第六十一話Part2
めちゃくちゃだと野々野小頭は思った。だって抵抗もできてない筈で、寧ろめっちゃ攻撃されてて、なんで攻撃してた側の体が壊れるのだろうか? そんなのおかしい。常識で考えて、そんなのはおかしいだろう。
あの妖怪はずっと壁にでも手を刺しまくってたのだろうか? いやいやそんな事はない。ちゃんと鬼女の顔面に寸分たがわずにその手を叩き込んでたはずだった。なのに、壊れたのは鬼女の顔ではなく、仏像のような妖怪の腕の方だった。そのお腕は回転してた部分、つまりは手のひらから肘にかけての部分が見るも無残にブランブランするようになってしまった。
それに手の指の部分……そこは一番損傷が激しくて、指とかばらばらになってるし、もう元に戻らなそうである。もしかしたら、腕とか脚とか首とか、予備パーツがあるのなら、丸ごと取り替えるってことも出来ると思う。
でもそれはどうなんだろうか? と小頭は思う。そんな妖怪が用意周到だろうか? そんな訳ないと小頭は思ってる。つまりはこれであいつは片腕を失ったと同じ。もしかしたら再生能力持ち……と言う事も考えられるが、それならさっさと再生するだろう。いまだ治そうとしてないという事は、そういう能力はないと思われる。
「本当に滅茶苦茶だよ」
くすっと思わず笑って涙を拭く野々野小頭。濃い一日を過ごして来たと思ってた。その中でそこそこ鬼たちの事、わかってきたって……でもそうじゃなかったなって小頭は思った。
やっぱりこの人たちはとても……ううん、とーっても強い。
「大丈夫!?」
そんな声が聞こえてきた。その声の正体は幾世。そして直後、ドゴーン!! と強烈な音が響く。それはどうやら鬼男が妖怪に向かって容赦ない一撃を与えた事を示してた。
その強烈な一撃でさっきまでま小頭たちがいた丘は形を変えてしまった。鬼男は声を荒げたり、その怒りを外に出すようなことはしない。けど、鬼男の体にも鬼女と同じような文様が浮かんでる。それだけ本気の一撃だった……ということだろう。でも……
「まだ奴はやられてないよ!」
そう叫ぶ。もちろんまだ精神と肉体が切り離されてる小頭の声は鬼男達に届くことはないだろう。でも言わずにはいられなかった。だって今の一撃でもあの仏像のような妖怪はやられてない。
その証明が今も小頭たちがこの状態から脱してないということだから。それに気づいてほしいから小頭は届かないとわかってても声を上げるしかできない。




