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黎明院綺羅星の究極ニートライフ!  作者: おじぃ


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16/21

人生のすべてを失った僕

「うあああ!! ああああああ!!」


 と、夜の砂浜で乾いた潮風に刺されながら叫んでいたら誰かにマッポーを呼ばれ、駆け付けた彼奴ら3体に「なんだまたアンタか。こんなところで叫んでないで早く職を見つけなさい」と侮蔑された12月28日。明日はとうとうコミケ当日。僕が叫んでいた理由はこれにある。


 しかしなんて想像力に欠ける連中だ。近所迷惑にならないようにわざわざ海まで出て叫んだというのにその厚い配慮を汲まず頭ごなしに注意するなど言語道断。人間たるもの、常に広い視野で物事を捉えなければならない。


 というか花火大会もバーベキューやってる連中もいない静かな夜の海辺に来るなんて、通報した輩はなんて悪趣味だ。


 え? そういうお前はどうなんだって?


 僕は叫ぶためにここへ来ただけで、真冬の砂浜でお月見や天体観測なんてする趣味はない。きっと通報者にもそんな趣味はなく、差し詰めサザンビーチと呼ばれる世間一般にはロマンチックなこの場所でイチャコラしに来た腐れリア充だろう。


 そ・ん・な・こ・と・よ・り・だ。


 明日からコミケだというのに僕の全財産は5百円。これじゃ交通費にもならない。ボブスレーぱんつの名で『コミケで買い物がしたいぱんつ!!』とクラウドファンディングを試みたものの1円たりとも寄付がなかった。


 世間は冷たい。僕はこれまで山奥や離島に住む連中に代わって買い物して送付してやってきたというのにカネが無くなったと伝えたら縁が切れた。


「貴様らが!! 貴様らが僕に寄付をすれば買い物に行けるのに!! なぜだ!! どうしてだ!! 会場から遠く離れた地に居住する貴様らにとって僕を利用するメリットは多々あるだろう!? なのにどうして!! どうしてこうも短絡的に縁を切るのだ!! 他のネットユーザーに乗り換えるんだ!! ああああああ!!」


「いいから早く帰りなさい」


 パトカーに乗せられ強制送還された僕はPCの画面さえ点いていない暗い部屋のベッドで寝そべり、只々孤独感に耽っていた。


 人とは存外に冷たい生き物だ。きっと僕が好きなシナリオライターや絵描きだって、心温まる作品を発表しておきながら当人は冷酷に違いない。純粋な気持ちで作品を楽しむ僕らを陰ではキモいとかウザいとか言って蔑んでいるんだ。そんな連中の作品などもう要らん。とはいえこれまで手にしてきた作品に罪はないから破いて捨てるとか、そういう過激なことはしないでおこう。


 さて、生きる意味を失った僕は明日からどう過ごす? もうすることがないのだから、このまま餓死してしまおう。よし決めた、そうしよう。これが最も自然な成り行きだ。


 この瞬間から、人生のすべてを失った僕の、ただ死を待つのみの時間が始まった。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 毎度更新遅くなりまして恐縮です。


 綺羅星が救われる日は来るのか……!?

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