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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第六十五話part5

最期の部分を修正しました。

「さあ、最後の仕上げだ」


 4メートルを超える巨体と筋肉に覆われた体。浅黒く変色した肌に赤と黒が混ざった長い髪はとげとげとしてた。そしてその額には二本の反った角が生えてる。領主は人を超えた存在になった。


「この力を完璧なものにする! ぬん!!」


 そういうとこの建物から領主は一側で飛び出した。床を蹴った衝撃でこの大きな建物の至る所が崩れたりしてるが、そんなのはもう領主は興味なんてない。寧ろ満足するだろう。その力に。天井とかも容赦なくブチ破ったわけだけど、領主はその行いを悪い……なんて微塵も思ってない。寧ろ「素晴らしい」と思ってる。

 あふれ出る力によって高揚感に包まれてる。そして何回かジャンプして一番厚い雲が出来上がってる真下。あのサルがいた場所に降り立つ。そこには小さくなってしまったサルがいた。いや、それは違うかもしれない。

 だって奴は……サルはもうサルっぽくない。その毛は抜け落ちて、人の腕のようにつるつるで、素裸見える。まるで人になってしまったかのよう……でも違う部分もある。それは胸……いや領主からは背中側しか見えてないが心臓があるであろう所に大きな赤いヒビがあった。

 普通の人ではないのは確か。それに今の領主は鼻もよくなってる。人と違うにおいをこの目の前の何かは出してる。


「すべてを奪われて人になったか。自身が憎む人に……はははははははははははは!」


 そう笑って領主は人になってしまってるサルの人物の頭を無造作につかんだ。一応まだ潰さないように注意はしてる。でも……「あが……ああああああ!?」――という声が漏れるし、なんかミシミシといってる。痛いのかもしれない。

 でもこれ以上力を弱めるなんてできないから鬼となった領主は気にしないことにした。どうせすぐに終わる命だ。気にする必要もないだろう。ただ最後に言葉をかけてあげようと思っただけだ。

 それはもちろん感謝……とかじゃない。なにせこいつのせいでさんざん迷惑をかけられたのだ。だから最後はこいつに思いっきりの罵詈雑言を浴びせて殺す……そう決めていた。


「哀れ哀れ、お前は何も守れなかった。復讐もできなかった。すべては儂の! 儂の糧になっただけだあああああ!!」


 唾を飛ばしながらそう言ってやった鬼になった領主。そして最後にその頭蓋を潰してあふれ出る脳みそをドボドボと口に流し込んだ。大きく口を開けて、その体を上に持ちあげてつぶした頭から零した脳を味わった。それが……とても美味だった。そう感じた。これをもっと食いたいと思った。


「いや違う、儂はこの国を……はぁはぁもっともっと……国を……いや食いたい……食いたい……たいたいたいたいたいたたたたたたたた」


 理性が瞳から失われていく。その身に宿る力は人の身には過剰なそれだ。だからこれが最後のきっかけ。元の現況であったサルを取り込むことで、最後のたがが外れたようだ。ダムが決壊したといってもいい。ギリギリで持ってた領主の自我。

 それは今や風前の灯だ。そんな鬼となった領主の目に映るのは空の雲。厚い厚い黒い雲だ。あれは暴走したサルの怨念。そしてこの地に満ちた狂気で作られてる。だからこそ、普通の雲じゃなく、この地を暗く覆ってる原因だ。

 地上から生気を吸って、その雲は今も成長してる。大きく育った雲の渦……


「あれが……あれば……」


 そうつぶやく領主の最期の理性はきっとこの雲の怨念というエネルギーにすがったんだろう。領主は地面をけって雲に向かう。

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