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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第五十三話part4

 カタカタカタカタ……パソコンに向いてる目が滑る。それは仕事中でもちらちらと意識をしてしまうものがあるからだ。机に出してるスマホ。いつもの定位置。仕事中にはここに置く――と決め打ちしてる場所。そこでなら充電もできて席から離れる時でもさっとスマホをとって移動できるという効率化を進めてる場所だ。

 今日も今日とて、スマホの画面はくらい。通知を知らせるときだけにその画面を点灯させる。外は雨だった。かなり強い雨だ。ぞれでも外回りをしてる人がいるんだろう。オフィスの中はまばらな人影しかない。エアコンの駆動音を上回る窓を打つ雨の音。朝はもっと静かだった。けど時間が経つにつれて雨足はどんどんと強まってた。


「うわっ、これ大丈夫か?」

「台風っすかね?」

「まだ時期的に速いだろ」


 そんな会話が聞こえてた。もしかしたら帰る時にはもっと強くなるかもしれない。そうなると公共交通機関が止まってしまうかも……それは困る。それは困るが……野々野国人はそんな事からはすぐに意識を放してキーボードを打ち始めた。余計な事を考えてるのにさらに余計な事を考える余裕なんてない。

 だから何も考えずに仕事をする。そうしなければいけない。スマホはきになる。光るスマホを思わず手に取るが、大体それはなんの易にもならない広告だ。チャンネル登録してる登録者の新たな動画を知らしたり、SNSの新たな投稿をお知らせしてきたりしてくる。

 心の中だけで大きなため息をついて、国人は再びキーボードを打つ。


 何時間経っただろうか? いつの間にか昼が終わってた。悲しい事に国人の職場には国人をお昼を知らせてくれるような同僚は居ないようだ。けど朝からパソコンに向かい続けたおかげだろう。今日の分の仕事はおわろうとしてた。


 職場にはインスタントじゃなく、全自動でコーヒーを入れてくれる機械が導入されてた。だからって普段は外回りばかりしてるからそれほど飲む頻度は高くない。けど今日はその様子をじっくりとみてる野々野国人である。黒々とした液体が絞りだされて紙コップに注がれていく。

 コーヒーの特徴的な匂いが鼻孔をくすぐる。不思議と腹は減ってなかった。昼は抜いてる筈なのに……だ。ピーという音と共に出来上がりを知らせてくれる。コップの淵をつまむようにもって、熱々のコーヒーに口をつける。そして長い……長い、息を吐いた。そして持ってきてたスマホを見る。


 その時だった。ヴヴヴヴヴ――と震えたスマホが知らせる着信の知らせ。その表示された名前を見た瞬間、野々野国人の心臓は大きく脈動を打った。それは気のせいじゃない。確かなことだ。だって画面に出てる名前は解約された婚約者の名前だったからだ。

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