第六十二話Part2
幾代が何をしたのか、小頭達にはわかんない。だって声も音も聞こえなくなったのだ。幾代はそれがわかってるのだろうか? おじいちゃんが手を前に伸ばす。きっと幾代の肩を掴もうとでもしたんだろう。
でも……
ブヨンブヨン――とその手は何かに阻まれたようだった。
「――!! ――!?」
何かを言いながらおじいちゃんは腕を前に押し出そうとしてる。けどそれは弾力性があるのか伸びてるようだった。小頭も近くの空間に伸ばした指先を向けてみた。するとやっぱりムニュっ――とした。
これはなにか結界のようなもの? 小頭は幾代の方をみた。目が合った気がした。その額には髪の毛がはりついてる。汗……確かに夏だから夜でも暑い。熱帯夜というやつだ。森の中だし、田舎だし、きっと都会よりは涼しいんだろう。
でもきっとそういう暑さで出た汗ではないたろう。幾代はつらそうだ。でもそれでも笑顔を見せる。そして私達からちょっと離れる。小頭たちをこのブヨブヨの中に残して、自身は戦ってる鬼の方へと向かってる?
一緒にここにいたらいいのに……多分これは結界かななにかなんだろうと小頭はおもった。だってあの仏像のような妖怪は操る力を持ってる。操られたら厄介だ。どうやら鬼たちはそうそう簡単に操られることはないっぽい。でも小頭たちは……小頭たちは違う。抵抗するすべがない。
多分力の有無が関係してると思われる。そうなると、幾代も抵抗できるのかもしれない。でも……
(おばあちゃんの力は相手を傷つけるものじゃない)
そう思った。鬼たちは戦える。だから正面からぶつかっていける。でも、幾代は違う。幾代の力はとても有意義だと思うが、鬼たち二人ならあの仏像のような妖怪をちゃんとボコってくれるだろうって小頭は思える。
ならば……だ。ならば別に向こうに行く必要なんてないじゃないか。安全なここに一緒にいたほうがいい。確かに幾代は小頭たちよりも仏像のような妖怪への力に抵抗を発揮できる可能性はある。
でもそれも可能性だ。小頭たちはあのどうしようもない感じを味わってる。あの真っ暗な場所にいたら自分では何もできない。自分の身体なのに、勝手に操られる恐怖……それに自分の意識ははっきりしてるからそれから目をそらすことだってできないんだ。
それでも幾代は覚悟を決めてるのか鬼たちの元へと合流をしにいってしまう。




