第五十七話Part6
「お前……なのか?」
「あら、もう自分が一番好きだった時期の私を忘れたのかしら? 残念。それならもう一度、今度は忘れないように目に焼き付けておいていいですよ」
おじいちゃんは若返ってるおばあちゃんをまじまじと見てる。けどそれはしょうがないだろうって思う。忘れてた……なんて事は流石にないと野々野小頭は思ってるが、きっとお爺ちゃんは信じられないんだろう。
そもそもさっきまで普通にいつものおばあちゃんだったのだ。それなのにいきなり若返った。在りし日の……それこそ青春を謳歌した時の姿だ。何やらこみ上げてくるものがあったとしても、おかしくない。
「お母さん……その姿……」
「ふふ、言ったでしょ? お母さん、昔はとってもきれいだったって」
お父さんの言葉におばあちゃん服をヒラヒラさせつつ、そう答えた。流石にお父さんもあの頃のおばあちゃんの姿を知ってるわけはない。だってお父さんが生まれる前の姿なんだから。
でもきっと昔はすごかった――とかは親がいう定番のセリフではないだろうか? おばあちゃんは実際、歳を取った姿でさえ綺麗だった。だから昔はすごかったに最初からある程度の説得力って奴はあったと小頭は思ってる。
でもお父さんもまさかここまでとは……思ってなかったんじゃないだろうか? 始めてみる自身の親の若かりし頃の姿……それに対してどういう反応をしたらいいのか、お父さんも混乱してるみたいだった。
「お母さん、だだだだ大丈夫なんですか? その体とか? そんないきなり姿が変わったりして……」
なんかお母さんはちょっとズレた心配事をしてた。実際お母さんが一番おじいちゃんやお父さんよりはダメージというか? 衝撃は少ないだろう。でもだからってそっちに行く?
「大丈夫よ。これは……ね。つまり私も目覚めてるの。超能力に」
小頭は思う。
(若返る事って超能力の範疇だろうか?)
――とね。超越してないだろうか? けど超能力の定義なんてない。小頭の学友だってなんでも治すけど、あれも超能力らしいし……だからきっと目覚めた力はすべからく超能力という事に帰結するという事なんだろう。
「お前が……目覚めた?」
「はい、目覚めちゃいました」
いたずらっ子のようにおばあちゃんはそういう。姿は十代後半の姿をしてるから、そのしぐさは凄く様になってるといえる。
「うぐ!? 大丈夫なのか?」
おじいちゃんは何やら胸を押さえて体を横に向けた。不整脈だろうか? いやこれはきっとお爺ちゃんはおばあちゃんのかわいらしさ、そしてその青春の眩しさにドキドキを覚えてるんだろう。
いや呼び起こされてる……と言った方がいいだろうか? と小頭は考えてる。




