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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第五十八話Part1

 おばあちゃんは走り出す。ザザ、ザザー――とちょっとした崖を滑り降りて、目指すは門の前。そこで鬼たちは戦ってる。鬼たちはそのアホみたいな身体能力を持ってるから崖から大きくジャンプして妖怪たちの前に降り立ったわけだけど、育代はそんな身体能力は持ってない。

 確かに力はある。けど、それは若返る力であって超人になる力ではないのだ。


「やはりわしも一緒に行った方が……」

「ダメだよおじいちゃん。私たちじゃ、足手まといだよ」

 

 これまで妖怪と戦ってきたからこそ、小頭はそれを感じてた。だって小頭だけはあの中で普通の一般人だったんだ。

 何もできないただの人枠……モブ……と表現してもいい立場。それが野々野小頭だった。それに……だ。


「じゃがのぅ小頭」

「大丈夫だよ。確かにおばあちゃんの力はあれだけだし、体が強くなるとかない。強化とかされてない。でも……おばあちゃんは若さを、ううん、体を記憶をもとにいじれるんだよ」

「何が違うんじゃ?」


 おじいちゃんは疑問におもってるみたいだ。それは仕方ないだろう。おじいちゃんはおじいちゃんであるからこそ昔の人だ。今の若者のように常にいろんな娯楽が溢れてた時代を生きてたわけじゃないだろう。

 それこそおじいちゃんを見てたら、「まさに野山を駆け回ってたんだろうな」――という感想が出てくるくらいである。そしてそれは過去を見たことで間違ってなかったと小頭は知ってる。

 でも昔はそれが普通だった。遊ぼうと思ったら外にでて友達たちと共に外で自由に遊ぶ。そんな時代だった。逆に今は外で遊びづらい時代になったといえる。

 まぁ小頭には田舎の事はよくわかんないが……今年の夏はかなり外で遊んだほうではある。でもそれもおばあちゃんの策略だったわけで……実際他の田舎の子供たちを見たことはなかった。


 やっぱり田舎でも外で野山を駆け回る子供は減ってるのかもしれない。いや、少子化なんだからそれも当然だろう。そして都会ならなおさらだ。逆に外で遊ぶ方が制限があるっていうね。公園にだっていろんな制約ができてるし、今や家の中でいくらでも娯楽を享受できる。

 それに質だって昔よりもいいだろう。世界中の作品が手元にあるようなものだ。そんな風に娯楽はすべて掌にある――といえるほどの時代だ。

 昔は本だって部屋に積み上げるとかするしかなかったかもしれないが、いまやスマホ一台に何千、何万という本を収めることができる。

 そして今の最新作に昔の名作……なんだってよめるのだ。そういうのに小さい時から触れてきた小頭だ。力とは理解とか解釈とかでいろいろと拡張できるかもしれない……と考えてる。

 だっていろんな作品で見てきたことだ。それは主人公の力がそんなに特筆したものじゃなくても、その解釈を広げることで最強格になったりする作品はあるってこと。


 それで言えば、おばあちゃんの力は解釈の余地が全然ある。若返るという力。それがどういうことなのか? という解釈。

 そしてそれを利用してうまくいったからこそ、大妖怪の封印ができた。

 ならば……


「おばあちゃんの力は体を操れる。ならちょっとの怪我くらいなら、体を操ることでどうにかできたりするかもしれない。でも私たちはそんなことできないから」

「わしらは足手まといか……」


 悔しそうなおじいちゃん。でも仕方ない。だってやれることはその人それぞれで違うものだろう。それもちゃんと小頭はわかってる。

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