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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第五十三話part6

(あっ、やばい……)


 ぶつかった視線。すぐに野々野国人は視線を外したけどその人物は動き出した。近づいてくる。それがみえる。


(来るな、来るな、来るな)


 そんな風に野々野国人は心の中でつぶやく。でも確実に彼女は近づいてきてる。とりあえず不自然だけど、踵を返した。でも目的の電車はこのホームに入ってくるわけで……ここから離れる……ことはできない。だから出来ることはこのホームで距離を稼ぎ続ける事だけだ。都会の電車は長く、12両編成とかだ。だから駅のホームはそれを受け入れるためにとても長い。

 逃げるスペースはある。これで人も多かったら人ごみに紛れる……とかできただろう。けど都会でも時間帯によっては閑散とすることがある。それがちょうど昼の中頃の時間帯だ。つまりは今である。人はいるが簡単に移動できるくらいのスペースはあるのだ。だから端から端もちょっと移動したら見えるのだ。これでは人ごみに隠れる……ということはできない。だから逃げ続けるしかない。

 そして電車が来たら素早くのる。けどこのホームにいる……ということはきっと彼女も同じ方面に行くことになる。問題はどこで降りるのか? だろう。そこまで逃げ続けられるか? 電車の中はこのホームよりも狭い。それは……


「ちょっと、なんで逃げるのよ」


 早速追いつかれてしまった。そこそこ高いヒールを履いてるのに小走りでもしてきたのか? 彼女は早かった。でも……野々野国人は反応しない。ここはスルーを頑張ってすることにしたらしい。なにせ声をかけられても、それが自分だと確信できるだろうか? いや、声を掛けられるだけではそれが『自分』だとは言えない。だから野々野国人は「気のせい」――ということにした。

 でも彼女はめげない。駅のホームを左右に行ったり来たりしてる野々野国人についてきてる。そしてさっきから「ねえ」「ちょっと」――と声をかけてきてる。けど野々野国人はかたくなにそれに反応することはない。だってもう、彼女とはかかわらないと決めたんだ。それが本命の女性のためだ。そんな一方的な考えはこの人に悪いことだとは思う。

 だから心苦しいが、何が一番大切なのか? それを自分の中で考え時、それはやっぱり婚約者なんだと野々野国人は思いいたった。だから絶対に反応しない……その鉄の心をやどしてる。


「いたっ」


 ドサッという音。それは彼女が転んだことを示してる。それには思わず野々野国人が反応する。


「大丈夫ですか?」


 人の好さ……それが出てしまった。そしてその反応をみて、転んで靴が片方脱げてる彼女はそんなこと気にせずに舌をちょっと出してこういった。


「反応してくれた」


 きっと転んだのはわざとだったのだろう。「やられた」――と野々野国人は思った。


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