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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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葬夏を掬うpart4

 世界はゆがんでる。そう、野々野足軽は思ってる。力が……超能力が野々野足軽だけならそんなに変化はなかったのかもしれない。ただ静かに一人で楽しむだけでよかったからだ。別に野々野足軽事態は目立ちたいとか、その超能力で何か特別な事をやりたい! なんて思ってなかった。 

 ただ少しの優越感と自分だけが享受できる便利さ。それだけで野々野足軽は満足だった。けど超能力は世界に拡散された。


(本当はすっと前から世界は歪だったのかもしれない)


 そんな事も思ってしまう。だって野々野足軽は自分のせいだなんておもいたくない。自分のせいで不幸な子供たちが現れてるんだって……そんなのはただただ心情的にいやじゃないか。

 それならずっとこの世界はこんなにひどかったんだって……ただそれが野々野足軽の周りでは見えなかっただけで、こんなのはどこにでもある不幸でしかないって思いたい。


「イライラするな……ああ! イライラする!!」


 野々野足軽は空中から風を起こす。噴き出した風は徐々に強さをましていき、他に影響が出ないように大きく迂回させて回転させて行く。すると、大きなサイクロンのようになってこの埠頭全体を包み込む。


「なななな、なんだぁ!?」

「うわああああああああああああああ!!」


 そんな悪い奴らの声がこだまする。英語の声も聞こえる。でも耳を傾けはしない。野々野足軽は事前に子供たちが入ってるコンテナは確保してた。そのコンテナを包む風だけは優しい。この荒れ狂う暴風のなかでも、そのコンテナだけは影響をうけてない。あとは無関係な人たちだ。

 まあそもそもがそのコンテナとそして悪者たちだけを選別して野々野足軽は吹き荒れる風でさらってた。不可思議な現象だ。自然現象じゃそんな選別みたいな事はできない。

 でも野々野足軽だから出来る。流石に全員まとめて息の根を止める……なんてことはしない。出来ないわけじゃないだろうが、流石に人殺しには忌避感があるからだ。簡単にプチっとできるし、このままサイクロンのなかにとどめておけばそのうち奴らは悪者同士でぶつかってそれこそ破裂するように絶命するだろう。


 でもそうはならないようにしてる。


(怖いよ……)(助けて……)


 そんな思いが、思念が伝わってくる。確かにこいつらは悪だけど、このままあの子たちをコンテナの中にいさせたままってのもよくないだろう。だから、とりあえず悪者共は全員海に放り投げて、子供たちの入ったコンテナごと移動することにした。


 これで一件落着? いや、そんなことはない。むしろここからの方が大変だ。


「はぁー」


 だからこそ、野々野足軽はため息をついてしまう。

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