第六十三話Part2
巨大な……そう巨大な存在が地獄の門をミシミシといわせて上半身を出してきた。それに……
「あれは……」
最初はあれは骸骨だった。大きな骸骨の妖怪……所謂ガシャドクロみたいな……そんな存在何じゃないか? と幾代は思ってた。でもどうやらそれは違ったようだ。なぜなら……
「何が起きてるの?」
この門の前に集まってた妖怪たち。それらが青い炎で燃えていく。それによって照らされたこの場所、でもそれもいつまでも燃えてるわけじゃない。寧ろそんな風に明るくなったのは一瞬だ。燃えつきた妖怪たち……それが集っていくのは門から出てこようとしてるガシャドクロみたいな骨。でもそれが燃え尽きた妖怪たちが集まることでガシャドクロではなくなっていく。
どういうことかというと、その骨には肉がついてきたからだ。白い筋、そして赤あかしい肉が繊維からうまれてくる。それはまるで早送りしてるかのように骨に肉がついていく。けどそこで止まることはない。皮が生まれて、長い毛がモッサモサと生え揃ってきた。
「っ!?」
幾代は思わず口を抑える。なぜならそのガシャドクロだと思って違ったそれ。その完成された姿に見覚えがあったからだ。白骨化してたから気づかなかった。けど、肉がついて、毛が生え揃ったらわかった。
それはこの騒動の原因と思ったきっかけとも言える存在。この門を開けるために生贄へとなった仲良くしてた猿たち。
それが……これだった。いや、かなり大きいし、違うかもしれない……ても幾代は直感なのか、研ぎ澄まされた力のおかげなのかわからないが、それがあの猩々だと気づいたんだ。やけに足軽を危険視してた猩々達。
大切な孫である足軽に危害を加えてほしくなかった幾代。きっと噛み合わせというか、出会いが悪かったとおもった。もっとうまく紹介できてたら、こんな事態にはなってなかったのではないか? と幾代は何度も思った。だって幾代はあの猩々達がそこまで悪い存在とは思えなかったから。
でもこうなったらもうそんなことも言えないだろう。最後の最後に、猩々は再びその姿を表した。
「ごめんね。でももう、お休みの時だよ」
再び肉がついて、復活を遂げた猩々。まだ全部は出てないが、地面に指を食い込ませて体を出そうとしてる。けどあれはきっともうこっちに戻って来たら行けない存在になってしまったんだと……幾代は感じてた。
だって、あの猩々からはもう、幾代を慕ってた雰囲気はない。その赤い瞳は、憎しみと怒りだけをその目に内包してる。




