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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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これからのこと

2019.09.01 3話投稿(2/3)

 

 昼食後、マンションの屋上に皆が集まることになった。


 部屋の中だと全員が入れないからだ。ワンルームマンションだから十人くらいですぐにいっぱいになる。そんなところで話し合いなんかしたくないし、今日は天気もいい。屋上でも問題はないだろう。


 屋上で待っていると、少しずつ皆が集まってきた。全員が集まってからなので皆それぞれ話をしているようだ。


「なあ、エル。なんか俺の朝飯と昼飯、すげぇ少なくなかったか?」


「気のせいだと思いますよ。昨日、いきなりセンジュさんを殴ったことなんか全然気にしてませんから安心してください。あえて言うなら、食べられるものを出されただけありがたいと思ってください」


「気にしてるじゃねぇか!」


 エルちゃん、そんなことしたんだ。ちゃんとフォローしておかないと、そのうちおやっさんの食事がドッグフードみたいなものになりそうだ。殴ったのはおやっさんの優しさだって言ったんだけどな。


「だからね、お姉ちゃん、もうちょっと落ち着きを持って。むしろ余計なことしないで」


「それはそれで私じゃない気がする……!」


「やらないと出来ないは違うんだよ! お姉ちゃんはなんで出来ないことをやろうとするの! さっさと引っこ抜いた野菜の苗を元に戻して! だいたい、なんで雑草以外をピンポイントで抜くの! もしかしてわざとやってるの!?」


 さっき会ったときはそうでもなかったんだけど、相変わらずサクラちゃんはモミジちゃんに怒られているな。そしてハッピートリガーのメンバーがそれをなだめている感じだ。


 モミジちゃんはストレスが溜まっていそうだな。それをサクラちゃんに怒ることで発散しているような気がする。


 逆にジュンさんやナタリーさん達アマゾネスの皆は大人しいもんだ。ただ、それはアマノガワがいるからだろう。昨日、アマノガワを連れてきたときに失神した子もいたからな。


 その後、男だと分かったらさらに数人が気を失った。いい意味で気を失ったのか、悪い意味で気を失ったのかは分からなかったが、今の状況を見るといい意味で気を失ったんだろう。


 そこまでか、と言いたくなるんだけど、こんな世界だとそういう憧れがさらに強くなるのかもしれないな。


 それとは別にアイアンボルトの男性陣はちょっと涙目だ。それぞれ狙ってた子がいるんだろうな。ジュンさんが言うには、女が綺麗な男を見るのは目の保養であって恋じゃないのよ、とか言ってたけど、本当かね。


「ごめん、待たせた?」


「いや、大丈夫だよ」


 マコトちゃんがやってきた。その後ろからじいさんとラファエルちゃん達もやってくる。じいさんの右手をラファエルちゃんが、左手をガブリエルちゃん、そして背中に抱き着いているのはウリエルちゃんだ。


 なぜか三人はじいさんになついた。じいさんの言葉を分かるようだしちょうどいいからそのままでいてもらってる。じいさんが病院に行ったら一緒について行く気かな?


 その方がいいかもしれないな。じいさんの言葉をすぐに伝えられるラファエルちゃん達がいたほうが、ほかの医者と連携も取りやすいだろう。


 それはそれとして、全員がそろったようだ。話し合いを始めよう。


「さて、それじゃみんな集まったみたいだし、これからのことを話そうか。長くなるかもしれないから楽にしてくれていいよ」


 皆がそれぞれ楽な格好になる。そして俺のほうを注目した。


 一応、この集まりは俺がリーダーらしいからな。司会進行は俺がやらないとダメだろう。


「えっと、まずはなにか言いたいことがある人から報告していこう。それを皆で考える方式にしたいと思う。誰かあるかな?」


「それじゃ私からいいかな? レンカのノートパソコンとスマホの解析が終わったからその報告をしたい」


「それは大事だね。それじゃお願いするよ」


 マコトちゃんはパソコンが得意だけど、引きこもりじゃないんだな。ものすごく普通に話している。いや、そもそもハッカーが引きこもりって言うのが偏見なのかもしれない。でも、映画でもそういう人が多い気がするんだけどな。


 それはともかく、マコトちゃんの話を聞くとこうだった。


 レンカのノートパソコンは武器の密輸に関しての情報が大半のようだ。もともとは武器の売り買いをしていたようだが、最近になって買い占めるようになったらしい。


 ゾンビが溢れることは分かっていたから武器を集めたのだろう。それにパンデミックでお金の価値がなくなるわけだしな。持っていても仕方ないと散財したと思う。


 そしてレンカのスマホ。使えなくなってしまっているが、データは吸い出せたようだ。


 なぜそんなことになったかは不明だが、どうやら俺に襲われている最中にどこかへ連絡したようだ。ただ、その番号から着信拒否にされているらしい。


「憶測でしかないんだけど、センジュが昨日言ってた、本当の黒幕って奴の番号だと思う。ピースメーカーにいた秘書が言ってたんだよね、レンカはシェルターに入れる資格があったとかなかったとか」


「そうだね、そんな話をしていたよ」


 あの秘書はコンサートホールに置いてきた。連れてきても仕方ないし、余計なことをした罰だ。何もするなと命令してある。彼女はずっとあの場所に居続けるだろう。


 あと、黒幕に関しては、ラファエルちゃん達がお父様と言っているらしい。もしかしてそのお父様のことを悪く言うと怒るかな、と思ったんだが、そんなことはなかった。むしろ、お父様なんて嫌い、と言うほどだ。どんな心境の変化があったかは知らないが、それならそれでありがたい。


 おっといかん、考えすぎた。マコトちゃんが話を続けてもいいか聞いてきたので、頷いて話を促した。


「これも憶測だけど、センジュに狙撃された後、レンカは黒幕に助けを求めたんじゃないかな? でも、それは拒否された。一度は通話していたから、その話が終わった後に着信拒否されたんだと思うよ。だから床に叩きつけて踏みつけたんだと思う」


「なるほど」


 状況はそれであっているんだろう。でも、なんで助けを拒否されたんだ?


 シェルターの場所を知っているのはミカエルかレンカだけらしい。適合者を連れて行けるのはその二人だけのはず。ミカエルに全幅の信頼を置いていたとしても、レンカを助けない理由が分からない。


 それに優秀な人間をシェルターで匿っているんだよな? レンカもその一員だったはず。なぜ助けなかったんだろう? 警察の人間と同じように見捨てられたんだろうか?


「どんな話をしていたかとかは分かるかな?」


「さすがに録音されていないことは無理だね。ホテルの監視カメラとかなら可能性はあるけど、音声録音が可能なカメラかどうか分からないし、あってもレンカの声だけだと思う」


「それじゃあまり意味がないか」


 それにホテルの電源は落としてない。カメラの録画がどれくらい持つかよく分からないが、すでに上書きとかされて消えてしまった可能性もありそうだ。


「ねえ、ちなみにその着信拒否をされている番号から、場所って分からないかしら?」


 ジュンさんがそんなことを言い出した。


 なるほど。昨日、黒幕がいるシェルターの話をした。もちろん場所が分からない話もしている。その番号から場所を割り出そうってことなのだろう。


「さすがにスマホのGPSを起動はしていないだろうから、電話の基地局か何かをハッキングして位置情報を把握すれば可能かな? と言っても大体の場所しか分からないと思うけど」


「いや、それでも重要だと思う。念のため場所の割り出しをしておいてもらえるかな? そうだ、アマノガワはミカエルが持っているスマホへの連絡が出来るんだよな? そのスマホの場所も調べてもらおう」


「はい、いいですよ。あとでマコトさんに番号を教えますね」


「了解。でも、タダじゃなー?」


 マコトちゃんがチラチラとこっちを見ている。なにか欲しいものがあるのだろう。昨日も許しを請うために色々食べ物を持ってきたんだけどな。


「なにが欲しいの?」


「そろそろスペックの高いパソコンが欲しいんだよね。出来れば最高峰のやつ」


「えっと、パソコンショップとかに連れて行けばいいのかな? 俺じゃ分からないからね」


「いつかは知らないけど、ショッピングモールへ行くんだよね? その時に一緒に行きたいかな。あそこに直売店があったんだよね。結構いい物がそろっているからよく行ってたんだ」


 ショッピングモールか。たしか初期の防衛に失敗してゾンビだらけになっているはずだ。いきなり連れて行くのは危険な感じもするけど、おやっさんの装甲車みたいなキャンピングカーなら大丈夫かな。


「ショッピングモールへ行くのに、おやっさん達の車を借りてもいいかな?」


「おう、もちろんだ。俺が運転してやるから安心しな!」


 何を安心すればいいのか分からないが、運転せずに乗っているだけって言うのも悪くないな。まだ余裕はあるけど、物資はいくらあってもいいんだから、今のうちに補充しておくか。


 よし、今度はショッピングモールへ行くかな。


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