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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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残りの夏part1

 ガタンゴトンガタンゴトン――カンカンカンカンカンカン!


 そんな踏切の音が響いてる。地面から沸き立つような陽炎が周囲をゆがめるように見えてる中、野々野足軽は佇んでた。小さなバックをもって、向かうべき場所がある。


「暑っ……」


 八月も終わりとなると、そろそろ夏も暦的には終わりだろうけどそんなことをここ数年、いや生まれてこの方、夏の終わりが八月なんて感じたことはなかった。寧ろ九月もまだまだ夏である。夏休みはもう終わりだけど、暑さはまだまだ続く。

 そう思うと憂鬱だと野々野足軽は思った。過ぎ去っていく10両編成くらいの電車。ついこの間まで田舎に……いや異世界にいた野々野足軽にとって、これだけでなんかとても感慨深いものがある。なにせ野々野足軽は異世界で大きな冒険をしたのだ。それは一年とかではさすがになかったが、半年くらいは実は経ってた。

 でもこっちの世界での時間はちょっとしか経ってなかった。きっと時間の流れ……が違ったんだろう。向こうの鬼たちの世界とこちらの野々野足軽たちの世界。だからかなり濃厚な日々を異世界で過ごしてたわけで……懐かしく思うのも仕方ない。

 においとかも違う。それに食べ物だってそう。ついついこっちの食べ物がおいしく感じられて、田舎から帰ってくる間中、パーキングに止まるたびにそこで食べ物を買っていた。それになぜか親がかなり優しかった。きっと事情をしってたからだろう。大変なことがあったから、ねぎらってくれてたと思われる。だっていつもなら買ってくれないからだ。

 それに事態の解決には足軽の尽力があったのも事実。だからきっとなにも文句も言わずに自由にさせてくれたんだろう。でもさすがにもう夏休みも短くとなると、お母さんに「あんた宿題は終わってるの?」

 とか言われた。

 そんなのは自分が一番まずいとわかってる野々野足軽である。まだあと数日あるから――とか反論した。それにまったく手を付けてないわけでもないのだ。大丈夫大丈夫まだ焦るときじゃない。それに高校生の夏休み。

 それは青春の代名詞。なので今、足軽は青春をしようと向かってるのだ。


ピンポーン! そんな風な音が目の前の板から聞こえる。自動ドアの手前にあるモニターに表示された数字とアルファベット。それの番号を押して、特定の部屋へとチャイムを鳴らした。ドキドキとする足軽。ここは高級なマンション……いや駅直結のタワマンといわれるエントランスだ。何回か来たことがある野々野足軽だが、やはり緊張する。

 それはこの場所の事もそうだけど、一番はここにいる人物に会うということがそうさせる。


『はい、どうぞ。上がってきてください』


 きれいな声。その声が足軽に許可を出した。自動ドアが開いて、足軽を中へと招いてくれる。中に踏み入れて、エレベーターに乗ろうとした。その時、何やら深い帽子にサングラス、さらにはマスクをして夏なのにコートを着てる人物がそのエレベーターからでてきた。

 そそくさとその人物は足軽の横を通って足早にエントランスへと向かった。あんな怪しい奴がタワマンに出入りできるのか? と思ったらセキュリティ的にどうなの? と思うが、タワマンには芸能人とかもいるとは聞く。

 だからそんな人なんだろうっておもって足軽はエレベーターに乗って上階にむかった。そして再びドアの前でチャイムを押すと、涼やかな夏らしいワンピース姿の平賀式部が出迎えてくれた。今日はここで青春イベント……夏休みの宿題をやろう! ということなのだ。まさに夏休みの一大イベントといえるだろう。

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