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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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ショッピングモール

2019.09.01 3話投稿(3/3)

 

 話し合いが終わった後、おやっさん達が改造したキャンピングカーに乗ってショッピングモールを目指している。


 メンバーは俺とおやっさんとマコトちゃん、それにアイアンボルトの男性陣だ。なお、アイアンボルトの男性陣はキャンピングカーには乗っていない。


 同じくおやっさん達が改造したトラックに乗っている。キャンピングカーの後ろについて来ているようだ。


 ショッピングモールには色々ありそうだから出来るだけ物資を持ち帰って欲しいとのこと。そのせいか、居残り組から色々頼まれた。


「マコトちゃん、女性用の下着とかは任せるから頼むね」


「中学、高校生くらいの着る物なら何とか大丈夫だと思うけど、サクラやジュンたちの下着を選べるかな?」


「適当でいいよ、適当で。少なくとも俺達が選ぶよりはましだと思うし」


「まあ、俺らが選んだとか言ったら殺されかねないからな。殺されなくても、これからの飯がドッグフードになっちまうぜ!」


 おやっさんの言ってることは正しい。確かにエルちゃんならやりかねない。せっかくおやっさんのことをフォローしたんだから、危険なことはしないように行動しよう。


「あ、そうだ、言ってなかったことがあるんだけど、いま言ってもいいかな?」


「言ってなかったこと? ノートパソコンとスマホ以外のことってことかな?」


「そう。まだ完全には分かってないんだけど、あの動画の場所が大体絞り込めたよ。もう少し調べれば完璧に分かるね」


「あの動画?」


「ミカエル達が出ている動画。えっと、黒幕の偽物がゾンビになる動画のこと」


「ああ、あれか」


 しかし、あれの場所が分かったところでいまさらな気がする。でも調べなくてもラファエルちゃん達に聞けば一発なんじゃないかな?


「調べてもらっていてあれなんだけど、ラファエルちゃん達に聞けばすぐに分かるんじゃないかな?」


「聞いたけど、知らないって言ってたよ。シェルターの場所も知らないみたいだし、場所を正確に覚えるのが苦手なのかな?」


「ミカエルに留守番するように言われたビルは覚えていたんだけどね」


「ミカエルにくっついて移動している時と、自分たちで行動している時じゃ違うのかもね」


 なるほど。そういうのはあるのかもしれないな。


 でも、それはそれとして動画の撮影場所なんかに行って意味があるかな?


 ……いや、待てよ? そう言えば黒幕のゾンビに命令してワクチンを作れないか考えたことがあったな。偽物とは言っても知識があるならじいさんのいい助手になるだろうし、もしかしたらそこにワクチンがあるかもしれない。行く価値は十分にあるな。


「マコトちゃん、それなら分かったら教えてもらえるかな? そこへ行って偽物のゾンビを捕まえたいと思う」


「了解。そのためにもショッピングモールでいいパソコンの部品を集めよう!」


 いつになくマコトちゃんがはしゃいでいる。本当にパソコンとかが好きなんだな。


「おう、そろそろ着くぞ」


 おやっさんがそう言ったので、前方を見た。巨大なショッピングモール「パンゲア」が見える。だが、それ以上に周辺にいる大量のゾンビが目に入った。


 これも生前の記憶って奴なのかな。ゾンビパンデミックが発生したらショッピングモールへ行く。ゾンビ映画好きなら常識だ。


 ……ということはあそこにいるゾンビは皆ゾンビ映画好きか。


 まあいいや、皆に命令してショッピングモールに入らせてもらおう。




 一時間くらいかけてゾンビ達を駐車場へ整列させた。


 壮観だな。とりあえずはここで待機してもらって、帰りにマンションのある町まで歩いてもらうように命令しよう。少々遠いがあそこまで行けば仕事もあるし食料もある。それほど悪くはないだろう。


 さて、外にいるゾンビ達は大人しくさせたけど、中にいるゾンビはこれからだ。でも、今日中に全部のゾンビに命令をするのは無理っぽいな。そろそろ午後3時だ。夕方になる前にはここを出たい。


 とはいえ、ゾンビがいるうちに入るのは危険だろう。じいさんみたいな思いをするのはもうたくさんだ。


 どうしたものかな?


「なあ、センジュ、ちょっといいか?」


 おやっさんが不思議そうな顔をして声を掛けてきた。


「どうかしたのか?」


「いや、ショッピングモールって本当に防衛に失敗したのか? あの入り口、結構頑丈そうだぞ? 籠城しているようには思えないが、ガラス越しに見ても中にゾンビがいるようには思えねぇけどな?」


 おやっさんに言われて入口のほうを見る。


 確かにガラス越しに見える中にゾンビはいない。入口はゾンビが手をあてたのか、手形がちょっと残っているだけで、割れたりはしていないようだ。


「どうなんだろうな? 入口はここだけじゃないはずだから、ちょっと車で西口のほうへ行ってみるか」


 よく考えたら北口にいたゾンビだけに命令しても意味がなかった。たしかショッピングモールの入口は四か所。東西南北にそれぞれ入口があるはずだ。一つずつ調べてみよう。




 ショッピングモールを北から西、そして南、東と移動して北口まで戻ってきた。


 見た限り、どの入り口も同じ感じだったな。ゾンビは多かったが、どこも破られた様子はない。そもそもショッピングモールが防衛に失敗した情報が嘘だったのか?


 たしか、俺はエルちゃんから聞いたけど、エルちゃんはネットの情報から得ていたはずだ。


 エルちゃんが嘘を吐くとは思えないが、よく考えたら当時は俺を信用してなかったみたいだし、嘘を言った可能性はある。それに以前は今よりももっとサイコパスっぽかったし。


「マコトちゃん、ショッピングモールが全滅したって話はネットに載っている話なのかな? 俺はエルちゃんから聞いただけで、実際には目にしてないんだけど」


「そうだね、それは私も見たよ。実は私もここへ避難しようとしたし。でも、その情報を見てやめたんだ。確かパンデミック初日にその情報は出てたよ」


 と言うことはエルちゃんが俺に嘘を吐いたわけじゃないんだな。疑ってごめんよ、エルちゃん。


 でも、そうなるとネットの情報が間違っているのか?


 ……いや、間違っているんじゃなくて、ワザと、という可能性があるのか。ショッピングモールへ誰も来させないようにワザと嘘の情報をネットに流した、というのはあり得るかもしれない。


 もしかすると、生存者がこの中にいるかもしれないな。その生存者がここを独占するために初っ端から嘘の情報を流した。そして人が来ないようにしたんだ。


 ここは町の中心から少し離れた郊外。途中にゾンビも多いし、実際に確認に来るのは数人だろう。つまり、騙しやすいということだ。


 無理やり中に入ると手痛い反撃を受けるかもしれないな。銃のような武器があるとは思えないが、それ以外の物なら何でもありそうだし。


「あくまで予想だけど、中に生存者がいるかもしれない。無理に入るとタダじゃ済まないかも」


「おいおい、目の前にお宝の山があるのに何もしないで帰る気かよ?」


「おやっさん、悪いけどリーダーとして命令させてもらうよ。誰かがじいさんみたいなことになったら嫌だからな。行ってもいいが、行くなら俺一人だ。さらに今日は時間切れだ。日が落ちる前に帰ろう」


 おやっさんはちょっと残念そうな顔をしたが、一度だけ頷いた。


「それを言われたら引き下がるしかねぇな。仕方ねぇ、近くの店で何か貰って行くか。たしかモールが出来たときに、周囲にチェーン店がいくつか出来たよな?」


「ああ、モールの周りに小さい店が何件かあったな。来るときにちらっと見えた」


「何にも持って帰らなかったら怒られちまうから、少しでも物資を持って帰ろうぜ。マコトもパソコンの部品に関しては諦めてくれるだろ?」


「もちろんいいよ。別に今すぐ欲しいわけじゃないしね。でも、諦めたくはないかなー」


「まあ、次は朝早く来て中に入るよ。もし中に誰かいるなら、交渉で済ませたいけどね」


 そもそも本当に誰かがいるか分からないからな。結局誰も入れないモールだったというオチもある。でも、嘘の情報を流した奴はいるよな?


「マコトちゃん、ショッピングモールが全滅した情報を流した奴を特定できたりする?」


「最初に発言した奴ってことだよね? 情報が消されてなければ大丈夫かな……いや、いざとなったら運営サーバーにハッキングしてそのログを見れば問題ないと思う。分かった。それもやっておくよ」


 よし、それじゃ今日は帰ろう。明日、またここへ来て今度は中に入ってみるか。


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