seventhDay 7
○~○~○~○
それはなんと例えるのが最も手っ取り早いのだろうか。もしこれを上空から覗いたりしたらどのように見えるのだろうか。
「ハハッ…………………ハハハハハ!!!」
何もない。
そう何もないのだ。
ソレイユの大技は一瞬で森の3分の2を灰にしたのだ。
上空で高笑いする赤髪の魔女は死体など確認することなく体内の負の《太陽》に語りかける。
(《愚者》と《隠者》は近くにいるかい?)
『《隠者》は僕と同じで隠れることができるから何とも言えないけど少なくとも《愚者》の反応は完璧に消えたね。完璧に…………』
魔女は自らの得意とする炎を操り気流を操作すると自らが焼いた土地全てにまるで台風のような突風を吹かせる。
「フフッ!!ハハハッ!!灰になって風に流されたってか!!笑えるじゃねぇか!!」
声を上げ一人笑う魔女。そんな魔女の中でもうひとつの意思は静かに冷たく言い放った。
『消えたとは言ったけど死んだとは言ってないよおバカさん…………………』
(ハァ?)
ふと森の上を滞空しているソレイユに小さな影がかかる。雲じゃない。ソレイユはそれに気がつくのに5秒はかかった。
「クソやろォォォォォ!!」
見上げた先には巨大な若草色の門が。そしてそこから《愚者》の少年が、大きく拳を構えて猛烈なスピードでこちらに向かってきていたのだ。まるでこの少年の右脇腹をえぐられた時と同じように。
「これが3度目だぁぁぁぁぁあ!!」
対応しきれない。右脇の痛みと相まって完全に反応が遅れたソレイユ。
そんな魔女の弱点に少年は容赦なく光輪を携えた右手を食い込ませた。
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足りない。
ソレイユは右腕を犠牲にすることでなんとか急所への直撃を避け、衝撃に任せ落下していく。
一発では無理だ。何しろ相手は炎の操作はもちろんのこと、それの応用で気流を操作することもできるのだ。落下速度など意識がある限りは簡単に消すことができる。完全に気絶させる、もしくは息の根を止める。そのくらいの覚悟で行かねばならない。このままゲームエンドに持ち込まなければ逆転される可能性が生まれてくる。
「まだだ!!」
椋は目の前に若草色の門を出現させると、重力に従うようにそのままその中に飛び込む。
「ッ!!何を!!」
ソレイユは叫び、上空に浮かぶ閉ざされた扉に向かい黒炎弾を放つが、それが届く前に門は光を散らしながら霧散していく。
「なっ!!!」
再びソレイユは驚愕の声を上げる。
自分の周囲360度、上下左右関係なく考えられない数の扉が出現する。10やそこらではない、300、いや、それ以上だ。見渡す限りは大量の門。
その全ての扉が同時にバンッと大きな音を立て開く。
中から飛び出てくるのはもちろん椋。光輪を各所に携え、門から門へと渡り、違うもんから表れ、また門に消えていく。
高速でそれを繰り返す椋。ソレイユの攻撃も当たる前に逃げその門を消してししまえば問題ない。
次々と新たな出口を作り飛び込み、隙が見えれば容赦なく『光輪の加護』を炸裂させる。
もう急所なんてものは関係ない。頭だろうが下半身だろうが、指先だろうが、掠めるだけで猛烈な威力を発揮する『光輪の加護』。すでにソレイユの体は限界まで来ていた。
全身の痛みからだろうか?反応が鈍っていくのがわかる。
最後のひとつの光輪を右手に携え最後のチャンスをうかがう。
「クソォォォォお!!ちょこまかとうっとしい!!」
最後の手段だろうか。ついに待っていた自滅とも言える行為をソレイユは行った。
自分の周囲、全ての門を焼き払おうと考えたのだろう。強烈な黒炎がだんだんとソレイユの周囲に集まってくる。
そう、それが自分の視界を奪っていることにも気がつかず。
門は焼き払われたってどうってことはない。ソレイユは自ら椋にチャンスを与えてしまったのだ。
「最初からこうやりゃァ良かったんだよ!!」
そう叫ぶソレイユの真後ろ、資格にひとつの若草色の門が出現する。
「これで…………終わりだあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
「え?」
椋は右手に携えられた最後の光輪を消費し、落下してくるソレイユの背中に向かい、容赦なくその一撃を叩き込んだ。
強烈な一撃にソレイユの体は逆くの字に曲げ、ソレイユの意識を完全に奪った。




