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スローライフ・オブ・ザ・デッド  作者: ぺんぎん


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プレゼント

2019.07.21 3話投稿(1/3)

 

 朝、俺の部屋で三人の白い少女たちが朝ごはんを食べている。


 ご飯にお味噌汁、そして缶詰に入っていたサンマだ。世界がこうなる前の状態であればそうでもないのだが、今ならごちそうと言ってもいいかもしれない。


 最初、少女たちが何も言わずに食べようとしたら、エルちゃんが「いただきます、は?」と言って凄んだ。そうしたら、エルちゃんとご飯を何度も交互にみてから、いただきます、とちゃんと言えた。


 あと、箸の持ち方はこう、とか、よく噛んで食べる、とか、エルちゃんは結構しつけに厳しい。施設にいたころの名残なのだろうか。


 そして、エルちゃんのしつけに少女たちは普通に従っている。この子たちがどういう子たちなのかは分からないが、素直ないい子なのだろう。


 そもそも、あの動画に出ていてた博士とやらに命令されていただけのようだし、人間に敵対しているとか、そういうのはないのかもしれない。それに人間をゾンビにすることもよく分かっていない気もする。


 昨日の夜、おやっさんとじいさん、それにジュンさんと俺の四人でこの子たちをどうするか話し合った。


 話し合いにでた人の選考基準は大人かどうか、かな。年齢は聞けないが、ジュンさんは俺よりもちょっと年上だろう。それに男だけの会議じゃ結論が偏るかもしれない。色々なことを冷静に判断できる気がしたから意見を聞くために参加してもらった。さすがに年齢が高いからとは言ってない。


 結果的に何も決まらなかったな。全員が一致して出した答えは、殺したりはしない、ということだけだ。


 危険ではあるが、見た限り大人の言うことを聞くし、エルちゃんが話を聞いた限りではもう誰かをゾンビにするつもりはないそうだ。それはお姉さん、つまりミカエルからやめるように言われているかららしい。自分の身に危険が及ぶ場合はその限りではないが、それ以外では噛むのもひっかくのも禁止させられているそうだ。


 そのミカエルのことについては何も話してくれない。単にお仕事中としか言ってくれないらしい。どうやら、ミカエルに留守番しているように言われたそうだが、この町内でお菓子を配っているという話を聞いてここまで抜け出してきたそうだ。


 後で怒られないか聞いてみたら、「黙っていれば大丈夫」と、なぜか自信満々に言った。それに自分たちもお仕事中、と言っている。俺から見たら遊んでいただけのようだが、彼女たちの中では違うのだろうか。


 仕事内容も教えてくれないし、アイスを食べて眠くなったのか、昨日は少し話をした後、そのまま眠ったのでそれ以降は何も聞いていない。朝になって目を覚ましたらお腹すいたと言い出したので、エルちゃんが朝食を作り、今に至る感じだ。


 結局どうするかは決まっていない。だが、ミカエルがこれを見たらどう思うか――それだけは危険だとじいさんが言っていた。


 ミカエルから見たら、俺達がこの子達をさらったように思えるよな。


 ミカエルは適合者を探しているが人間に敵対しているような感じではなかったとじいさんは言った。それにこの子たちを大事にしているようにも見えたらしい。


 つまり、この状態は危険。それにこの子達、今日もマコトちゃんとゲームすると言っている。ミカエルがここにきても、この子たちがちゃんと事情を話してくれるなら問題ないんだけど、ちょっとだけ心配だ。


「ごちそうさまでした」


「はい、おそまつさまでした」


 少女達がごちそうさまと言うと、エルちゃんがそれに応える。米を一粒も残さずにちゃんと食べたようだ。それに笑顔で美味しかったとエルちゃんに言っている。


 エルちゃんも満更でもない顔をしているようだ。そしてドヤ顔で俺のほうを見る。それは何かのアピールなのかな?


 この後、この子達はゲームをするのだろう。どうしたものかと考えていたが、特に何も思いつかなかった。とりあえず、ミカエルにちゃんと事情を説明してもらえるようにご機嫌を取ろう。


「ええと、君達にプレゼントがあるんだ」


 クローゼットのほうへ近づいて、そこから取り出した。


 まず、おかっぱの子、ラファエルに料理ができるおもちゃを渡した。箱に色々入っているデラックスセット商品、らしい。


 残念ながら食べられるようなものは作れないが、小さなお菓子のアクセサリー的な物を作れるらしい。あくまでもおもちゃだが、本格的な料理の勉強もできる、と書かれているので持ってきた。


 子供だましとか思われたら困るけど、どうだろう? そもそもこれくらいの子に何かをあげたことがないからよく分からん……というか、俺って誰かに何かをあげたことはあったっけ……? ああ、上司にそばをあげたな。もらいものだったけど。


 ラファエルちゃんは、さっきから微動だにしない。だが、急におもちゃの入った箱を抱きしめた。


「ありがとう、センジュ。これは大事にする」


「ああ、うん、それでよかったかな? あまりそういうのに詳しくなくて」


「これがいい」


 どうやらかなり喜んでくれているようだ。


「ねーねー、ラファエルだけずるい。私にはないの?」


 今度はポニーテールのガブリエルちゃんだ。


「君は花屋をやりたいって言ってたよね? 花を売るお店のおもちゃなんだけど、これでいいかな? あと、造花だけど、小さいのをいくつか持ってきた」


 花屋セットのおもちゃと小さな花の造花を結構な数だけ渡す。


「おおおぉぉおぉお!」


 ガブリエルちゃんが両手をあげて小さな雄たけびをあげた。喜んでるんだよな? まあ小さな造花を掲げているから喜んでいると思う。


「センジュ、私はあんなおもちゃに騙されない。でも、私の分もあるよね? 出して」


 最後は引きこもり主義のウリエルちゃんか。一番迷ったけど、これでいいと思う。


「子供用のタブレットなんだけど、これでいいかな? とある動画サイトを見放題だって。動物の動画が人気みたいだけど」


「……センジュのせいで私の引きこもりが加速する。だが、それがいい」


「……気に入ってくれたなら何よりだよ。なにかあれば、マコトちゃんに改造してもらうといいよ。そういうの得意なはずだから」


 救急車のカーナビがすごいことになってたからな。店の名前じゃなくて、欲しいものを入力するとそこまでの道順が表示されるってどういう仕組みなんだろう?


 さて、とりあえず、三人の機嫌は良くなったと思う。マコトちゃんと遊ぶ前に色々聞いておくか。


「三人ともちょっといいかな? 確認しておきたいことがあるんだけど、これからどうするんだい? ずっとここに住むわけじゃないよね?」


 三人が顔を見合わせてから、ガブリエルちゃんが手をあげた。


「ここを私たちの拠点とする」


「何言ってんの、君は」


「実は私たちは秘密のお仕事中。ここを拠点にするつもり。ご飯も美味しいしゲームもある。それに何と言ってもアイスがある……!」


 至れり尽くせりな感じなのはわかるけど。ミカエルって子にちゃんと説明してくれるかな? してくれよ、頼むから。


 それはいいとしてお仕事、か。エルちゃんが昨日聞いても答えてはくれなかったようだが、もう一度聞いてみるか。


「ええと、そのお仕事ってなに?」


「さっきも言ったけど、それは秘密」


 三人は人差し指を口に当てて、シーって言いだした。ミカエルって子に言ってはいけないと言われているんだろうな。


「どうだろう? それを教えてくれたら手伝ってあげるよ? もちろん、ミカエルって子には君達から聞いたなんて言わない。どうかな?」


 ラファエルちゃんが首を横に振った。


「大丈夫。もうすでに大体の仕事は終わったから。あとはミカエル姉ちゃんがここに私たちを探しに来るのを待つだけ。たぶん、おとがめなし」


「仕事が終わった? おとがめなし?」


「うん、センジュを見て分かった。センジュは適合者だよね? このマンションで私が噛んだ覚えがあるし」


 ミカエルと同じように適合者を探すことが仕事だったのか。そして俺が適合者であることを分かっている、と。つまり、俺をミカエルって子に渡すって意味なんだろうな。


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