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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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78P

「なんか大きなことじゃなく、小手先の技術ばっかりできるようになってるような……」


 そんなことを野々野足軽は思ってた。『力』があるのならどんな力を思い浮かべるか……それはもちろん天変地異を起こしたり、手からでっかいビームを出したりだろう。それか見えないほどのスピードで動いたりさ……


 けどどういうわけだろう……野々野足軽はそんな派手なことは全然できない。そのことになんか……うん……なんかな……って感じになってる。別に不満がある訳じゃ……


(いやちょっとあるけど……でも派手な力ってバレる可能性が高くなるからな……)


 と思ってもいるが、けどもっと派手な力の使い方があってもいい……と思ってる。そんなわけで今は夜中。そして野々野足軽は今屋根の上にいる。まだまだ肌寒くもないから快適な夜の風が吹いてる。


 住宅街ということもあって、流石に0時を回ると周囲は暗くそして静かだ。遠くで救急車のサイレンがするが、大都会の喧騒はここまでは届いてない。


「いつか……あれに届くようになりたい」


 そう言って野々野足軽は手を伸ばす。それは空に浮かぶ月だった。そしてそんな野々野足軽の言葉に、側にいる淡い存在の人型がいうよ。


「思ってるよりもあれは遠いですよ? まあ色んな時代にあれを目指す人たちはいましたからね。良い目標かもしれません。個人であそこまで行った者はいませんし」


 とかなんとか言ってくる。もちろんそれはアースだ。今は夜中で人の目もないから、野々野足軽の中から出てる。アースは人型をしてるだけで、容姿があるわけじゃない姿だ。ただ人型なだけ。そんなやつが語りかけてきたら普通ならびっくりだろうが、今や野々野足軽は慣れたものだ。


「まあ見てろよ」


 野々野足軽は集中して力を自身の周囲に展開する。そしてふわりとした浮遊感が訪れた。そしてゆっくりとだけど、どんどんと野々野足軽の体が上昇していく。前はそれこそたった数センチ上がるのが精一杯だった。けど今はどうだ? どんどん高度を上げることができる。


「ふぅー」


 野々野足軽の額にはすでに汗が出てきてる。こうやって直上してるだけでも、かなり力を実は使ってる。それに姿勢を制御するのも案外難しい。ちょっとでも体で動こうとするとバランスが崩れて空中でぐるぐるすることになる。まるで無重力空間のようになってしまうんだ。


 別に落ちるわけでないが……焦りは力が不安定になる。そうなると……


(やばいからな。力を使うときに大切なのはどんな時も冷静であること……)


 なにせ高度があるということは下手に制御を失うと真っ逆さまになるということだ。既に学校よりも高く上がってる野々野足軽だ。もしもここでクルクルして、焦って……そして能力が解除されたらどうなるか……真っ逆さまに落ちて地面にグシャってなる。咄嗟に再び力を使えばいいじゃないか? 


 どんだけ難しいと思ってるんだ!! と野々野足軽は思ってる。だから慎重に慎重に力を制御して体も腕を真横に伸ばしてフラフラしながらも上昇を続けてる。今日はどこまで行けるのか…… そしてきちんと無事に戻ってくるのが目標だ。


(よくいうからな。帰るまでが遠足だって)


 その気持ちである。

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