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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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88P

とりあえずアースのお陰でなんとかバレずにすんだ。そしてアースがやったことを野乃野足軽自身が使えれば、わざわざ3階から飛び降りる必要もないのでは? ってことでそのやり方を教えてもらってる。


(なので、脳の意識の表層をぼやけさせるだけでいいのです)


 とかなんとかアースはいってる。けどなかなかに抽象的でわかんない野乃野足軽である。なにせ脳と言っても海馬とかなんやら色々とあるじゃないか。そこまで脳のことに詳しくないからある意味でその抽象的な説明のほうがいいのかもだけど……自分の脳で試すとなると、なかなかに勇気がいるな――と野乃野足軽は思ってる。とりあえずちょっとそこらの相手で試してみたい気はする。


「とりあえず脳の前とか後ろとか真ん中……とかあるじゃん」


(全体でいいですよ。そして意識は自分自身を気にしないとでも思って、相手の脳を覆ってみてください)


「そんないい加減でいいのか?」


 さっきよりも随分といい加減な説明になったところを見るにどうやらさっきの抽象的な説明もアースにとっては色々と丁寧に説明してくれたみたいだ。それを野乃野足軽は理解できない――とみるや、いい加減になったという感じだ。


(あっ、こいつどうせなにもわかんないな)


 って感じに思ったんだろう。何も間違ってないが野乃野足軽は軽く馬鹿にされてる。


(たしかに細かく制御して、ピンポイントに脳の一部分だけに力を使えれば効果的です。力の節約にもなります。ですが……無理でしょう?)


 完全に馬鹿にされてた。けどそれに反論するなんてできない。とりあえず脳を覆って野乃野足軽を意識させないっだけならそこまで怖くない。とりあえず自分の脳を覆ってみる野乃野足軽だ。けど――


「あれ? これって自分の脳に、自分自身を意識させないようにしたらどうなるんだ?」


(さあ? それはわかりませんね)


「自分自身がわからなくなったりしないよな?」


(これ以上、アホになられても困りますね)


「おい」


 そんなやり取りをして、怖くなったから野乃野足軽は自分自身にこの力を使うのはやめた。なので今日は普通に扉から出て、適当に廊下に佇む。まずは端っこにいるようにした。そして何人かで脳を覆うって事を試した。


 別にこれ自体は簡単だ。そもそもが体全体を覆えば、大体脳も入ってる。けど体全体を廊下にいる奴ら全員に使う……ってのは野乃野足軽の力の総量的に無理がある。だから効率よく複数人に使うとなると、やっぱり頭だけ……とかに意識した方がいい。


 けどこまま端にいるだけでは本当に意識外にいるのかわかることはない。だから野乃野足軽は意を決した。何をしたのかというと、野乃野足軽はまさに邪魔であろう廊下の中央に佇んだ。しかもちょうど人が通りかかってくるときに……だ。


(更に、絶対に俺は避けない。なるべく温厚そうなやつに狙いを定めてるし、大丈夫な筈だ)


 そんな事を思ってた。本当に野乃野足軽の事を意識してないか……これで分かるはずである。普通なら、目の前にいる人物を避けるはず……それか避けなくても、ぶつかりそうなら声くらいかけるはずだ。


 けどそれがなくて、目の前にいるのにぶつかったりしたら? それこそ曲がり角とかなら、そのままぶつかるなんてこともあるだろう。けどここは学校の廊下で直線だ。階段付近でもない。曲がり角でもない。見通しは良好だ。見えない……なんてことはない。


(めっちゃドキドキするな……)


 当たり屋みたいなことをしようとしてるからだろうか、野乃野足軽の心臓は早鐘を打ってる。どんどんと近づいてくる二人組の男子。彼らはおしゃべりしてるが、チラチラと前は見てる。そしてそのまま……


「うお!?」


「おいおい何やってんだよ? ごめんな」


「いえ、こちらこそ」


 とかなんとかやり取りを交わした野乃野足軽。そして二人の内ぶつかったほうが「あれー?」とかなんとか言ってるのを見て野乃野足軽は僅かに口角を上げる。


「今のは成功だよな?」


 野乃野足軽は誰にも聞き取れないほどの声量でそうつぶやいた。そしてそれに答えるのは野乃野足軽の中にいるアースだ。


(そうですね)


 と彼女は言ってくれる。

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