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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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コミカライズ公開記念エピソード

 

「お姉ちゃん! あそこにイケメンがいる!」


「なんだと! 私のだ! 初めまして! よく家庭的な子って言われて――ゾンビじゃん!」


「サクラ、モミジ、騒いでないで早く撃ってやれって」


「はーい、乙女心をもてあそんだ罪は重いぞ……!」


 移動用のバスの中から狙いを定めてヘッドショット。またつまらぬものを撃ってしまった……いや、つまらぬものじゃないんだけどね。今日も結構ゾンビを撃ったけど、まだまだ多い。感染を無力化させる抗ウィルス弾を撃ち込むことで無害で大人しいゾンビに変えているわけだけど、なかなか一苦労だよ。


 これがイケメンと一緒だっていうならいいよ? でも一緒にいるのがおやっさんと妹のサクラ、そして彼女持ちのサバイバルゲーマー仲間。拠点まで戻れば男性だってたくさんいるけどさぁ、なんかこうピンとくる男性がいない。世界がゾンビで溢れていても彼氏ほしーよ。


 まあ、モミジにも男性の影がないことだけは助かる。これでモミジにも彼氏ができたとかになったら武器庫を占領して暴れるかもしれない……武器庫の鍵を保管している場所は確認済みだ……!


 おやっさんはいい人だけど元殺し屋だ。私としては別に気にしないけど、年齢差は気になる。あと三十、いや、二十五くらい若ければ視野に入ってた。まあ、おやっさんの方が嫌がる可能性は高いけどね。そのおやっさんは過去の経歴が謎だ。今は色々な銃を製造できるガンスミスをしていて、私のこの銃もメンテしてもらってる。ほかにもヘリや船、さらにはジェット機まで動かせるって言うんだから殺し屋になる前の職業がなんだったのか知りたい。


 やば。おやっさんの若い頃を想像して彼氏候補に考えるなんて疲れすぎてるよ。大体さぁ、拠点でセンジュさんとエルちゃんが甘い雰囲気の空間を作り出すのが悪い。イチャイチャしているわけじゃないんだけど、銃のトリガーに指がかかりやすい。元凶を倒したセンジュさんだからこそ許されているけど、元の世界だったらなんかの罪に問われてもおかしくない。むしろ無期懲役にしてやる。


 殺し屋だったセンジュさんとちょっとサイコパスな感じのエルちゃんはお似合いなんだけど、もうちょっと周囲に気を使って欲しい。とくに私に気を使え。独り身には目の毒だ。撃っても罪に問われない気がする。そんなことにならないように彼氏が欲しいわけなんだけど、私の運命の人はどこにいるのやら。


「世の中の半分は男性なのになぁ……」


「お姉ちゃん、世の中の半分はゾンビだよ?」


「そうなんだけどね……ちょっと待って。さっきゾンビって分かっててイケメンがいるって言ったよね? もしかして私にはゾンビで十分だとか思ってたりする? ちょっと膝を付き合わせてお話しようか?」


「銃口を向けないで。だいたい、彼氏にどうなんて一言も言ってないでしょ。イケメンと言っただけで反応したお姉ちゃんに問題があると思います」


「……一理ある」


「一理なんだ?」


 全て私が悪いと言いたげだけど、私だって言いたい。ゾンビにイケメンという形容詞は要らないんだよ。残念だけど、ゾンビになった人は人間に戻らない。今はワクチンもあるからゾンビ化する人は減ったけど、あの抗ウィルス弾はゾンビからウィルスを除去するだけで、身体は死んだままだ。生き返ったりはしない。


 センジュさん曰く、頭がいい馬鹿が作ったウィルスらしいけど、変なものを作ってくれたよ。ゾンビになった男性の中には私の運命の人がいたかもしれないんだぞ。責任取れ。


「そろそろおふざけは止めとけよ。マコトが言うにはこの先のビルに避難者とゾンビがいるっぽいからな」


「ゾンビはともかく、その人たちって安全なの? 人間的に」


 こんなご時世だからね、物資は奪い合いだ。一応通信でワクチンがあることを放送しているけど、疑っている人も多い。命からがら移動したら物資を奪われるなんてよくある話もあるし、人間不信になるのは当然だ。そして逆もある。助けてといいつつ、助けに来た人の物資を奪う。皆、生き延びるために必死だ。昔みたいに戻るのはまだまだ先だね。


 それでも少しずつ元に戻っているとは思う。これもセンジュさんのおかげかな。まさか適合者にゾンビを操る能力があるなんてね。どういう仕組みなのかは分からないけど、抗ウィルス弾を撃ち込んでもその能力は健在でゾンビを無力化してから労働力として使わせてもらってる。センジュさん曰く、絶対にホワイトな働き方をさせると言ってたけど、ブラックな企業になにか恨みがあるのかな。


「マコトがそのビルの監視カメラをハッキングしてちゃんと確認してる。人間的には安全だ。食料もまだあるようだし、ゾンビたちもビルには入れないからそっちも安全だと言えるだろうな」


「さすがマコトちゃん、仕事が早いね」


 天才ハッカーのマコトちゃん。中学生とか高校生くらいの女の子だけど、コンピュータを使わせたら世界一と言ってもおかしくない。センジュさんがウィルスを作った人を倒しに行くときもマコトちゃんの働きがあったからこそだ。それになんかちっこいし可愛いよね。アイス好きなのもポイント高い。でも、対戦ゲームで手加減してくれないのはマイナスだ。


「ただなぁ……」


「なんかあんの?」


「家族を諦めきれねぇ奴はどこにでもいる。ゾンビを部屋に隔離して保護してんだとよ。ワクチンや抗ウィルスの話はしてあるからこれ以上あぶねぇことはしないとは思うけどな」


「気持ちはわかるけどね……源次郎おじいちゃんもそうだし」


 医者で殺し屋だった源次郎おじいちゃん。まさか死にそうになったからってセンジュさんに噛まれてゾンビになることを選ぶなんて。でも、死んじゃうよりも嬉しかったな。それにゾンビになった源次郎おじいちゃんはワクチンや抗ウィルス薬の製造に関わっている。ゾンビになっても私達を助けようと頑張ってくれるなんてありがたくて涙がでるよ。


「だからこそ早く行って抗ウィルス弾を撃ち込むぞ。感染力のないゾンビならいてもいい。筆談もできるようになるだろうし、ちっとは救われるだろうからな」


「これで話せるようになればゾンビでも問題ないんだけどねー」


「……お前らなら言っても平気か。なんかそんな抗ウィルス薬を作ろうとしているらしいぞ」


「え? 本当?」


 これには私以外の皆も食いついた。私達は救助に向かうことが多くてそっちの方は全然知らない。いつの間にかそんな話になってたんだ?


「詳しいことは分からねぇが、センジュのような適合者に近い状態にするって話だ。とはいえ、あまり期待はするなとよ。それに余計な期待を抱かせてゾンビの駆除を躊躇されても困るから周囲には言わないでくれってさ。ミカエルたちが世界中にワクチンや抗ウィルス薬を運んでいるが、全然行き渡ってねぇんだ。ゾンビをやるしかない場合の方が多い」


 ミカエルちゃんやラファエルちゃん達か。このウィルスを振りまいた元凶とも言えるけど、実際には逆らえない命令をされていたんだよね。多くの人から色々言われているけど、ミカエルちゃん達が罪滅ぼしのためにヘリコプターとかで世界中にワクチンとか物資を運んでいる。


 ミカエルちゃん達はクローンだから動ける子達も多いんだけど、世界は広いからまだまだ行き渡ってないし時間もまだまだかかる。映画みたいなゾンビの駆除をしないといけないわけだ。


「世界規模だもんね……」


「まあ、そんな暗い顔をすんな。俺らは神じゃねぇんだから全部は救えねぇ。だから今やれることをやればいいんだよ。アマゾネスの奴らだってそうだろ?」


 アマゾネスさんたちか。パンデミックの中、女性だけで構成されていた集団だけど、ほとんどはゾンビ化しちゃったんだよね。なんかセンジュさんの従姉妹が色々やったらしいけど、その辺りは詳しく聞いてない。センジュさんはその従姉妹をいわゆる処理したんだけど、ちょっと悲しそうな顔をしていた気もする。


 大半はゾンビ化したけど、センジュさんのおかげで今はゾンビとして働いている。そんな状態でも生き残ったアマゾネスの人達は感謝しているみたい。そこまではいいんだけど、なぜか復興支援を兼ねてアイドル活動を始めたんだよね。まあ、昔に戻ったみたいだって喜んでいる人も多いらしい。ただ、気になることもある。


「確かにアイドル活動による復興支援は結構盛り上がってるよね。ところで教えて欲しいんだけど」


「なんだ?」


「なんで私はアイドル活動の方に選ばれていないのかな? そもそもアマノガワさんなんて男なのにアイドルやってるよね!?」


 アマノガワさん。男性なのに女性っぽい容姿だからとアマゾネスに所属していた人。しかも殺し屋。パンデミック前からアイドル活動をしてたけどさ、本物の女性がここにいるのに、なぜアマノガワさんがアイドルをしているのか。


 皆が視線を逸らした。戦争が望みか……!


「アマノガワは元々アイドル活動をしてたろ。それに文句はメンバーを決めたジュンに言ってくれ。ただ、俺から言わせればお前は射撃能力が高いんだよ。そこそこ早く動けるゾンビにも抗ウィルス弾を当てられる奴はそういねぇんだ。これに関してはセンジュも褒めてたし、こっちに配属されるのは当然だと思うけどな」


 おっと、そういう理由だったのか。けっしてガサツだからという理由でないというわけだ。まあ、正直、アイドル活動しろと言われても無理だけど。


 それにジュンさんか。アマゾネスにいた幹部でパンデミック前は探偵だったらしいけど、やり手の女性って感じでなんかいいよね。今はプロデューサーみたいなことをしているけど、仕事がかなりできそう。そのジュンさんが決めたなら仕方ないと諦めるしかないか。ちょっと納得いかないけど。


「私は誘われたんだけど……」


「ちょっとモミジ? それ、今、言う必要ある? やっぱりお話しようか? 私は銃を持つけど、モミジは丸腰ね」


「冗談! 冗談だってば!」


「私は本気だ!」


「ほら、もう着いたぞ。ここからは遊びじゃねぇんだ。ワクチンのおかげでゾンビ化しなくても噛まれたらいてぇ。慎重にやってくれよ」


 本気だったけど、おふざけはここまでだね。でも拠点に戻ったらモミジを尋問しよう。


 おし、気合を入れていこう。少しでも不幸な人を減らしていかないとね。それに不幸になりそうな人も。


「それじゃ、皆! 一人でも多くの人を助けるよ!」


「「「おー!」」」


「まずはビルの周囲にいるゾンビたちを大人しくさせよう! 抗ウィルス弾を撃ち込めー!」


 センジュさんがいれば言葉だけでゾンビたちを動かせるけど、エルちゃんと一緒に色々な避難所へ回っているからね。こっちはこっちで一人でも多くの人を助けよう!


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