第六十一話Part1
「だめええええええええええええええ!!」
そんな野々野小頭の声は届くことはない。そしてそのまま仏像のような妖怪の回転してる手が鬼女へと突き刺さる。
ゴシャ!!
――そんな嫌な音が野々野小頭の耳にも届いた。それに何かが飛んできて当たった感触もある。そしてそれが顔を伝う感覚も……体はどうにもできないが、感覚はあるんだ。
だからそれが何か、小頭にはわかった。きっとそれは鬼女の血……そう思ったんだ。
「う、あぁぁぁああああ……うわあああああああん!!」
何もできなかった。そんな風に思って小頭は声を出して孤独の中て泣いた。何回も何回も――
トシュ! ゴシャ! ブシャ!!
――そんな音が聞こえてた。どれだけ徹底的にやる気なの? と小頭は思う。そんな残酷すぎるって……けどふとおもった。
「あれ? なんで倒れないの?」
それである。顔面をドリルみたいなのでグッシャアアアア!! とされたらのなら、力強く地面に立ってる……なんて出来るだろうか? いやできないだろう。そもそも頭がまともに残らないはずだ。
そうなると、死んでるような事なんだから、立つことだってできないはず。でも……何度も何度も仏像のような妖怪が攻撃をしてる通り、彼女は、鬼女はそこに立ってた。力強く……いや、微動だにせず……と言った方が正しいかもしれない。鬼女は動いてない。かわしてもない。確かに妖怪の攻撃を受けてる。
でも……受けてるからそれが大ダメージになる……とは限らない? いや普通は大ダメージになるだろう。だって顔だよ? ヘルメットをしてるわけでもない。無防備な顔にその凶悪な回転してる手が刺さってるのだ。
普通は顔が形を保ててるわけない。小頭なら、それこそ跡形もなく、頭が吹き飛んでるはずだ。でも……鬼女はそうじゃないみたいだ。
「これって……」
そして小頭は気づいた。鬼女の体、その表面に不思議な模様が浮かび上がってることに。そしてそれを野々野小頭は知ってる。何回かこの状態の鬼たちを見たことがある。
それは大妖怪たちとの戦いでのことだ。鬼男も、鬼女も本気を出すときにはこの模様を体に浮かび上がらせていたと小頭は記憶してる。つまりは今、鬼女は本気になってる。そしてそうなると、その身に大量の力を宿してるということだろう。いや、発してる? とかといった方が正しいのかもしれない。
その大量の発してる力を纏って、鬼女は仏像のような妖怪の攻撃を防いでるのかもしれない。そして次の瞬間だ。
何回も何回も鬼女に向かって突き刺してたその妖怪の腕が、逆に脆くも崩れ去ったんだ。




