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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第六十五話Part2

 酷い道のりだった。ガタガタと揺れるこの馬車に乗ってるだけで体は至る所にぶつけて、吐きそうで……けど吐けなくて、下の方の穴も栓で塞がれてるせいで大惨事になる……という事はなかったが腹の痛さは尋常じゃないことになってた。


 腹が膨れすぎて、この場にいる誰のお腹からも、獣のうめき声のような音があがり、塞がれてる口の隙間からは「うーうー」という酷い声がもれてた。体は一人一人簀巻きのようにされてて、けもの道でも進んでるのか、さっきから振動するごとに中の人たちは転がってぶつかりあってた。


 そしてどのくらいたったかわからない時に動いてないと気づいた。しばらく振動が伝わってこないんだ。それならば早く外に出してほしい……とおもう中の女性と子供たち。だってお腹はもう限界なんだ。

 するとガタガタと真っ暗な中、一つの方向から音が聞こえた。そして外の日差しが入ってくる。


「うわっ!?」

「くせえ!」

「ほら、さっさとやるぞ」


 そんな事を言ってくる若い男の声。さららにその向こうからこんな声も聞こえた。


「これでうまくいくのか?」

「お任せください。奴にはもう理性などありません。餌に食いつくのは間違いない。それが毒とも知らずに」

「それならよいが……これ以上あのサルに領地を荒らされてはかなわん。うまくやれ! もしも失敗したら、貴様らの一族相当、ただで済むと思うなよ!」


 そんな言葉。そしてその時にその馬車の人たちに何かがぶちまけられる。そこらに転がされてる子供や女性にそれを避けるなんて不可能だった。何をかけられたのかはわからないけど男たちは……


「よし、さっさとずらかるぞ」

「ああ、巻き来れて死にたくねえわ」


 そんな言葉と共に彼らは消えた。扉を開けたまま。そこから出られるんじゃないか? と思うが誰もが動かない。腹が膨らんでるし、簀巻き状態では身動きが取れない。それにもういつ、どこかの穴から内容物が噴き出すかわからないのだ。


 どのくらい時間がたったのか、いきなりズドン! ――という音が馬車を揺らした。どうやら馬と共に引きあげていったのか、馬がいななく声はなかった。それとは別の……もっと強烈な息遣いが聞こえる。


「ウゴゴゴゴゴゴ」


 そんな音だ。そしてズシャズシャなる地面。そのたびに揺れる馬車。何かがいる……それもとても大きな何かが……と思った。そして外への扉、そこにそれは現れた。毛むくじゃらでデカい顔。理性を失った赤い瞳の化け物が、馬車の中の女性と子供たちを捉えた。


 次の瞬間だ。ズガーン!! ――屋根部分と側面のいくつかの板が吹き飛んだ。化け物が薙ぎ払ったんだ。そしてその化け物はその太く長い腕で女性と子供たちを掴みだす。まずは二人、力加減なんてないんだろう。

 掴まれた瞬間にその人たちはベキゴキという音と共に真っ赤な血を拭きあらした。けどそんなの気にせずに化け物は彼らを口にほおばる。そして次々に腹が出た子供と女性を平らげていく。

 そこに、希望なんてものはありはしなかった。ただその人たちは化け物の食事として供物にされた存在だったんだ。

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