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第十三話:闇黒の城塞都市

――新月の夜、影の中にある猫の世界。

 影の異世界を統べる女王スカーサハが治める都市<闇黒の城塞都市(スコタディ・カストロ)>


 七つの城壁に囲まれ、外郭城壁は黒く半透明でガラス質の強い黒曜石で、六つの内郭城壁は黒石英で造られている。

 ケッティの話では女王は武芸に長けており、修練する場として地下が大規模な迷宮になっているそうだ。

 別名を影の迷宮都市。



 内郭の中央にそびえる城を目指し進む黒い石畳の街道。

 夜道をランプの光が照らし、街道には布張りの屋台が立ち並ぶ。

 猫耳の仕事を終えたであろう人達が食べ物を求め、屋台はどこも賑わいを見せている。


「もっと堅い雰囲気かと思っていたがそうでもないんだな」


「とっても美味しそうな香りがするんだよ」

「お腹が鳴っちゃうのぉ」


 スコルとハティが匂いに釣られ、顔を左右に行ったり来たりしている。

 幻獣の資質を受け継いだとは言えまだまだ子供。

 食べ物の誘惑はとても強敵なようだ。


「食事はもう少し待ってなさい」

「クゥゥ~~~ン」


 少し進むと衛兵詰所が見えてきた。

 受付で声を掛けると、ケッティがあらかじめ話を通してあった為、女王への謁見はあっさりと許された。

 ただ猫の街で幻獣と猫耳の無い私は目立つらしく、問題など起こすなと釘を打たれてしまった…………。


「謁見前に少し何か食べようか」

「それならお薦めがあるのですニャ」

「肉が食べたいんだよ!」

「――――なのぉ」


 衛兵詰所から少し脇道に入ったあたり、街道に並んでいた屋台より少し大きい。

 そこからは街に入ってから一番よい香りがする。

 スコルとハティのゆだれが止まらない程だ。


 ケッティが屋台で何か買って戻ってきた。

 早速みんなで口にほおばる。


 ソースも美味しいのだが、赤身の肉々しい良さがしっかりあって柔らかさもあるが、しっとりとした噛み応えを感じられる。

 噛めば噛むほど肉々しさとソースの味わいが溢れ出る。


 手で回転させながらじっくり焼いた肉を削ぎ切りし、葉野菜で包まれたこの料理は実に美味い。


「とっても美味しいんだよ」

「もっと食べたいのぉ」

「女王に謁見しなくてはならないからまたね」

「「ガウゥゥゥゥ」」


 名残惜しいが小腹を満たしたところで城に向う。



  ◇◆◇◆


 最奥の内郭城壁を越え、黒き月の輪郭を縁取る光が静に噴水庭園を照らす。

 黒薔薇や濃赤色のカーネーション、黒紫のネモフィラが咲き誇る庭園の中央を進む。


「扉の奥が闇鏡の間となります。お入り下さい」


 衛兵によって細かな彫刻が施された重厚な扉が開けられ、大広間謁見室である闇鏡の間に通された。

 天井は高く、豪華なブラッククリスタルのシャンデリアが吊り下げられ、壁には黒い大きな鏡が無数に填め込まれている。

 中央に敷かれたベルベットの絨毯の左右に猫耳ローブに身を包んだ者たちが整列し、絨毯から視線を先に進めれば黒水晶を彫刻で仕立てた玉座に猫耳の女性が座していた。


 高襟でくるぶし丈に深いスリット、身体への密着度の高く優美なラインがスタイルの良さを際立たせる。

 胸元は菱形に切り取られており、均整のとれた胸の谷間が目を吸い付ける。

 空色で光沢があり艶やかなサテン地のドレスが、薄っすらと水色の入った髪と実に至当だ。

 だが玉座に座る者としては軽装に見える。


「妾が女王スカーサハである」


 玉座の前まで進み、片膝をつき頭を下げた。

 私の横ではスコルとハティも伏せている。


「ほう、これは狼とは珍しいな、それに横の者は人間のようで人間でないようだが――」

「スカーサハ様、ご無沙汰しておりますニャ」

「久しいな、他の者も顔を上げる事を許す――――して、何用か?

 妾は無駄な時間が嫌いじゃ用件を申せ」


「単刀直入に申しまして、こちらの地下迷宮(ダンジョン)で修練を積ませてもらいたいですニャ」


「うむ、地下迷宮(ダンジョン)で修練か――――」

「難しいでしょうかニャ?」


 女王スカーサハから感じる気配が少し重くなった。


「――では一つ条件を出そう。

 妾と手合せし満足させる事ができれば許可を与えようぞ」

「手合わせですかニャ? ウチじゃなく別の者でもいいですかニャ?」

「うむ、誰でもかまわんぞ、楽しい楽しい遊びの時間だっ」


 無言で立ち上がり一歩前に進みでる。


「私、ルシファーと手合わせ願う」

「お主が――――さぁ力を存分に見せるがよい」

「ここで……か?」

「ああ、結界を張らせるので思いっきり来てよいぞ」

「できれば剣をお借りしたい。自分の剣は相手の武器を腐食させてしまう」

「ふむ、誰かこやつに剣を貸してやれ」


 猫見をピンッとさせ女王スカーサハが玉座から立ち上がり、脇に立てかけてあった剣を持ち降りて来る。

 私が従者から片手剣を受け取ると猫耳ローブの数名が詠唱し、部屋の内側に立方体の結界が張られた。


「妾は準備万端だ、いつでも掛かってきてよいぞ」

「では参る」


 魔素(マナ)を使わずルシファーが剣を振るった。

 互いに様子見とばかりに打ち合い、徐々に剣速が増していく。

 

「アハハハハハ、良いっ良いぞ!」

「随分と楽しそうだなっ。ではこれはではどうかな」


 剣に少しずつ魔素(マナ)を纏わせた。

 それに伴い剣速も増していく。

 そして猫見女王スカーサハの肌を刃が掠めた。


「久しぶりの痛みだ――くっくっくっ血が滾るなっ!」

「この戦闘狂がっ」

「まだまだ暴れたりぬ、妾をもっともっと気持ち良くさせておくれ」


 再び構え直し今度は力で剣を振り下げた。

 鈍い響きと伴に鍔迫り合いし、火花を散らす。


 次の刹那、スカーサハの隙を見逃さず剣を弾き上げ、刃は切っ先を首元に突き付けた。


「妾の負けじゃ――地下迷宮(ダンジョン)へ入る事を認めよう」

「感謝致します」

「実に楽しい戦いであった。その強さがあればアレからも生きて戻って来れるであろう」



 ◇◆◇◆


 ――ここは闇黒の城塞都市(スコタディ・カストロ)の地下全域に広がる地下迷宮(ダンジョン)


 城の地上階から階段を降りた。


「暗いな、見えているか?」

「問題ないのニャ」

「ボクも平気」

「大丈夫なのぉ」


 そこは暗く湿り気が強い、整った石塊が積まれた壁面、用水路なのだろう水が横を流れている。

 ケッティとスコル、ハティは夜目が利いているようだ。


 ――<ライトニング・ナイトヴィジョン>

 紅く輝く眼。暗視魔法を使った。


「待たせた、先に進もう」


 用水路の水中には、体長二メートル程のヌメヌメとし、鮮やかな紫色の肌を放電させているトカゲがいたが、魔素(マナ)の漆黒剣を舞わせ邀撃していった。

 

 しばらく進むと天井が高くなり空間が開けた。

 対岸まで続く石造りの橋が見える。

 橋の間には円形の踊り場が三ヶ所あり――何かがいる?


 額中央、螺旋状に捻じれた鋭く尖った長い一本角。

 その付根からが背を通り尻尾まで繋がった深紅で炎のような(たてがみ)

 二つに割れた大きな蹄、力強く引き締まった脚の黒馬――一角黒馬(ユニコーン)だ。


「うむ、純潔の匂いがするな、実に美味そうだ」

「…………」

「キモイのニャ…………」


「くっっ――鬱陶しい……轢き殺しにしてくれる!」


「今度はボク達が殺ってやる! 行くよハティ!」

「はいはい了解なのぉスコル」


 幻獣兄妹が声を掛けあい、私とケッティの前、一角黒馬(ユニコーン)の間に割って入った。

 蹄で地面を蹴り、角で突き刺すかのように体当たりしてきたが華麗に回避。


 ――<ユニゾンファング>。

 回避直後、スコルとハティが同時に一角黒馬(ユニコーン)へ飛びつき牙を剥く。


「犬風情が……」


 捻じれた角が黒い光を発し、続いて黒紫の稲妻が迅雷と伴に橋の地覆を走る。

 私は漆黒剣を避雷針にし防ぎケッティも逃れたが、スコルとハティは直撃を受けた。

 ケッティが影を移動し痺れて動けないでいる二匹を後ろに退避させる。


「無鉄砲に突っ込むな、己の力を知れ、相手の力を感じろ」

「グヌヌゥゥゥ」

「この前のルシファーにそっくり言ってやりたいニャ……」

「少し休んでおけ」


 <死せる戦士の剣(エインヘルヤル)>を抜刀し一角黒馬(ユニコーン)に対峙した。

 六本の漆黒剣を上部に展開、視線を上に誘導させた。

 次の刹那、迅雷をも超える目に追ぬ程の速さ。

 一閃の紫光が一角黒馬(ユニコーン)を通り抜け、鋭く尖った一本角を斬り落とす。

 同時に一角黒馬(ユニコーン)の胴を目掛けて漆黒剣が降り注いだ。


「クソっ……まさか人間などに…………」


 その言葉を最後に黒き靄が吹き上がり、私達に魔素(マナ)が吸い込まれていった。

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