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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第六十話part5

「はっは! もう逃げられねえぞおおおおおおおおお!!」


 そんな風に鬼女が丘を背にした仏像のような妖怪にその拳を向ける。けど……その時、わずかな視界から野々野小頭は仏像のような妖怪の目が光ったように見えた。

 それがなんの意味があるのかはわからない。けど、何やら自分の体? が一瞬熱くなったよう気がした。それはもしかしたら自分の、小頭の体に回った毒が反応したかのような……そんな気がした。でもすでに小頭は操られてる。そしてそれに抵抗できるほどの力とかは小頭たちにはなくて、何か変わった? という感じだ。


「じゃあ今の感覚は……なに?」


 そんな風につぶやくと、「こ……の」――という声が聞こえてきた。なんとか小さな鍵穴くらいの穴から外を必死にのぞく小頭。いろいろと角度を変えて、ようやく何が起こったのか理解した。


「そっか、奴が体を操る条件、それはきっと奴の攻撃にあたることだから……」


 もっと早く気付くべきだったと小頭は思う。けど気付いたところで……もある。だってそれを伝える手段が今の小頭にはない。なにせ精神はこの通り隔離されて、体に干渉ができないのだ。攻撃にあたってはいけなかった。

 別にあの仏像のような妖怪は倒す必要なんてなかったんだ。ただ傷をつけるだけでよかった。小頭たちも傷を介して奴の力に操られた。ならば……鬼女だってそうなっておかしくない。今まで仏像のような妖怪がそれをしなかったのはこのタイミングを狙ってたから……なのかもしれない。そもそも鬼という人間じゃない存在だし、小頭たちのように、一回攻撃を当てただけで操れる……とは妖怪事態思ってなかった可能性はある。


 実際、あの妖怪事態はそこそこ焦ってた感じはあった。賭け……だったのかもしれない。あれだけ鬼女を傷つけて、その毒を体に染み渡らせても、確実に操れるとはあの仏像のような妖怪も確証を持てなかったのかも。

 だって確証を持てたのなら、すぐに鬼女を操ってたはずだ。それができるのにしない理由なんてない。でも今までそれをしなかったのはきっと確信がなかったからとしか小頭には思えない。けどこの場でやって、鬼女はその行動を止められてしまった。


 でも……鬼女は小頭たちとは明らかに違ってる。


「うがああぁぁ……ああああああ」


 鬼女の行動は確かに止まった。けど……妖怪は鬼女の体を完全に掌握したわけじゃない。その証拠に、鬼女の意志はまだ体に残ってる。小頭たちは体と意識が完全に分断されてその体の主導権を妖怪に握られてる。

 けどどうやら鬼女はそこまで許してないみたいだ。むしろ……彼女は気合だけで今もその呪縛から解き放たれようとしてる。でもここまで自由を奪えれば、仏像のような妖怪それでよかったのかもしれない。


カカカカカカカカカカ――


 尻に敷かれた顔からそんな音が聞こえる。それはきっと笑い声。なんとか抵抗してる鬼女が滑稽なのかもしれない。そして仏像は指を伸ばし、そしてその腕が二の腕から回転しだす。そしてそれを無防備な状態の鬼女の頭へとむける。


「だめえええええええええええええええええええええええ!!」


 小頭のそんな悲痛な叫びが聞こえることはない。

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