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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第五十二話part5

「楽しかった……」


 そう不意に口をついて出たその言葉。けどだからこそ……不意を突いて出た言葉だからこそそれは本心……本音というのかもしれない。


「うん、楽しかったよね。これからはもっとたくさん会えるわね」

「そう……じゃない! もう会わないって言ってるんだ!!」


 危ない危ない、なんか自然と流されそうになってしまった野々野国人である。あとちょっとで「そうだな!」っていうところだった。でもそれはない。そうじゃないのだ。そもそもが電話したのはこのあいまいな関係をはっきりさせる為。そして終わらせる為だった。なのに、これからは本命の彼女の席にスルっとこの人は入ろうとしてきた。なんて奴だって思ってる野々野国人だ。

 野々野国人は見た目通りというか、男だしやっぱり女性よりも舌の回りは劣る。それはどうしようもないことだ。やっぱり常に話をしてるようなイメージがある女性と基本的に寡黙……といわれる野々野国人では口の回りで勝てる見込みなしである。だからあまり話すことは不利だと国人は悟った。だから要点と結論だけを話した。もう「会わない」……それが野々野国人の結論だ。

 だってそれで元通りになる。


「会わない? 本当に?」

「本当だよ。ごめん。あなたのおかげでとても助かったのも事実だ。それには感謝してる。でも、自分が一番大切なのは君じゃないから。婚約者が大切なんだ。元に戻りたいと思ってる。そのためにはもう会うことはできない。ありがとう」


 それを口を挟ませる前に言い切った。あとは通話を切るだけだ。だって反論を聞いても意味なんてない。いや、危ない……と野々野国人は思った。だって彼女はとても口がうまい。回る回る。だって式場に行った時だってほとんど喋ってたのは彼女だった。まあそれは本命の彼女ともそうだっといえるが……実をいうとあのデキル彼女は本命の彼女よりも会話の回しはうまかったと思う。

 やっぱりそこら辺がデキル要因なんだろう。うまく人から言葉を引き出すのがうまいというか? 一緒にいると野々野国人もそれなりにしゃべることになるというか? そんなのだった。だから彼女と話してはいけないのだ。それだけでもう彼女のペースに陥ってしまうからだ。ならば最初からメールとかメッセージで終わらせればよかったじゃないか? だって? 

 そこはほら、野々野国人は律儀な人柄をしてるからだ。今トラブルに陥ってるわけだが、それは野々野国人が浅慮だったからであって、彼女のせいではない。むしろ彼女には感謝はしてる。今回の電話でちょっと彼女のやばさは野々野国人も感じ始めてるが、それももうこれで終わりなのだ。だから通話を切るために最後に画面をタップするその瞬間だ。


 スマホのスピーカーから最後の彼女の声が聞こえてくる。


「もう、元には戻らないわ」


 ――てね。


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