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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第五十八話part5

 現れた妖怪は仏様のような見た目で……だけど仏様を侮辱してる。顔を尻にしき、細かく見たら天を刺した指は直角に曲がってた。つまりはそこに骨があったとするなら、ぽきっといってるわけである。天を指示してるはずの指が折れてるってことは、どういうことなのか? それを推測するためには仏様がなぜに天を指示してるのかを想像するしかない。きっと仏様にとっては『天』とは故郷であり、極楽浄土ではないだろうか? 小頭はそんな話を聞いたことがある。

 神……ならそれは『天国』とかの表現になるのかもしれない。でも仏だからもっと仏っぽく解釈するとなると極楽だろう。仏は正しいことをして極楽を目指せ……みたいなメッセージを人々に伝えてるのかもしれない。それこそが仏の導き……みたいな?

 ならばその道を指示してるであろうその指が折れた状態ということは、きっと極楽への道はない……というメッセージなのかもしれない。


「おじいちゃん……」

「大丈夫じゃ、下がっておるんじゃ」


 ギシ……ギシギシ――カタッ――と嫌な音が目の前の妖怪からしてた。現れた妖怪は最初にお父さんを襲った。何をしたのかわからない。見えなかったからだ。お父さんは誰よりも早く気付いて小頭を守ろうとした。そしてお父さんの背中からは血がプシャァァ! と激しく出た。それからちょっと離れた場所にあれは現れた。


 音がするたびに、仏像のような妖怪の関節部分が動いてる。滑らかさがないのか、油がたりないのか……その不協和音は目の前の存在の不気味さを表してる。注意深く小頭もおじいちゃんもそいつを見てる。

 いや、見るしかない状態だ。目を離せないみたいな……目を離したらやられるかもしれない。そんな恐怖が目を離すことをゆるさない。


 でもそれは無駄だったのかもしれない。次ぎ瞬間だ。


「あぐっ!?」

「ぬぐううう!?」

「あぁああああ!」


 三人の悲鳴がこの場に響く。それは小頭、おじいちゃん、お母さんの声だ。お母さんは負傷したお父さんを診てた。けど小頭もおじいちゃんも目は一切目の前の仏像のような姿をしてる妖怪から離してなかった。なのに……いきなり自身の体に傷ができた。

 小頭は左腕の所から何かに刺されたような……そんな痛みがいきなり貫いてきた。そしてそれが現実だとわからせるように血が流れ落ちる。

 おじいちゃんは肩を大きく傷つけられてる。かなり出血してるように見えた。


(ここにいたら……)


 そんな風に小頭は思う。なにせ妖怪に対抗できるような力がここにいる小頭たちにはない。だからここにいるのはまずい……と思った。負傷はしたけど……痛みを我慢して動くことはまだできる。だからここから離れることを小頭は提案する。


「おじいちゃん走ろう。走って鬼たちの所に!」

 

 どうやって攻撃をされたのかもわからないんだ。ここにいるだけで危険だ。だって本当なら今ので終わりにすることだってできたんじゃないのか? と小頭は思う。もしも腕じゃなくこの傷が頭についてたら? おじいちゃんの傷だってそうだ。もうちょっとずれてたら首だった。あの傷が首についてたら、きっと大きな血管が切れてたはずだ。

 明らかに外されたんだ。ここにいるだけで危険。だから逃げないといけない。二人は視線を交わしてうなづいた。

 素早く背中を向けて、お父さんたちの所にいく。


「しっかりせんか!」


 お父さんをおじいちゃんが支えて、小頭はお母さんを引っ張る。けどその時小頭は見た。無表情のはずの仏像の顔が不気味に笑ってる……その表情を。

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