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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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残りの夏Part4

 野々野足軽はドキドキとしてた。なぜかというと……


(今、良い雰囲気じゃないか?)


 この夏の後半はほぼあえなかった。それはしょうがない。だって二人はまだ学生で、家族に振り回されるのは当たり前だからだ。別に嫌だったわけじゃない。でもやっぱり人生初めての彼女との甘酸っぱい夏休みとか、誰だって想像するものだろう。

 

 女の子らしい平賀式部の部屋。外はまだまだ暑いし、タワマンだけあって日差しがヤバいからこそその日差しをすこしでも和らげるためのカーテンがガンガンにかかってるエアコンの風で揺れてる。

 横長のテーブルの対面……ではなく、隣に座ってる平賀式部とはさっきからちょくちょく腕がふれあってる。


(これってドキドキしてるのは俺だけなのか?)


 ちらっと平賀式部を見やる野々野足軽。タヒチの写真を見るために二人はとても近い。色々と近づいてるから当たってるし……野々野足軽の鼻をくすぐるのは平賀式部のいい匂いだ。

 

 この部屋は全く暑くはない。エアコンをガンガンと効かせて、むしろ涼しいくらいだ。部屋に入った時実はちょっと「寒」とかおもったくらいである。でも今は……


(熱い……体の芯から熱い)


 そんな風に野々野足軽は思ってた。心臓の音もバクバグとしてる。楽しそうにタヒチの思い出を話してる平賀式部の横顔はとても綺麗で……見惚れてしまう。ふと、二人の視線がぶつかった。言葉が途切れる。

 エアコンの音だけが聞こえてる。見つめ合う二人……これって、この流れって……


(何度も漫画で見たやつだ!!)


 そんな風に野々野足軽は思う。ここで間違う事はできないし、目をそらすなんてもっての他というのもわかる。いや流石に目をそらすなんてできない。それをさせない魔力? 魅力? が野々野足軽の目を平賀式部に釘付けにしてる。

 

 どちらかが……いやふたりともが喉を鳴らしたのかもしれない。野々野足軽は意を決して手を平賀式部の顔に伸ばした。触れそうで触れない……そんな位置まできた。でもためらう。

 そこで平賀式部がその手に自分の手を添えて、ほっぺへと持っていってくれた。柔らかく温かなほっぺの感触に野々野足軽の理性は限界を突破した。気持ちよさそうに野々野足軽の手に擦り寄る平賀式部が愛おしい。


 野々野足軽は顔を近づけていく。そして平賀式部はその目を閉じて……そのまま……


「きゃんきゃん!」


 その時、ちっこい犬が平賀式部の部屋に侵入してきて二人の雰囲気をぶっ壊した。その瞬間、真っ昼間に空に稲妻が走ったのは気象関係者に震撼をもたらしたとかなんとか……


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