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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第五十五話Part3

「どうしたんだい? 大丈夫だ。 君は、僕が守って見せる……」


 お父さんは覆いかぶさったお母さんに優しくそんな風に声をかけている。その声は優しくて……思わず野々野小頭は昔の事を思い出す。


『かわいいね。小頭は世界一かわいいね』


 優しい声。細めた瞳。そして……暖かな手。それによって頭をなでなでされるのが小頭は好きだった。けど、成長するにつれて、お父さんが小頭にナデナデをするのはなくなっていった。どうしてだったか? あんなに好きだったのに……けどそのきっかけも小頭は同時に思い出す。


(そうだ。私のせいで、お父さんは。あんなに……あんなに愛してくれてるのに……)


 思い出したのは自分の言葉。きっとあれがきっかけだった。ただの反抗期。中学生くらいの女の子には絶対にあることだろう。「お父さんなんか嫌い!!」――なんていう時期。実際、今も野々野小頭は反抗期だと思ってる。でもそれもついさっきまで……だったみたいだ。今はお父さんのお母さんに対する「愛」を見せつけられて、うらやましいって思ってる。もしかしたら本当の「恋」と「失恋」を経験したからなのかもしれない。

 その経験が小頭を一段、大人への階段を上がらせたのかもしれない。


「まずいぞ」


 そんな風に小頭の前に出てる鬼男がいう。え? という声が出る小頭。するとその時だ。


「どけええええええええ!!」


 そんな声と共にお父さんがふきとばされた。


「国人!」


 おじいちゃんがお父さんを庇う。けど勢いは止まらず、二人して戸棚に突っ込んだ。あんな……大人の男を二人も吹き飛ばす? そんな腕力がお母さんにあるわけはない。ならば……あの力は……


「なんで……なんでお前たちは戻ってくる? 眠ったままでいない?」


 そんな風にお母さんがつぶやいてる。けど……それはお母さんではない。だって、お母さんはグタッてしてた。立ち上がってるけど、それはお母さんの下半身だけだ。どういうことかというと、準備運動で手を地面に向ける運動があるだろう? 1・2・3・4――で腕を下にむけて体を前にまげて、5・6・7・8――で今度は背中側に反る運動。その前の前半部分の状態でお母さんはとまってる。けど下半身は動いてるのだ。それは、お母さんの上半身には別の体が生えてるから……水色で能面の人の形を真似た何か……がお母さんの下半身から上半身を生やしてる。

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