第六十六話Part4
更新しました。
終わりが見えるようだった。でもそれはどう考えもハッピーエンドじゃない。大団円じゃない。このまま鬼たちがやられてしまったら、この大きな猩々はこの街を破壊しつくして、さらにはその外にまで出るのではないだろうか? だってこの猩々を突き動かしてるのは憎しみだ。
鬼を殺して、幾代たちを殺して……それでこの大きな猩々は満足するのだろうか? ここまで大きくなる程の憎しみがその身にたぎっても迸ってるのだとしたら、きっとこの街すべてを破壊したとして、収まるものじゃないんじゃないか? この町の外は実際よくわかんない幾代たちだが、この猩々は既に人間に憎しみを募らせてると思って違いないだろう。
そうなると……これが町の外にまでいったら、この日本という国その物が終わってしまう可能性だってある。
(すべてが終わる……最悪の形で……)
伸ばした手に、意味なんてない。今のただの無力な一人間となってる幾代には、おばあちゃんには何もできない。自分ではどうしようもなくて、誰にもどうしようもできない状況。そんな中、人がすがれるものはこれしかなかった。
「お願い。誰か……助けて」
奇跡にすがる。無力な人にはそれしかなかった。どうにかこうにか頑張ってきた。出来る事を鬼たちも幾代も小頭もしてきた。けど……それらも暴力という一点で猩々は粉砕しようとしてる。そしてそれに抗う力が、ここの誰にももうないのだ。まさか鬼たちが負けるとは思わなかった。
二人は強いから、底なしに強かったからやれるだろうって……彼らにだけ頼るのはやりたくなかったが、それでも最後はきっと……大丈夫。そう思ってた。でもそれは甘えだったのかもしれないと幾代は思ってしまう。
これが罰なら、受け入れるしかない。けど、それは他に被害を拡大させていい事じゃない。だからあとは奇跡を信じるしかない。
ズドン!! と山がへこんだかもしれないくらいの衝撃が走る。たたきつけられた猩々の腕。あまりの勢いと衝撃にどうにかしようとしてた幾代は、その衝撃だけで吹き飛ばされる。
ゴロゴロと転がった幾代の体には無数の傷がついてた。流れでてる赤い血が、痛々しく小麦色の肌を汚してる。
「あぁ……つっ」
たたきつけられた猩々の腕。これだけの衝撃だ。きっともう鬼たちは……そんな事を思ってた時、こんな声が幾代の耳には届いた。
『酷いな。誰かなんて……俺がいるじゃん』
そんな声と共に、猩々の体には光の縄が巻き付いていた。




