吸収しようとするも斜め下に激しく吹き飛んだ。
立ち並ぶ建物を何軒か突き破り城壁に亀裂を入れて減り込む。
――城壁から前のめりに倒れ、膝をつき槍を地面に突き立て、肩で荒く息をしている。
「グハッ…………まさか本物の……………………?」
「今更何を言っているのかしら?」
白い法衣を埃まみれにされたガブリエルは下から私を睨みつけてくる。
「わたしがこんな…………
クソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それまで冷静そうに見えていたガブリエルが急に咆哮をあげた。
同時に白い法衣を横に脱ぎ捨てる。
「叫んで少しスッキリしました。それに法衣を着ていると動きにくかったんですよね…………」
「負け惜しみにしか聴こえないわよ」
「全体的に軽装になり、防御力は落ちますがこれで体が動く。
実に戦いやすくなりました」
端麗で綺麗な顔立ちと、ゆったりした法衣で分からなかった――――
ガッシリと逞しい体を覆うのは、薄らと金色に輝く白蛇革で造られた鎧だが、胸板や腹筋だけでなく全ての筋肉がはち切れんばかりに盛り上がり、体と革鎧が渾然一体になっている、
ゆったりとしたもので隠せなくなると、狼と言うべきか、種馬と言うべきか肉欲に満ちているようだ。
「創世主に捧げし聖光の槍。
今こそ真の力を見せましょう!」
ガブリエルはそう言うと短文の詠唱をはじめた。
「この身に宿りし魔素を開放す……
すべてを喰い破り貫け! 穿ち抉る白蛇の槍!」
突撃槍は鋭く尖った鋒から白金の輝き放ち、柄は白蛇が巻きついたように姿の小素槍に変わった。
<死せる戦士の剣>の覚醒と同じ!?
自分の帯電閃光覚醒状態と思い比べ戦慄が走る。
「では行くぞ!」
ガブリエルの白蛇革に覆われた筋肉が大きくなったように見えた次の瞬間。
――――彼は既に懐にいた。
力強い蹴り出しで間合いを詰め、そこから腕を伸ばし白蛇の槍で突いてくる。
咄嗟に横に躱すが左腕をかすめた。
「くっ……」
直撃は避けたはずなのだが、少し黒竜の鱗でできたガットレットごと腕の皮膚を抉られた…………。
「私もあなたの事を侮っていたようね、本気を出させて頂くわ」




