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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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葬夏を掬うpart2

 車は進む。その子にとって良かったのは車の中はとても快適だったことだ。押入れの中はとても暑かった。でもその車の後ろの座席を全部取り払われたようなスペースはクッション性なんてなくて車のタイヤの振動が直に伝わってきてたけど、それでも涼しさは格別だった。

 けどその子はすみっこで体育座りして泣いてた。その手には二つの人形が握られてる。一つは……手に取ることができなかった。きっとあのまま家の前に野ざらしにされてるだろう。わざわざ自分を捨てた両親が人形を回収するとも思えない。

 どうにかして、なんとか人形を動かそうと頑張ったけど、さすがに車が家から離れていくと、そのつながりがなくなっていくのが分かった。少しは家から離れたかもしれないが……きっと残った人形は家から少し離れたところで倒れてることだろう。


「うっう……」


 本当の家族を失った悲しみ……そして思い出の支えだった人形の家族も一つ欠けてしまった。それも自分である人形がなくなった。それはその子にとって自分自身はどこにも必要とされない存在なんだと……いなくなってしまえばいいんだと……世界に言われてるようだった。


 その子の心はもう折れていた。ただどこにむかってるかもわからない車に乗せられてすべてをあきらめて泣くことしかできない。泣きわめくわけじゃなく、ただ静かに声を殺して泣いてるんだ。


「ほら」


 何かか飛んできた。それは水とパンだ。別に同情とかじゃないのかもしれない。でも、その水の入ったペットボトルと菓子パンは久しぶりのまともな食糧だった……それ以降は何もいってこない。そもそも運転席と助手席に乗ってる二人は自分たちだけでしゃべってて、後ろに乗ってるその子に意識を向けてない。それでもその子は警戒してた。

 でもお腹からグーと鳴る。そうなると、もう我慢できなかった。飛びつくように物をとって、キャップを開けて水を飲む。その水はとても冷たかった。それだけで涙がさらに出てくるようだった。でもいきなり全部飲むなんてできない。

 だから今度は菓子パンを開けて小さな口でかぶりつく。おいしかった。また涙が勢いを増したみたいだった。食事を終えるとその子は自然と眠りについた。おなかがいっぱいになったわけじゃないだろうが、まともなものを食べたから血糖値が上がったのかもしれない。


 結局その子が食べたパンは半分くらいだ。それを助手席の男は横眼だけでみてた。いつの間にか車は港にきてた。そこそこの都市にいたわけだから、数時間はきっと経ってるだろう。ようやく起きたその子は初めて見る大きな船よりも自分がこれらかどうなるのか? という不安が襲ってきてた。

 それに車の周囲は大きな箱がいっぱいで、なにやら怪しい雰囲気がいっぱいだった。


「ほら、降りろ」


 そういって背後のドアが開かれる。


 ちょっとした抵抗を心みるが、簡単にその子は男に引っ張られて車の外へ……するとなんだか怪しいスーツ姿の男たちが数人。そして助手席にのってた男がなにやらわからない言語ではなしてた。きっと英語だろう。


 学なんてなさそうなのに英語ができる奴だったようだ。何をやってるのかはわかんないが、マフィアみたいなやつとその男の間で握手が交わされる。それと共に、マフィアみたいなやつが一人、その子に近づいてきた。


 思わずここまで連れてきた運転手の男の足に縋りつくが……


「おら、さっさといけ」


 ――とその子をその外国人に押し付けるように投げだした。ポイッとされたその子は長帽子をかぶったマフィアの一人につかまった。そしてそいつに連れられて一つのコンテナの前に……電子ロックをあけると、そのコンテナの扉があいた。そして衝撃を受けた。

 だってそのコンテナの中には、複数の子供の姿があったからだ。

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