第二十三話:漆黒の翼の復元
――港街シパリラからエパルロラの砦を目指す。
プロエレフシの森から崖の谷間の街アテゴラに向う時は徒歩。
崖の谷間の街アテゴラから港街シパリラに向う時は徒歩とゲムズボック。
そして今回は、進化し成長したスコルとハティだ。
元の大きさに戻ったスコルの背中に私が、ハティの背中にケッティが乗る。
スコルの背中はフサフサと毛脚が長く体の半分ぐらいが埋った。
川を左手に見つつ川沿いを南東方に向って走るそれは、空を切り風に溶け込むかのようだ。
背中で体が半分隠れているにも関わらず、髪がバサバサと風圧で持っていかれる――。
まさに疾風の如くとはこの事だろう。
プロエレフシの森から崖の谷間の街アテゴラまでは徒歩で三日だった。
崖の谷間の街アテゴラから港街シパリラまでは徒歩とゲムズボックで丸一日だった。
港街シパリラを出たのが中天に成りきる前。
それが――まだ四時間程しか経っていないだろうに、川を挟み次第に左右で高さが変わり崖となった。
そして、崖の上には乾燥した土砂漠の平坦地が広がり、奥にエパルロラの砦らしきものが見えてきた。
スコルとハティが速度を少し落し尻尾を振っている。
実に速い。徒歩と比べると圧倒的だ。
流石だと褒めておこう。
エパルロラに近付くにつれ違和感を感じスコルとハティが再び速度を上げた。
――――煙が上がっているように見え緊張が走る。
「この臭い、母さんが戦ってた時の…………」
「あの時と同じ臭いがするのぉ」
「血が混じった焼けた臭いが漂ってきますニャ」
――砦の上空に飛ぶものが見えた。
白い翼と黒い翼が空中で交錯する。
同時に悲鳴や子供の泣き叫ぶ声も聞こえてきた。
「あれは仮面の天使と堕天使達か!?」
「そのようですニャ。
天使達の襲撃を受けて堕天使達が応戦しているようですニャ」
「詳しい状況が分からないけど、のんびりしてられないわね、戦闘区域に突入するわよ!」
セレフコス川から切り立った崖の上。
崖に沿うように高さ七、八メートル程の城壁に囲まれたいる。
「スコル、ハティ、あの城壁の上にっ」
「はいよぉ」
「了解なのぉ」
石造りの城壁に上がり下に広がる市街地を見下ろした。
碁盤目状に北北東に向けて建てられた建物が立ち並び、その上空で天使との戦いになっているようだ。
「風の霊素よ、我が身に宿れ、<エアリアル・スキャン>」
<エアリアル・スキャン>でまずは周囲を索敵。
――すると光の魔素が五十七に対して闇の魔素が十七。
数の上では不利なようだが、囲まれながらも個々の力はこちらが圧しているように見える。
近くで六体と戦闘状態だった堕天使の下へ向った。
「私はルシファー。天使との戦闘に助力するわよ!」
「むむむ、俺はサリエルだ助力に感謝する。お前があのルシファーか、アザゼルから一応話は聞いている。」
「サリエル――あまり話した事は無いけど覚えているわ。
創世主の前に出る事を許された十二人の天使の一人だったわね」
三対六枚の黒い翼で羽ばたき額にもう一つの目を持つ彼。
魔眼で魂を見透し、三日月のような弧を描かせた堅固で美しい結晶の大鎌を振るい狩る者だったかしら。
「舞え、漆黒の刃!」
空中戦が主となっているので漆黒剣を展開。
「ボク達も行くよぉハティ!」
「はいはい、了解なのぉスコル」
「「――<ユニゾンファング>」」
漆黒剣が十本に増えていた事に少し驚きつつ、サリエルと交戦中の仮面の天使達六体に向けて飛ばす。
スコル、ハティも跳躍し、同時攻撃で飛びつき喉元を牙で掻き切る。
二匹の幻獣と漆黒剣の出現で集中を削がれた仮面の天使達は瞬く間に倒れていき、倒れた仮面から光の魔素を吸収。
「流石だ。やるな…………このまま残りの雑魚どもを蹴散らし撃退してしまおう!」
サリエルが感嘆する中、標的を倒した十本の漆黒剣が背面の昔翼のあった位置に戻る。
すると剣達は翼を羽ばたかせたように広がり、次の瞬間それらは剣から漆黒の五対十枚の翼となった!?
「ルシファーの剣が翼になったニャ!」
「うむ、昔の六対十二枚とまではまだ行かないけど、着実に力が戻って来ているわね」
少し背中に意識を集める以前のように浮く事ができた。
地下迷宮で蛇竜ヴィーヴィルを倒した事で確実に強くなっている事を実感。
このまま行けば昔の強さを取り戻し超える日が来るのも近そうだ。
改めて <エアリアル・スキャン>で周囲の索敵を掛ける。
――闇の魔素は十七のままだが、光の魔素が三十四にまで減っていた。
着実に仮面の天使達を押し返している。
しかし――――遠方の空から何かが近づいて来ているように見えた……




