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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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本社ビル

2019.09.08 3話投稿(3/3)

 

 翌日、皆を乗せて救急車を走らせている。


 乗っているのは俺とラファエルちゃん達とじいさん、それにマコトちゃんとジュンさん、それにアマノガワだ。他の皆はマンションで待機。


 今向かっているのはミカエル達が動画を撮影したと思われるビル。あそこにいる黒幕のクローンに命令してシェルターにある指紋認証の扉を開けさせるためだ。


 昨日、屋上での情報共有からマコトちゃんが頑張って動画が撮影された場所を発見した。おそらく間違いはないと思うが、念のためにラファエルちゃん達に確認をしてもらおうと思っている。


 ちょっと信じがたいのだが、そこは俺やアマノガワ、そしてじいさんにとって、ゆかりがある場所だからだ。


 株式会社ブラックホーネットの本社ビル。


 動画が撮影されたのはそこらしい。


 つまり、うちの会社も黒幕の計画に協力していたのだろう。もしかしたら俺のターゲットの中には計画を邪魔する奴も含まれていた可能性がある。知らず知らずのうちに計画の片棒を担がされていたわけだ。


 そもそもうちの会社がどうやって成り立っているか、と言うところもある。この会社以外にも殺し屋派遣会社はある。だが、ここ程大手ではない。細々とやっている感じだ。


 黒幕には政府のお偉いさんも賛同していたようだし、うちの会社が大丈夫だったのはそう言った繋がりがあったからじゃないだろうか? もしかしたら、社長や会長がシェルターの中にいるかもしれないな。


 まあ、それならそれでゾンビになっているわけだし、自業自得ということだろう。


 ……結論は急がないほうがいいか。まずはラファエルちゃん達に場所を確認してもらってからだ。ほとんど決まりみたいなものだけど。




 30分後、目的地のビルへ着いた。


 ここに来るのは久しぶりだな。ほとんどここへ来たことはない。地下に射撃場とかがあるから上司に連れられて訓練をした時くらいか。あと、昼飯のBランチは美味かった気がする。


「センジュさんは結構ここへ来てましたか? 俺の場合は殺し屋のアイドル事務所がメインでしたけど」


「いや、俺も殺しの新人研修の時くらいだ。上司は結構ここにいたらしいが、嫌いだったからほとんど近寄らなかったな」


「殺し屋同士の会話って面白いわね? 殺し屋のアイドル事務所とか殺しの新人研修とかって、笑っていいところなのか判断に困るわ。だいたい、こんなに目立つところに殺し屋の派遣会社を建てないでよ。おかしいでしょ?」


 特に笑うところじゃないんだけど、普通の人から見たらそうなんだろうな。


 でも、殺し屋の派遣会社って世界中にあるし、ランキングやターゲットなんかは共通だ。出来るだけブッキングしないように色々な仕組みがあると聞いたことがある。一体、誰が最初に始めたのかね。


 まあ、それはどうでもいいや。今はそういう理由で来たわけじゃない。ここに黒幕のクローンがいるかどうかの確認をしに来ただけだ。


「ラファエルちゃん達が動画を撮影したのはこのビルでいいのかな?」


「うん、間違いないよ。あのスズメバチの看板は覚えてる……ハチミツを作っているかと思って期待したらそんなものは無かった。騙された」


 ラファエルちゃんのテンションが目に見えて下がった。


 料理好きだからそう言うのを期待していたのかな。


「えっと、帰りにハチミツがありそうなところに寄ろうか」


 ラファエルちゃんの顔がぱっと明るくなる。反対にガブリエルちゃんやウリエルちゃんがブーブー言いだした。皆を平等に扱うって難しいな。


 とりあえず二人にも欲しいものを取って帰ろうという話をしてこの場を収めた。朝早くから来てるけど、出来るだけ早めに終わらせたいからな。この場で留まるのは良くない。


 ビルに入ってロビーの横にある入館証をチェックするところを飛び越えた。


 一応入館証は持っているけど、わざわざ通す必要もないだろう。警報が鳴るわけでもないし、このまま皆で撮影場所へ直行だ。


 エレベーターホールでエレベーターに乗り、34階のボタンを押す。ラファエルちゃん達が言うには、撮影したのはその階らしい。


 しかし、これでうちの会社がZパンデミックに関わっていたということが確定したな。殺し屋の派遣会社なんだから、らしいといえばらしいけど。


 でも、俺の上司はサイコパスだが死者は敬えと言っていた。会社のお偉いさんもそういう考えがあったと思っていたんだが……それは間違いだったみたいだ。そもそも上司の考え方が異端だったのかもな。


 いい人に拾われたのか、それとも悪い人だったのか、良く分からないな。


 でも不気味だ。お詫びメールの返信が全くない。毒入りソバを食べさせたから俺を襲って来るかと思ったんだが……病院から抜け出してそのままゾンビにやられたのかもしれないな。


「そうだ、マコトちゃん、電話番号から大体の場所が分かるんだよね?」


「黒幕のスマホのこと? 一応出来るけど、もうショッピングモールにいるのは確定しているんじゃないの?」


「あ、いや、ちょっと別件で」


「もちろんできるよ。まあ基地局を割り出す感じだから一度は電話をかけないとダメだけど」


 どういう仕組みで割り出すのかは分からないが出来るらしい。今度上司の場所を調べてもらおう。出来れば電話したくないけど。


 エレベーターが34階に着いた。そのフロアの一番奥の部屋だ。


 念のため周囲を警戒しながら移動するが、このフロアには誰もいないみたいだ。


 そして奥の部屋に近づくと、ドン、ドン、と何かがぶつかる音がした。どうやら奥の部屋で誰かが扉を叩いているようだ。誰か、と言うよりは黒幕のクローンが外へ出ようとしているのだろう。


 扉の横にはカードリーダーがある。俺の入館証で開くはずだ。


「みんな、これから扉を開けるからちょっと下がって。アマノガワ、じいさん、皆を頼むぞ」


 皆が十分に離れたのを見計らってカードリーダーに入館証を近づける。ピピッと音が鳴り、鍵が開く音がした。


 そして扉が開くとゾンビがいた。適合者である俺には襲い掛からないようだ。すぐさま「人を襲うな」「大人しくしろ」と命令した。


 うん、これで大丈夫だろう。ミッションコンプリートだ。


「ふう、思いのほか簡単に済んだね。それじゃ帰ろうか」


 マコトちゃんのハッキング技術やジュンさんのピッキングが必要になるかもと思って付いてきてもらったんだけど、必要なかったな。


「こんな時にあれなんだけど、ちょっと殺し屋の会社に興味があるんだよね。すごいパソコンとかもあったりしないかな? ちょっと見学してもいい?」


「それは私も気になるわね。そもそもこの部屋を調べない? ウィルスやワクチンのことが分かる資料があるかもしれないわよ?」


 なるほど。そもそも黒幕のクローンがここで何をしていたのかは調べたほうがいいかもしれないな。まだ昼前だし、じいさんやアマノガワの護衛もいる。色々調べてみるか。


「そうだね、ちょっと調べてみよう。でも、単独行動は無し。気になる物があったら必ず皆にいうこと」


 同意を得られたので皆で部屋に入る。


 意外と広い部屋で研究室のような感じだな。機材や訳の分からない液体が入った棚などがある。ただ、黒幕のクローンが暴れたのか色々なものが散乱している。


 ラファエルちゃん達は久しぶりに来てテンションが上がったのか、動画を撮影したと思われるカメラを持って遊んでいるようだ。じいさんはその近くに立ち、ラファエルちゃん達を見ている。


 マコトちゃんは部屋に置いてあるパソコンをいじりだした。ジュンさんは資料などを読み漁っているようだ。


 アマノガワは暇そうにしているけど、マコトちゃんやジュンさんのことをしっかり見ているからちゃんと護衛をしているのだろう。


 さて、俺はどうするかな?


 ふと、黒幕のクローンが目に入った。何か聞いてみるか――そうだな、適合者を見つける理由を聞いてみようか。知っているかどうかは分からないけど。


「進化するのに適合者が必要ってどういう意味だか知っているか? 知っているなら紙に書いてくれ」


 そう言って机の上に紙と鉛筆を置く。


 黒幕のクローンはスラスラと紙に何かを書いた。


『不老不死へ至るための素材。娘の研究はあと一歩だったのに失敗した。特殊な条件を持つ生きた人間、つまりウィルスの適合者が必要となるのだが、クローンの適合者ではなぜか代用できない。なので適合者が必要となる』


 イタタタタ。


 不老不死ときたか。これも金持ちとかに良くある話だな。でも、そんなことが可能なら殺し屋は商売あがったりだね。殺し屋を辞めた俺には関係ないけど、黒幕は確実にゾンビにして、そんなことはさせないようにしないとな。


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