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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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エピローグ

 パンパン――足軽と小頭、それに今はおばあちゃんの姿のままのおばあちゃんと共に、一緒に手を鳴らして合わせた。

 この地の鎮魂に黙祷をささげる。ここはかつて呪術師たちの村があった場所だ。今や廃村になって誰も住んでない場所。でも……ここには色々な怨念があったんだろう。過去を見たことでおばあちゃんはここに地下があるとわかってる。

 だからそこも確かめようと思ったんだけど……先の戦い。いや昨夜の戦いの影響だろう。どうやら地下は崩壊してしまったようだ。でもそれも仕方ないといえる。だって強大になった猩々が散々この山で暴れまわってた。この村は山の中腹くらいだが、山に座れそうな猩々が暴れまわって山を大きく昨夜揺らしていた。もちろん猩々だけのせいじゃないだろう。鬼たちだって最後はかなり暴れてた。

 でも大きさでいったら猩々が一番の原因だろう。まあだけど中に進めないわけじゃなかっただろう。そう足軽だ。足軽も家族には超能力者だとばれてしまった。だからその力を使えば、埋もれてしまった地下に進むくらいはできそうだ。それに……足軽の力はおばあちゃんたちには未知数なのだ。

 一端は見た。昨夜、足軽はあの巨大な猩々を軽々と拘束してた。でも最後に倒した……いや浄化したのは鬼男だったし、実際どのくらいの力があるのか? はおばあちゃんたちにはよくわかってない。


「もう、ここに来ることはないでしょうね」

「ねえこれでいいの?」


 おばあちゃんのそんな言葉と小頭の行動。小頭はこの村の崩壊しつつある建物の壁に紙で折った人型みたいなのを画鋲でくっつけてた。


「ああ、それでいい」


 そういう足軽は手を向ける。すると何かと言われると難しいんだけど、小頭は何か……この場所が気持ちよくなった? ような気がした。雰囲気が良くなったというか? そんな感じだ。


「これになんの意味があるの?」

「ここはおばあちゃんの大切な場所だろ? だから、静かにしておきたいと思ったんだよ」

「……ありがとう足軽」


 きっと足軽は何かをやったんだろう。それが何かは言わないが、きっともうここの怨念とかそんな負の感情が暴走したりすることはないんだろうって思えた。ずっと静かに、いつかこの山に覆いつくされるまで静かになったんだとおばあちゃんは思うことにした。

 三人は用事を済ませたから村の外に歩む。そしてその時、村の中と外を隔てる朽ちた門……そこを出る寸前に、どこかから獣のような叫びが聞こえた。三人は振り返る。でも……そこに何かがいる訳じゃなかった。

 けど森の奥からガササ――と何かが動く音は聞こえる。でも姿は見せない。その時何かが三人の手前に飛んできた。なにやら石ころというか? 鉱石というか? ちょっときれいな岩というか? そんなのだった。餞別だろうか? 足軽がそれを拾い上げる。まあせっかくだし、とりあえずもらっておくことにした。


 それを掲げて、足軽は村に背中を向けた。そして自転車で三人はその場を離れた。


「うおおおおおおおお! 足軽、小頭ああああああ! また来るんだぞおおおおお!!」


 もう帰るとなったとき、おじいちゃんはその顔を涙で溢れさせてた。いつもはもっとドライなんだけど、今回はいろいろとあったからだろう。感極まってる。そんなおじいちゃんと何とか離れて、足軽と小頭は車に乗り込む。

 すでにおばあちゃんとは別れをすましてある。でも何やらおばあちゃんはお父さんやお母さんと話し込んでた。それからお父さんたちも車に乗り込んでエンジンをかける。ゆっくりと走り出す車。見送るおじいちゃんとおばあちゃんに小頭は手を振ってる。さすがに高校生にもなるとそういうのはちょっと恥ずかしい足軽だ。

 だけど、見えなくなるまで二人に視線は向けてた。そうして、この夏の冒険は終わりを告げた。

第二章はここまでです。閑話を少し挟もうかなって思ってます。それから三章にいきます!

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